黒い街
目を覚ますとそこは電車?の中だった、どうしてだろう、眠っていたためか何時もの風景に違和感を感じる。
気の所為か...と思いながら懐中時計を見て、まだ目的地には着いていないと安心し、窓の外を見る。
外は中々降り止まない雨で曇よりと暗く既に街の灯りが付き始めていた。街は黒ぐろとした建物に立体に交差した黒い渡り廊下の様な路線が張り付いていた。
そのいつも見ているはずの風景に畏怖のような不思議な感覚に襲わた。まだ寝ぼけているのか、眠っている間に何か恐ろしい夢でも見たのか、と思っていた。
しかしそれはすぐに、雨によって暗くも蒼く光る灯りと建物の黒く入り組んだ建物の壁面とが混じり合い、幻想的な風景を作り出している様を見た感嘆によって掻き消された。
しばらくして目的地に着き、電車を降りた。
ここは、この建物の中でも雑貨店が多くある通りだ。少し歩くと、古めかしい内装の店がありそこの入る、そこで切らしていたライターの芯や古い型の歯車などと、適当に私の趣味に合うもの見ていたが30分程度経った。
そろそろ店を出ようとレジに向かう。
レジには見ると少々嫌悪感を抱く醜い外見の店主がいた。店の雰囲気や品揃えなどは良いがこの店主には中々慣れずあまり顔を合わせずにそそくさと店を出た。
もうこんな所にしか無いのかとついさっき買った物を見て呟く。
懐中時計を見ると日も天頂を過ぎ傾いてきている時間だ。小腹も空き甘いものでも食べようと思い他の通りに向かった。
10分ほど歩くと、落ち着いたシックな感じの喫茶店を見つけそこに入った。席につきブラックコーヒーとトルテを頼む。
頼んだ品が来るまでの間、本でも読もうとバックからp.h.ラヴク〇フト作 [魔〇の家〇夢] を読むことにした。
少し経つとトルテとコーヒーが来た。
甘い菓子は苦いコーヒーと合わせて食べることにより、菓子の甘さを引き立たせて食べるのが良いなどと思いながら、私はしばらくの間。
頼んだ品を食い摘み、先程から読み続けている本の、アザトースの居る神殿の四次元構造や角を描く事によって空間を瞬時に移動するなどといった情景やアイディアを思い浮かべ魅了されていた。
そうしているうちに時間は過ぎ、懐中時計を見て時間を確認しながら急いで電車へと向かった。
電車に乗り込み予定ギリギリの時間に乗り込めた事に安堵していた。
外を見て、時計ではもう完全に日が落ちているだろう時間だが未だに雨は降り続いている。
電車が停車している少しの時間、蒼い灯りに照らされた壁面を見つめていると、ある事に気がついた。それはよく見ると壁に模様が描かれていることいること。
そしてその模様が今まで見た如何なる幾何学模様とも違う事。その事に気付き今までの行動に戦慄した。
今日、感じていた違和感の正体がはっきりと分かった。
そして何故、この世界がこの空間がおかしいと思わなかったのだろう。
此処は何処だ! 何だあの黒ぐろとした建物は!
心の中で叫ぶ事しか出来なかった。じりじりと恐怖が身体を駆け上がる
自分の姿にすら自信を持てなくなり、バックから取り出した手鏡で自分を見た。いつもの何も変わらない自分。
そうこうしている内に電車の様な物物が走り出そうとした。
慌てて降りた。
あの黒い壁面で覆われた建物に嫌悪が生じた。すぐにでもこの忌まわしい空間からでなければ...そう思い急いで走り出す。
その後、最終的に着いた所は、建物から突き出したテラス状の骨組み以外が透明な物質で出来た場所だった。
息が上がっている事に気付き、手を膝に当て屈んだ。違和感を感じ、下の方を目を凝らして見た。
するとあの黒い幾何学模様よりも冒涜的な黒光りする流体が見え、何故見てしまったのかと後悔した。
それは波のようでもあり個々の生き物にも見え、波打ち蠢いていた。
もうそれが生き物なのか物質なのかも解らない、理解したくもない。
私は最後にただただ神に祈りを訴えていた。