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11話 昇格と武器屋

「昇格ですか?こんなすぐに昇格出来るものなんですね」


 まだ依頼を三件しか受けてないんだけどそんなもんなのか。


「確かにFランクからの昇格は比較的早く昇格が可能となっております。しかし本来であれば、依頼を平均で十件達成することで昇格することが普通です。Cランク相当のゴブリンロードが率いる群れを殲滅という快挙を成し遂げたからこその昇格となっています。ちなみにCランク相当って言うのは、普通Cランクの冒険者が四名以上のパーティであたる内容ですからね」


 むぅ、魔物の強さは経験で分かっているつもりだったんだが、魔物にもランク付けられていることは知らなかったな。前回で誰か教えてくれても良かったのに。


「では、これで俺はEランクになったってことですか?」

「……はい。C、せめてDランクへの昇格でもおかしくないのですが、冒険者としての経験が圧倒的に足りないとギルド長からのお達しがありまして…」


 いつの間にギルド長に確認してたんだ?

 もしかしてカード預けたあの短い時間で確認も済ませてたのか。恐るべし冒険者ギルド職員……。


 なんにしても好都合だ。飛び級なんかして必要以上に目立つのは避けたい。国から何か言われる要素は少ない方がいい、文句を言われても突っぱねられる程度の力が身に付くまではこそこそするくらいで丁度いいのかもしれないな。


「いえEランクでも昇格出来たんですから大丈夫ですよ。コツコツやっていきます」

「あ、ありがとうございます。そうですよね、ユウジさんならすぐに高ランクになれますよ!」

「今日は疲れているので帰ります。では」

「そう言えば最初に名乗り忘れていました。私イレーシアと申します。何かありましたら私までお声をお掛けください」


 輝かんばかりの眩しい笑顔に見送られて俺はギルドを後にする。俺のこと好きなんじゃないかって思ってしまうけど、あれは営業スマイルだ。俺は勘違い野郎じゃないから問題ない、うん。


「ん~!さてと宿に帰って寝るかな~」


 伸びをしながらそう言うが、それよりも剣が駄目になったから先に武器屋に行かないとな。


 カランカラン


 来客が分かるようにベルが取り付けられた扉を開き武器屋に入る。

 店内には作業をしながらチラっとこちらに目をやる無愛想で筋肉の盛り上がったいわおのようなおっさんがいて、壁には剣や槍、斧などの様々な武器が飾られたり立てかけられたりしている。

 武器屋の主人ってゴツイ人しかいないのかね。

 まぁ作業の邪魔をしても悪いから置いてある中から勝手に選ぶか。


 んーどれにするかな?使い慣れてるしやっぱり剣がいいよな。ゴブリンも倒しまくって経験値も稼いで強くなったし、普通の鉄の剣より少しくらい上物でも問題なく扱えると思うんだよな。


「あ、でも鉄製だけどかなり鍛えこまれてるな。これなら今のと比べてかなり安心して振れるぞ。国もこんな剣を渡してくれればいいのにな」


 兵士が使ってるのはあんまし良いものじゃないんだな。国の兵士なのに可哀想なことで。


「おい、小僧」

「俺のことか?」


 まさか向こうから声を掛けてくるとは思わなかった。


「他に誰がいる。客なんざお前以外にいないだろうが」

「そう言われればそうだな」

「武器を探してるんだろ。腰に下げたものを見せてみろ。見繕みつくろってやる」


 確かにそれは助かるな。プロの目線ってのも大事だろうし、どの道悩んでたことだしな。

 鞘に入ったままの剣を手渡すとおっさんは剣を抜いてじっくりと見始めた。


「こいつは酷いな」

「そこそこ強い魔物と打ち合ったからボロボロに欠けてしまったんだよ」

「そうじゃねえ。いや、それもあるんだが。元々の打ち方が甘い。この剣を打ったやつは余程未熟なのか雑な仕事をしたかのどっちかだな」

「マジかよ…」


 ちゃんとしたもの渡してくれよ王女さん。


「こんな酷い剣じゃお前の力量を測ることも出来やしねえ。仕方ねえ、どうせ誰もいないんだ。これを振ってみろ」


 渡されたのはさっきまで見てた上物の鉄製の剣だった。それを受け取り店の真ん中まで移動し何度か縦、横、斜めといろんな角度から素振りを行う。


「ほう、様になってんじゃねえか。だがその剣くらいじゃお前には釣り合わねえな。少し待ってろ」

「え?あ、ああ」


 なんか勝手に納得して奥に行ってしまった。

 まぁ待ってろって言われたんだから他の武器でも見てるか。

 そう言えば今回の依頼では余裕がなかったけど、魔石剥ぎ取り用のナイフとかも欲しかったんだ。これとかいいな。さっきの剣と遜色ないくらい上等だし買っとくか。


「待たせたな」

「いやそうでもないぞ」

「フン、お前にはこれが丁度いいだろう」


 そして手渡されたのは飾りもほとんどない無骨なつくりの黒く、それでいて鏡のように写し返してくる美しい剣だった。


「そいつは玉鋼と言われる一流の職人が精錬した鋼で打った剣だ。お前が使ってた剣よりも重いだろうが、おまえならそのくらいなんてことないだろう」

「それは大丈夫だけど、本当にこんなに良い剣貰っていいのか?」

「やるかバカタレ!剣と手入れ用の砥石を五つ、あとさっきお前が持ってた短剣を合わせて三千フランだ」

「それでもかなり安くないか?」

「いいんだよ。お前はなかなか見ない面白そうなやつだからな。なにか素材を見つけたら持って来い。その時は俺が打ってやる」

「ありがとう、おっさん」

「払うもん払ったら出て行け。他の客が入って来ねえだろうが」


 どうせ来ないだろ、と悪態と改めて礼を言い、俺は支払いを済ませ、剣を腰に下げ荷物を袋に入れて店を出る。

 いい買い物が出来たな。これからもおっさんには世話になりそうだ。


「さていい加減宿に帰るかな~」


 昨日のうちに取った宿に向かうため路地に入った。


 ドスッ


「え?」


 狭い路地を少し行った辺りで背中に何かが刺さるような感触がして、俺はその場にうつ伏せに倒れた。


クリスマスイブですね。

いえ、何も語ることはありませんよ?

……語ることがないんですよねぇ。

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