捕らわれ詐欺師とお嬢様
さてと青沢をやる気にさせたのはいいが、かなり厳しい状況なのはかわりない。時間もあまりない。
「で、まずはどうするの?」
「生徒会長に立候補をする為にクラスのバックアップが必要だ」
「バックアップ?」
「あぁ。後ろ楯なしに立候補しても勝ち目はない。」
青沢は下を向き呟く。
「あんた、私の今の立場をわかってんの?」
はい。わかりたくないけど知ってます。
「たしかに状況は最悪だがやるしかない。」
「なんか策があるの?」
策と呼べるほどではないがやることは決まってる。
「まず、クラスの重要人物を味方につける。今からクラス全員なんて無理だし非効率だ。」
「………」
青沢は俺の言葉の意味を理解し表情がくもるが関係なしに話を続ける。
「あのクラスにおいて、絶対におさえておきたい人物は二人だ。逆にその二人を味方にすれば自然とクラスはまとまるし、青沢の力になる。」
「……あいつでしょ?」
まぁ、わかるわな。てか顔全体に不満が表れている。てか舌打ちとかしてるし。あなたは立場を理解してますかー。
「あぁ、お察しのとおり、花城リカだ。」
「やっぱり。マジで無理。てかあいつが私の味方になるとか、天文学的数字並だし、想像するだけで生理になるわ。」
男の俺が生理になりそうです。…トホホ
「あのな、花城となにがあったかはひとまず置いとくにして、クラスの大半の奴等が花城信者だ。あいつの力は絶対に必要だ。」
「でも…あいつの下につくなんて」
「下につくんじゃない。それでは意味がない。花城に認められ、青沢の力になりたいと思わせるくらいじゃないとな。」
地盤はしっかりと固めとかなければいつ裏切り行為にあってもおかしくない。
「まぁ……とりあえずは花城は後回しだ。もう一人の方から味方にしていく。」
「……わかったわよ。てか、誰?正直考えても思いつかないけど」
青沢はクラスの連中を頭に浮かべたが、これといってめぼしい人物が思いつかない様子だ。
「名前は真木桐花だ。」
「真木?」
青沢はピンときていない様子で必死に考えている。まぁ、彼女は目立つタイプではないから知らないのも仕方ないがひどいな。
「クラスメイトくらい覚えとけよ。」
「うるさいわね。」
「やれやれ。……たしかに真木桐花は目立つタイプではないな。休み時間は本を読んでいるし食事も一人で過ごすことが多い。性格的にもいおとなしくというかさめてる。」
「はぁ?それって真木さんもボッチじゃん。味方にしても意味あるの?」
「ある。」
俺は即答する。
「花城とは違う意味で信頼のある人物だ。見ていて気づいたことがある。彼女は基本真面目だ。言われたことやルールをしっかりと守り、自分が嫌なことや、興味のないことには首をつっこまないし断る。しっかりと自分を持っている。この手のタイプは信頼されやすいし、実際クラスのおとなしい生徒達は真木を尊敬している。よく真木を見ては真木についての話をしている。」
聞き耳をしっかりとたてていた俺です。
「なんで尊敬されるのよ?」
「それは……いや、青沢。それはこれから真木と接触しお前自身が答えを見つけろ」
「はぁ、意味わかんない」
青沢は不満そうな表現で俺を見つめるが教えない。答えを言うのは簡単だしラクだ。それに今のお前に言っても理解できない。
「とにかく真木桐花をこちらに引き込む。次の休み時間から接触していくぞ。」
「わ、わかったわよ。でも、私はクラスで動きにくいわよ。さっきの件もあるし、嫌われものだからね。」
「わかってるよ。」
俺はニヤリと笑い、青沢がこれからすべき行動を伝える。
「……マジで嫌なんだけど」
「変わるんだろ?」
俺は青沢を試すように問いかける。
「やれば……やればいいんでしょ!!」
青沢は半ギレで叫んだ。
休み時間がもうすぐで終わる頃、青沢と俺は教室に戻る。二人で一緒に戻るわけにいかないので、俺が先に戻り、後から青沢が教室にはいる。
教室では青沢をいじめている連中が楽しそうに先程の事を話していたが、俺は自分の机に座り青沢を見る。
青沢は自分の席にいかず違う席に向かう。
「ちょっといい?」
青沢が問いかけた先には花城が不思議な表情で見つめる。
「なんですか?」
花城は答えると、青沢は目を閉じて呼吸を整え言葉を絞り出す。
「い、今まで、ほ、本当にご、ご、」
その先の言葉はプライドが邪魔をしているな。たく。
「ゴホン」
俺の咳に気づいたのか青沢は俺を軽く見て
「今まで本当にごめんかさい。」
深々と花城に頭を下げる。それを見ている連中はもちろん花城も驚く。
「私が悪かった。今までの事許してください」
青沢は体は震えていた。それは恐怖とかではない。怒りでだ。
花城は青沢をじっくり観察するかのように見る。やがてニッコリと笑う。
「許すとか、許さないとか意味がわかりません。私たちは同じクラスメイトですよ。私は皆さんと仲良く学校生活を送りたいだけですし、もちろん青沢さんともです。」
花城は青沢に優しく答える。その一言はクラスメイトも聞いている。もちろん青沢をいじめている生徒達にもだ。花城が仲良くするといえばいじめはできない。花城を敵にまわす生徒はこのクラスにいないからね。
「あ、ありがとう。」
青沢は涙目になりながらお礼を伝え席に戻る。
クラスメイトは何がおきたか理解できてない様子だが、とりあえずはいじめはおさまるだろう。
「マジであんたを殴りたい。」
席に戻ると俺を睨み付ける。鬼の化身がそこにはいた。
「あのな、つまらないプライドは捨てろよ。本当に手にしたいものがある時、我慢は必要だ。」
「なにもクラスメイトの前で……」
「皆が見てないと意味ないだろ。まぁ、お前にしてはよくやったな。」
俺は優しく褒めニッコリと笑う。
「う、上から目線はやめてよ。」
少しだけ照れた様子をしたのは気のせいだろ。
「さて、次の休み時間にでも真木桐花と接触するぞ」
俺は真木桐花を見ると、先程の件でクラスメイトは動揺している様子の中、真木桐花は知らん顔で本を読んでいる。……どうやら花城も青沢も興味がないらしい。
「なんか疲れたから明日からでもいい?」
「もちろん却下。」
俺は即答で答えると、授業の始まるチャイムがなり午後の授業が始まる。




