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30話 戦勝報告

 ギィィ…

 

 そんな音を立てバッカスたちと共にウェスタンドアを開き冒険者ギルドに入る。

 酒場も併設されている建物だが全ての冒険者が出払っていたため閑散としている。だがそれももう終わりだ。魔物との戦いが終え、やり遂げた顔をしている冒険者たちが戻って来たからにはすぐに騒がしくなる。すでに酒を頼みテーブルに着いている連中が何人もいるからな。あいつらは報告とか報酬はいいのか?


「帰ってきたね。よくやったじゃないか」


 ギルドのおばちゃんが出迎えてくれる。

 帰ってきて当たり前みたいな顔をしているが、俺達のことを信じてくれていたんだろう。その証拠にテーブルの連中とは別に酒や料理がどんどん運ばれている。作るのに時間が掛かる料理もあるし、事前に準備しておかないとあれだけの量は一度に出せないからな。


「おうよ。言ったろ、任せろってな。楽勝だったぜ!」


 答えたのはバッカスだ。

 この町の冒険者たちの代表だからバッカスが答えるのは当然だ。

 だけど俺からも報告することがあるから後で時間を貰いたいんだよな。


「ハンッ!あれだけ大口叩いたんだ。負けてたらお仕置きもんさね」

「そりゃ命拾いしたな。ま、今回勝てたのはこいつ等の功績なんだけどな」


 そう言って俺とランを前に出す。

 これは早速報告のチャンスが回ってきたか?


「ほう、坊やたちがね。バッカスが言うからには本当なんだろうね。そんなことならあたしも見に行けばよかったねぇ」

「勘弁してくれよあねさん…」


 冗談だよ、おばちゃんはそう言って笑うが目が笑ってない。実際この人なら全く問題が無いように思えてしまう。


「町のために戦ってきたよ。それで、俺が一番奥で戦ってたんだけどちょっと報告しておきたいことがあるんだ」

「ふむ」

「なんだよ、さっきはそんなこと何も言ってなかったじゃねえか」

「悪かった。ギルドで一度に済ました方がいいと思ってさ」

「ご主人、それって」


 ランに頷いてみせる。

 ランは直接会っているからな。俺が何を言いたいのかが分かっているんだろう。

 と言うか、それが原因で泣いちゃったからな。嫌でも分かるよな…。


「そっちのお嬢ちゃんは知ってるみたいだね」

「うん。ご主人、誰か人と闘ってた」

「人と?どういうことだい?」

「ああ、ちゃんと説明する。バッカスも聞いてくれ」


 そうして俺は魔族の男と出会ったこと、魔物は魔族の男が率いていたこと、魔族の男は魔王軍の関係者だが命令を受けていた訳ではないこと、そして強いやつと戦うためだけに王都に向かっていたことを説明する。


「「……………」」


 俺の報告を聞いたおばちゃんとバッカスは考え込むように黙り込んでしまった。


「俺らが魔物共と闘ってる時にそんなことがあったとはな」

「坊や、直接会って闘ったのはあんただ。その魔族が言ったことは本当だと思うかい?」

「ああ。ただのバカって感じじゃなかったけど、純粋に戦闘を楽しんでいたから嘘は言っていないと思う」


 剣を合わせれば気持ちが分かる、なんてことは言えないが、あいつが言ったことは真実だろう。何せイかれてるくらい戦闘狂バトルジャンキーだったからな。


「でもまあ、俺がこのことを報告したのは念のためだ。説明したように今回の襲撃は魔王軍とは直接関係が無いみたいだし、これから急に襲撃が増えるってこともなさそうだしな」

「いや、でもよ…」


 バッカスは不安そうにしているが、おばちゃんはまたも考えているようだ。


「報告感謝するよ坊や。坊やの言う通り魔族の襲撃もそうそう無いだろうしそこまで警戒することじゃないだろうね」

「おいおい姐さん、そんなんでいいのかよ」

「ギルドで出来ることは冒険者を増やして質を上げていくしかないさね。鍛えるのはあんたの仕事だよ、バッカス」

「はぁ、仕方ねえか。分かったやりますよ」


 投げやりになったようなお手上げのポーズでバッカスが言うが、嫌そうな素振りは全くなくどこか嬉しそうでもある。

 強面こわもてなんだけど様になっている。海外のドラマみたいでかっこいいな。


「それじゃあ功労者へ報酬の時間かね。ま、ここにいる連中全員に払える金なんざこのギルドには無いから預金ってことになるけどね」


 それは仕方が無いだろう。ただでさえ数が多かった上に、この近辺にはいないはずの魔物まで居たんだから冒険者全員の報酬となればかなりの金額になってしまう。

 それにこの町は王都にかなり近い。大きな依頼は基本王都に持っていく。そうなればこのギルドには大した依頼が入ってこないから大金をこのギルドに置いておく必要はないからな。


 今すぐに現金が必要なわけでもないし了承して俺とランはギルドカードを渡す。

 おばちゃんはギルドカードを受け取ると裏の部屋に入っていく。裏の部屋に討伐数などを確認する魔道具か何かがあるんだろう。

 王都のギルドではすぐだったが、今回は数も多かったしランの分もあるし少し時間が掛かっている。

 バッカス睨むこともなくなったランと睨まれなくなって喜んでいるバッカスの三人で話をして待っていると程なくしておばちゃんは戻って来た。


「待たせたね。報酬分の金額は預金しておいたから他のギルドでも引き出せるようにしといたよ。金額は後で確認しな、あまり他人に聞かせることでもないだろ」


 言われてみればその通りだ。王都では普通に言われてたからそれがこの世界では普通なのかと思っていたけど、やっぱりおかしかったみたいだ。


「それでお嬢ちゃんはDランクに昇格、坊やはEランクからBランクに昇格が出来るけどどうするね?」


 飛び級か~、今回は仕方ないのかな。

 ってどうするって、昇格するかどうか俺が選べるのか?


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