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2話 お断りします

「じゃあ王女様。これから俺はどうしたらいいですか?」


 今後起きる悲劇を防ぐためには以前と同じようにしてたら駄目だ。召喚当時と同じでただの高校生としての身体能力しかない上に、魔力もほとんど無い状況だ。早い段階で闘えるように鍛えないといけない。

 ただ身体の動かし方や剣の扱いに関しては頭が覚えている。魔力もほとんど無いが魔力操作方法も分かっている。前回に比べれば早く強くなれるだろう。


 そのためには国に束縛されるわけにはいかない。

 また一から騎士団の下で訓練なんて時間を取られては堪ったもんじゃない。


「えっ?そうですね………どうしましょうか大臣?」

「はい。王家の文献によれば異世界から召喚された勇者は戦闘経験がほとんど無いようですので騎士団の下で戦闘訓練をしていただくことがよろしいかと思います」

「なるほど、分かりました。では勇者様、大臣が申しましたように動いていただくことでよろしいですか?」


 やっぱりこうなったか。

 ここで訓練するくらいなら魔物を倒したほうが強くなれるからな。時間を無駄にしてられない。


「あーいや大丈夫です。剣術は経験あるので剣一本貰えたら早速旅にでも出たいと思います」

「え、あ…そうですか…」


 お、これは思ったよりあっさり旅に出れるか?


「いえ王女様、それは良くありません。しっかりと実力を身に付けていただかなければ旅に出て早々に魔物にやられてしまったでは目も当てられません。数ヶ月訓練を積んだ後、騎士団の精鋭と共に魔王討伐に向かっていただくべきでしょう」


 まぁ簡単にはいかないか。言ってることは前と同じだな。

 実際には前回は訓練はしたが騎士団が付いて来ることはなかったんだよな。この大臣が自分の手柄にしたかったってことが明らかになったことと、召喚には関係ないことで詳しい内容は知らされなかったが長年に亘る不正が発覚して失墜したからな。


 しかし面倒だな。不正の内容が分からないからそれを言って大臣の意見を覆すことが現段階では難しい。

 もう強引に断って無理なら逃げ出すか…。


「確かにそれは良い考えです!今お聞きになったように騎士団と行動をしていただくことでより安全に旅も出来ると思います。勇者様、これでよろし…」

「お断りします」


 王女がこう言うことも分かってたが長くなるから途中で話しを切らせてもらった。


「貴様、何を言っている。あまり勝手なことを言ってもらっては困る。召喚された勇者であるのなら召喚主である我々の指示に従うべきであろう」


 ………めちゃくちゃなこと言ってんなこいつ。勝手なのはお前だろうが。

 大臣の言い様に王女も戸惑ってるな。大臣と俺をオロオロと見比べてるよ。

 さて、どうにか単体行動が出来るように話し合ってみるか。


「あんたこそ何を言ってるんだ。王女様は気にしてくれてたがこっちはいきなり召喚されてるんだ。勝手に呼び出されてなんで知らないやつから命令されなきゃいけないんだ。この国の住人でもないのにわざわざ聞く義理もないだろ」

「なんだとっ!?何のために勇者の召喚など行ったと思っている!こちらの言うことを聞いて騎士団と旅に出ればいいんだ!」

「やけにその騎士団の連中の同行に拘ってるな?そいつらと一緒に旅に出ないと何か困ることがあるのか?」

「…っ!?な、何のことだ。せっかく召喚した勇者が確実に魔王を討伐出来るようにしているだけだ!」


 分かりやすく焦ってるな。ただ何を隠してるのかが全く分からないんだよな。

 本格的にめんどくさくなってきた。適当に話を合わせて様子を見て逃げ出すか………


「分かりました。であれば勇者様には騎士団の方と一対一で試合をしていただき、問題ないようであれば訓練と騎士団の同行に関し勇者様の希望を受けようと思います」


 ………と思ったら王女様がメンドくさいこと言い出したよ。


「な、何を仰っているのですか!?この者の勝手をお許しになるのですか!?」

「許すも何も、先ほど勇者様が仰ったように、本来であれば我が国の国民でもなくこちらの都合のみで呼び出した方に命令する権利など私達には元々ないのです」


 この王女はさすがだな。

 この時期はまだ父親である国王が亡くなって日もあまり経ってないらしく、弱気で周りの意見に流されそうになってるけど誰に対しても優しく、義理を通そうとする。

 実際のところは勇者が言うことを聞いてくれないと召喚したことが無駄になるから困っているんだろうけど。

 まぁしかし一応これに対しても意見を言っておくか。


「試合をする流れになっていますが、別に俺は試合を受ける必要はないんですが」

「もちろん勇者様の気持ちも分かります。しかし互いに納得がいくために折り合いを付けさせていただけないでしょうか?」


 王女がそう言ってる横で大臣がすっごい睨んで来てるよ。

 大臣はムカつくんだけど王女との縁はここで切るわけにはいかないからな。

 

 大臣を無視して王女を見るが、少し前のうろたえっぷりが嘘みたいに真っ直ぐ見てくるな。

 数秒視線を合わせてたが引く気はないか。 


 ふぅ…仕方ないな。


「分かりました、試合を受けます」


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