6話 冒険者ギルド
「まず冒険者のお仕事はギルド内の掲示板に提示されている、または直接受付けから依頼を受注し達成出来ましたら報告をすることです。依頼を達成することでギルドへの貢献が認められ、公開はしておりませんがギルド内でポイントを加算していきます。一定のポイント獲得を達成することで冒険者ランクの昇格を行います。ランクはまずFランクから始まります。そこからE、Dと昇格していき、A、そして最高ランクがSランクとなっており、7段階と分かれています」
なるほど。俺は登録したばかりだからまずはFランクからスタートだな。
「依頼には難易度に合わせてランクが設定されています。依頼の受注は基本的に自分のランクの一つ上のランクまで可能となっており、最大で同時に3つまで受注が可能となっています」
「ん?基本的に一つ上のランクってことはそうではない場合があるんですか?」
「あまりあることではないのですが、例外として制限なしの依頼が張り出されることも稀にございます。ただ、内容はその時々で全く違うので参考になりそうなことは説明が難しいですね。申し訳ありません」
すごく済まなそうな表情で謝ってくる。庇護欲が湧きたてられるがこれが素なのか狙ってやっているのか判断に困る……。恐るべき受付嬢!
「依頼外で倒した魔物の素材も冒険者ギルドで買取りを行っておりますのでお気軽にお持込みください。素材がなくとも討伐した魔物の分はギルドへの貢献として報酬が支払われます。まずは一旦ここまでが冒険者の方のお仕事の説明になりますがここまででご不明な点はございますか?」
「いえありません。大丈夫です」
そう言うと安心したようにホッと息をついている。どうしたんだ?緊張でもしていたのか?
「あと説明するべき内容としましてはギルド内での暴力行為などは禁止ということですね。そしてもちろんですがギルドの中でも外でも関係なく犯罪行為は禁止です。以前にあったことなのですが依頼者の方と不正に取引を行った冒険者もいました。軽い違反の場合は短期間の活動制限などで済みますが、度を過ぎた行為は発覚次第、冒険者の資格を剥奪され、場合によっては犯罪者として捕らえられることもあります」
「ふむ、なるほどなるほど。……………え、それだけ?」
犯罪行為禁止なんてのは冒険者とか関係なく普通のことでギルドの決まりとかはないのか?
「とりあえず説明できることはこれだけでございます。私が聞いた話では、以前はもっと細かく規則が定められていたみたいなのですが、冒険者で覚えられなかった方がとても多かったみたいでこのようになったそうです。判断に困る場合は私達に確認していただければ対応させていただきますよ」
「そうだったんですね、分かりました。その時は相談させてもらいます」
これで説明は終了だな。と、なれば何か依頼を受けて魔物を狩る準備をしに行くか。
それにしてもこの受付けの人、気になっていたが説明の途中からホッとした空気を出しているな。
「あの、どうかしましたか?先ほどから何か安心したような表情をしていますけど」
どうしても気になってそう聞くと回りには聞こえないように小声で答えてくれた。
「え、しっ失礼しました。ユウジ様がものすごく飲み込みがよかったものでして。今まで対応した冒険者の方には今回の数倍は時間が掛かっていましたから、何度も同じ説明を噛み砕いてお伝えし、中には理解できないと怒鳴ってくる方もいました」
「そ、それは大変ですね……」
冒険者ってのは脳筋しかいないのか。選択早まったかな。
「心遣いありがとうございます。もちろん理解の早く礼儀正しい方もいらっしゃいます。そしてそういった冒険者の方が高ランクに昇格する割合が大きいです。なのでユウジ様もきっと大成出来ると期待しています」
うおっ!?営業だとは分かっているが満面の笑顔が眩しい!
あまり王都に長居出来ないことがもったいなく感じてくる。
「それでは説明の間に準備をしていたギルドカードをお渡しさせていただきますね。これは身分証としても利用できます。そして討伐した魔物の種類や数も提出していただければギルドで確認できるようになっています。再発行も可能ですが、手数料として金貨1枚必要となりますので失くさないようにお願いします」
「あっはい、分かりました」
そうだ、まだこれを受け取ってなかった。勇者であることを隠して旅をするのなら身分証は必須だからな。気をつけないといけない。
「最後にこのカードにユウジ様の血を少量垂らしていただければ登録完了になります」
名前などが記載されたカードと一緒に差し出された針を受け取り指の先を少し刺し血を一滴カードに垂らす。
一瞬光りはしたが特に変わった点はないように見えるが、魔法が掛かっていて持ち主かどうかが判断できるようになったらしい。異世界といっても魔法を使えば元の世界にも劣らない高性能な道具がたくさんあるよな。
「お疲れ様です、これで登録が完了し冒険者ギルドの一員となりました。無理をしないように冒険者として活動頑張ってくださいね」
そう軽く首を傾けながら言った受付けさんの笑顔は、勘違いしそうなくらい、眩しかったよ……。