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38話 勝負の内容は

 決闘ではなく平和的に依頼での競争で決着をつけることになった。

 それはいいんだが、一つ問題がある。


「なあ、悠香、心悠。同じ依頼で決着をつけることは分かったんだが、ランクのことは考えてるのか?」


 問題とはランクに差があると受けられる依頼が限られてくる。合わせるために低いランクの依頼を受けることも一つの手だが、簡単すぎると人手が多い妹たちが有利でランも納得出来ないかもしれない。


「そういえばそうだった!あなたはランクはいくつなの?」

「私たちはEランクだよ」


 二人とも自信満々に胸を張って褒めて欲しそうにチラチラと俺の方に視線を向けてくる。

 一体いつからこの世界に二人がいるのか、どれだけの時間冒険者として活動してきたのかが分からないし、冒険者に詳しくない俺が一般の冒険者が昇格するペースなんて分からないからな。どんな言葉を掛けてやればいいのか。

 そんなことを思いながら言葉を選んでたら、ランが先に答えてしまった。


「わたしはDランク。わたしのほうが上」


 淡々と口にしているから他の人には伝わってないかもしれないが、今のランはかなり得意気になっている。たった今、自慢されたお返しなんだろうな。仲良くして欲しいんだけど。


「えっ!?私たちより上のランク!?こんなに小っちゃいのに!」

「だからお兄ちゃんが褒めてくれなかったんだね。悲しいよぉ」


 そう言われても俺には苦笑いすることしか出来ないぞ。それと悠香、お前達双子も年齢のわりに小柄だぞ。


「まぁそう言うなよ。Dランク一人とEランク二人、ランクも近いしバランスも取れてるだろ。だいぶフェアな勝負が出来るんだから文句は言いっこなしだ。とにかく一度受付けさんに丁度いい依頼がないか確認しに行こう」


 三人とも納得してくれたようで大人しく付いて来てくれている。

 受付けで対応してくれたのは決闘前に対応してくれたのと同じ人だった。


「決闘お疲れ様です。事前にお預かりしていたギルドカードをお返しします」


 あ。完全に忘れていた。そういえばこの町に来るまでに倒した魔物の報酬を貰うために受付けに来たんだった。

 ランも忘れていたみたいで、そんな物もあったな、って顔をして一緒に受け取っている。


「討伐されていた魔物の報酬は勝手だとは思いましたがギルドで預金という形でお預かりさせていただいております。いつでも引き出し可能となっておりますので御用の際はお申し付けください」

「いえ、ありがとうございます。こちらこそいきなり席を外してすみませんでした」


 数年ぶりに妹たちの声が聞こえたからついつい動いてしまったが、受付けからしてみたら確認でカードを預かった隙に一人居なくて、急に貴族と決闘してるんだから堪ったもんじゃないよな。


「問題ございません。先程よりも人数が増えていらっしゃいますが、今回はいかがなさいましたか?」

「えっとですね、こっちのランとこっちの悠香と心悠ペアで同じ依頼を受けて勝負をしようって話になってるんですけど、丁度いい依頼なんかないかと相談に来たんですけど~……ありませんか?」


 無ければテキトーに時間制限を付けて魔物を狩って数と質を合わせて勝ち負けを決めればいいか。……あれ?最初からそうすればよかったんじゃ…。いや、依頼の方が稼げるしお得のはずだ!


「そうですね、DランクとEランク二名で競うのでしたらDランク相当の依頼が適切かと思います。討伐と採取ではどちらがよろしいですか?」

「えっとじゃあ──」

「「「討伐」」」

「──……討伐でお願いします」


 速いね君たち…。ノータイムで討伐を選ぶなんてどんだけ飢えてるんだよ。受付けさんも引いてるよ?


「そ、それではこちらなんていかがでしょうか?ハルカ様とコハル様はご存知でしょうがこの町の近くに洞窟がございます。そちらに生息しているリザードマンの繁殖期となっており数が増えてきております。Dランクの依頼となっておりますのでご希望に沿えるかと思います」


 リザードマンがDランク?リザードマンって結構強いと思うんだが。前回俺が戦った奴らは魔法こそ苦手としていたが、各々が使いやすい武器を持って魔法の付与された防具を身にまとって連携し戦闘をしていたぞ。


「リザードマンがDランクって本当ですか?今までどんな武器を使ってたかとか確認できますか?」

「これまでで確認出来ている武器は石を削った剣とも言えないような鈍器や、泥を固めたものに抜け落ちた牙をくっつけたようなものだったそうです」


 う~ん、これは地域的なものなのか、これから時間が経つごとに種族的に進化していくのか不明だが少なくとも現段階では大した魔物じゃないみたいだな。


「確かにそれなら丁度いいかもな。三人ともそれでいいか?」

「大丈夫」

「平気だよおにい!」

「私たちはマルクス様と一緒に戦ったこともあるし問題ないよ」


 なるほど。二人は領主の家でお世話になってるんだったな。その息子のマルクスがCランク冒険者だから一緒に魔物と戦うこともあるか。だったら近くの洞窟に行ったことがあることにも頷ける。

 だが、だからと言って心配しないこととは別問題だ。


「マルクス、お前時間あるか?」

「領主としての仕事などは父上が主に行っておりますので問題ないですよ、お義兄さん」

「お義兄さんじゃねえ。なら決まりだ。ランは俺が、悠香と心悠にはマルクスが同行する。基本的には手を出さないけど、いざとなれば参入するからな」


 こんな意味があるかも分からない勝負に万が一があっては冗談じゃない。これは最低限必要な条件だ。


「むぅ、わかった」

「おにいがいいけど仕方ないか」

「マルクス様のほうが私たちの戦い方知ってるもんね。お兄ちゃんが良かったけど」


「あれ、おかしいな?前が滲んでよく見えないや……」


 すまんマルクス!俺はお前のこと嫌いじゃないぞ。

 二人は絶対に嫁にはやらんけどな!


悠香と心悠は、ユウジが呼ぶときは漢字で、それ以外ではカタカナで表記しています。

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