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捕らわれ詐欺師とお嬢様  作者: モトキ
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捕らわれ詐欺師のスクールライフ

 とりあえず、整理しときますか。クラスでの青沢は権力もなにもない。それどころか、あんなモブにまでいじめられているしな。まぁ、昔の立ち振舞いに原因があるみたいだが。しかも、今だにプライドは高いときてる。現実をみれてない。いや、それしかすがるものがないのかもしれないな。

 「……それではダメなんだよ」

 俺は小さくため息をついた。

 今のあいつにはプライドは邪魔だ。まず、しっかりと今いる立場を把握してもらう。その為に俺は嫌な役割をやりますかね。

 ほどなくして、授業が始まるチャイムがなる。青沢は苛立ちながら教室に戻り席についた。しっかりと、俺を睨みつけての着席です。

 「チィ」

 舌打ちも忘れていません。怖いです。

 見た目はかわいいんだけどな。整った顔立ちだし、髪なんかツインテールでいい感じ。正直、美人の類い。たぶんモテる。でも恋は生まれない。……性格は大事ですね。

 さてさて、仕事、仕事。

 授業が始まり、俺は青沢をチラリと横目で見た。眉間にシワがよっている青沢だけに聞こえる声で話しかける。

 「先程はすいません。でも安心しました。青沢さんが同じクラスにいてくれてよかったです。」

 「………………」

 「皆さん、すごい方ばかりで、正直、不安でした」

 俺は笑顔で

 「でも、青沢さんがいますからね」

 「……はぁ、何がいいたいの?」

 荒々しい声をだし、俺を睨みつける

 「だから、あなたはこのクラスで一番下にいる人ってことです」

 俺はさらに満面の笑顔を青沢に見せる。なんなら歯も見せる。苛立ってる人間には効果抜群。

 「お、ま、え~」

 今にも発狂しそうです。

 「授業中ですよ~」

 だが、俺は挑発をやめない。

 「惨めですね~。正直、身の丈にあった学校に行くべきでは?」

 「……なめるな。おまえに何がわかる。青沢財閥はまだ終ってない。お父様は必ずまた、表舞台に返り咲くわ」

 強い口調でしっかりと俺の目を見て言うと青沢は俺から視線を外し横を向いた。その横顔は悔しさ、怒りが、滲みでて下唇を噛み必死に耐えていた。

 まずはこんな所かな。とりあえずは俺の事を敵として認識した筈だ。今はこれでいい。その後は特にからまずに授業をうけた。

 授業が終わると、青沢は教室から足早に出ていった。

 「よし」

 俺は青沢が教室から出るのを確認すると、席から立ち上がり、クラスの連中に話しかける事にした。

 まずは自己紹介をした時に最初に拍手をしてくれた女性の元に向かった。彼女は一人席に座り、本を読んでいた。

 「読書中申し訳ありません。こんにちは。先程はありがとうございます」

 俺は頭を下げ、優しい声で話しかける。そして顔をよく観察する。

こちらの女性はいかにも、お嬢様って感じの女性だった。髪は長くて、これまた、整った顔立ちをして、トップアイドルに負けないくらいの美人さん。スタイルも良く、なんかいい匂いもしてる。…俺、ファンクラブがあったら入ろっかな。

 「こんにちは。いえいえ、私は何もしてませんよ」

 本を置き、笑顔で俺に話しかけてくれる。……笑顔って素晴らしい。 

 「自己紹介の際、一番最初に拍手をしてくれたから、クラスが変な空気にならずにすみました」

 「律儀なんですね。私は当たり前の事をしただけです」

 「助かったのは事実です。改めまして、僕は宮場翔貴と言います。色々とご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いいたします」

 「ご丁寧にありがとうございます。私は花城リカと申します。なにかわからない事があればなんでも聞いてください。といいましても微力ながらですが」

 優しい彼女の声、表情はまさに国宝。みんなで守っていきたくなるぜ。むしろ、俺一人でも守る。

 しかし……花城とはね。

 「失礼ですが、……もしかして、お父様は…あの?」

 俺は恐る恐る確認しようと遠慮がちに聞いてみると、察したのか花城は少し困った表情をして

 「一応、お父様は不動産を生業としています……」

 マジかよ。……花城不動産。現代の不動産王で有名だ。日本だけではなく世界にもその名は轟き、間違いなく世界の屈指の会社だ。年商は軽く兆の桁をいく。そのご令嬢が同クラですか。もう、怖い

 「花城不動産ですよね。すいません。……凄いとしか言葉がみつかりません」

 「やめてください。……同じクラスメイトなんですから、花城不動産は関係ないですよ。私はみんなといい関係を築きたい。これから仲良くしていきましょうね」

 …………これほどの大物だ。このクラスのドンだな。自己紹介の時みんなの反応からしても間違いないな。この子は青沢にとって鍵になる。

 「ありがとうございます。僕なんかでよろしければ、仲良くさせてください。」

 「はい!!」

 花城は嬉しそうに返事をする。さて……花城からみて、青沢はどうかな?

 「1つ質問なんですが?」

 「はい?」

 「僕の隣の席の青沢さんなんですが、機嫌がよくないみたいで、なにか失礼な事をしてしまったのではないかと心配で……」

 少し悲しそうに言ってみる俺。

 「……青沢さんですね。あの…青沢さんについて知ってます?」

 「会社の事なら…」

 「そうですか。以前は違ったんですが、会社の方がうまくいかなくなると、クラスで浮くようになりまして、彼女自身も……苛ついてるみたいでして」

 「そうなんですか」

 「だから、宮場さんがなにかしたとかではないと思います。皆さんにも同じ態度なので、心配しないで下さいね」

 「あ、ありがとうございます。」

 「私も……なんとかしてあげたくて、何度かお声はかけているんですけど、うまくいかなくて。……仲良くできたらいいんですが」

 花城はやるせない表情を浮かべた。

 「花城さんは優しいですね」

 俺は花城にいうと、頭を横にふった。するとチャイムが鳴る。

 「花城さん。ありがとうございました。チャイムがなりましたので、席戻ります」

 「はい。それでは」

 花城は小さく手をふり見送ってくれた。俺は軽く頭を下げて席に戻った。

 いやーいい子じゃん。マジでいい子。俺なんかにも優しくしてくれて感激です。花城=神ってことでよくない。

 なーーんてね。花城リカ。なかなか嫌な奴じゃないか。なにが、なんとかしたいだよ。たしかに青沢の性格に問題はある。ただ、彼女が本気で助けたいと思えば、青沢の状況は違ってもおかしくない。あのモブ二人がからんだりしてこないだろう。あの二人がボスの機嫌を損ねてまでやるとは思えない。つまり、花城は本気で助けたいと思ってない。青沢に対しては見てみぬふりをしてる。はぁー。あの手のタイプは大変だ。ただ、彼女を味方にできれば、このクラスは頂きだ。

 まぁ、大体やることは見えてきたな。だが、花城は後だ。

 まずは青沢のやる気をひきださねぇーとな。

 


 

 

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