異世界生活を始めよう(1)
「一緒に・・・生活?」
思わずシーラさんに聞き返す。え、何故?一目惚れとかなの?
「ええ、ヒロトさん今帰る場所が分からなくて行く場所の当ても・・・無いんですよね?」
「はい、まあそんな感じです。」
「フォム教の教えでは、例えどんな種族であろうとも、困っている者に愛を持って接し手助けせよ。とあります。ならば今困っているヒロトさんを放っては置けません!」
力強く頷きながら言うシーラさん。うわっ恥ずかし。告白じゃないじゃない。一目惚れでもないし、純粋に好意で言ってくれたのか。しかも見ず知らずの他人に。すごいな。
「ですので、このティルナフォム教会で私と一緒に生活しながら帰る場所を探すのはいかがでしょうか?お部屋は余っていますし、もちろんご飯も出ます・・・たまにお手伝いもお願いする時もあるかもしれませんが。」
労働もせずに宿を用意してもらって、ただ飯食わせてもらうのは気が引けるしな。それに今の俺にとって、こんないい話はないんじゃないだろうか。とりあえず、ここにいればきっと寝る場所と食べるものには困らないだろう。金と帰る方法は・・・まあ字を覚えなければ仕事にもならないし調べることもできないだろうから後回しにしよう。それで・・・もし危険なことにでもなったら逃げよう。字は読めないけど言葉が通じないわけではないから何とかなるだろう。
「すみま「いいやヒロト!そいつは俺様が許さねえぜ!」・・・・・・」
すみませんがしばらくお願いできますか?と言おうと思ったら遮られた・・・ロキくんに。
「ロキくん!ヒロトさんがしゃべっているのを邪魔しないの!」
「やーい!ロキっち怒られてやーんのー!」
「そうだよロキ、人のお話を邪魔しちゃいけないよ。」
シーラさんは叱って、リサちゃんは笑って、クララちゃんは呆れていた。
「ふんっ・・・駄目だぜ、シスター。こんな素性も分からない怪しい男と一緒に住むなんて・・・」
ロキくんの言うことももっともである。
「えっ、ヒ・・・ヒロトさんはいい人ですよ!・・・ね?」
チラッと不安そうな顔をしてシーラさんがこっちを見る。別に俺は悪い人ではないとは思うが。まあ、確実に怪しい男ではあるよね。シーラさんに目線を合わせるとニコっと笑いかけてくれた。
「お前らもこいつ、怪しいと思うだろ?」
「え?リサは全然そう思わんし!」
「私は・・・いい人だと思うけど・・・?」
「や、やっぱりヒロトさんはいい人だと思います!」
「くっ・・・と、とにかくだ!ここで生活するなら、俺様と勝負しやがれぇ!」
ロキくんの熱い叫びが部屋にこだまするのだった・・・