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捕らわれ詐欺師とお嬢様  作者: モトキ
22/22

捕らわれ詐欺師とお嬢様

 「皆さん!!本当にお疲れ様です!!皆さんのお陰で無事に学園祭を迎えることができそうです」

 花城陣営は花城の指示のもと、明日、開催される天命祭を最高の形で迎える。各々のスキルは完璧だし花城陣営のモチベーションも最高潮だ。

 「明日はとにかく楽しみましょう。10年後に思い出しても笑えるような学園祭にしましょうね」

 花城は微笑みながら優しく伝える。花城の言葉に歓喜する生徒もいれば、涙を流す生徒もいる。……完全にやばい集団だよ。

 「では、また明日」

 花城の一言で教室から出ていく生徒を見送りながら俺は花城に近寄り話しかける。

 「……本音は?」

 花城陣営が誰もいなくなったのを確認すると優しく慈愛に満ちていた表情がゆっくりと鬼の表情に変わる。

 「青沢を潰す!!」

 彼女の頭にはそれしかない。クレイジー思考だ。

 「まぁ、大丈夫だろ。青沢に負けることはないだろ」

 「はぁ?100%なんてないだろ?99%勝率があろうが1%にあたれば負ける。楽観しなんて私はしない」

 「御立派ですな」

 「お前も役にたて!私は役に立たない奴を側には置かない」

 「なら……青沢陣営に戻ったフリをして情報でも手にいれてきましょうか?」

 「それは駄目だ」

 お!判断早いな。

 「お前を信用したわけじゃないからな。今いかれたら逆に面倒だ」

 「信用されないのは辛いな」

 「お前は黙って私の指示にしたがっていればいい!」

 「了解」

 まぁ、信頼を築いていくのは簡単じゃない。花城の信頼とならば尚更か……。

 「さて、明日に備えて俺達も帰ろう」

 「……そうだな」

 

 花城と帰宅途中、グラウンドに青沢達の姿が見え花城の足が止まる。

 「楽しそうだな?」

 青沢達の姿を見て始めに思った感想はこれにつきた。青沢を含むメンバー達の状況は絶望的だろう。でも……笑顔だった。たぶん明日の事をイメージしながらあれこれ考えているのだろう。青沢は特に楽しそうに見える。彼女は学園祭が初めてな訳じゃない。でも誰かと一緒に本気で取り組み、共有しながらあれこれとやるのは初めてなんだろう。本気にならないと楽しさなんてもんはわからない。楽しいばかりじゃなく辛いことも共有するから楽しい時は自然に笑顔になるんだ。

 「くだらない!!今が楽しいからなに?明日もあんな風に笑えているかしら?」

 花城は冷めた目をしながら冷たくいい放つ。

 「泣いてるかもな」

 「でしょ!!本当にくだらない」

 「だだ……」

 俺は青沢達の方をみて自然と言葉が出た。


 「10年後くらいには笑えてるかもな」


 「はぁ??意味がわかんない」


 今の花城がわかる筈もない。結果しか興味がないから。でも……過程にも意味はあるんだよ。過程があっての結果だ。仮に負けたとして、今の青沢達は10年後に思い出すのだろう。負けた事を悔やみ、そして……笑うだろう。思い出はなにも学園祭だけじゃないのだから。

 

 「いや……なんでない」

 「…………」

 俺が言っても説得力なんてないな。俺も過程より結果をだからな。

 「帰ろうぜ」

 「仕切るな!」

 俺は花城に殴られ歩き出す。いや……殴るのは控えてね。一応年上なんだから。

 

 「なぁ?」

 「なんだよ?」

 歩いていると不意に花城が話しかけてくる。

 「お前は私がこの勝負に勝ったら、私の側にずっといるんだろ?」

 はぁ?唐突になんだ?

 「まぁ、最終目標はお前の親の会社の重役になることだからな。いることになるだろーな」

 「そ、そうだよな……うざそうだな」

 喧嘩したいんだな。よし!!始めよう!!

 「……花城がうざいと思うなら距離をとればいい。ただ、コネクションだけは繋いでもらうがな」

 

 「ふざけるな!!」


 花城は声をあらげ俺を見る。


 「お前は……私が監視する。お前は……黙って私の横にいればいい」

 すぐに顔をそらし今度は小さく呟く。

 「…………そうかよ」

 二人の間に微妙な空気が流れる。……青沢達を見て自分が虚しく見えたのかもな。一人で生きていくことはそれなりに覚悟がいる。才色兼備で完璧を絵にかいたお嬢様でも花城リカは17才の女の子だ。

 「まずは明日だ。私を失望させるなよ」

 時に強がりは弱さの証だ。彼女もまた不安なのだ。

 「あぁ」

 その弱さを他人に見せることができる世界にいたら彼女は違う道にいたのかもしれない。


 花城と別れ、寮の自室で休んでいると俺の携帯が鳴る。携帯の着信画面を見ると青沢の名前が写っていた。

 「あぁーこの電話は一時使われておりません。疲れているので空気を読んでおかけ直しください」

 適当な声で棒読みになる俺。

 「あんたねぇー!!私だって疲れてるんですけど」

 えぇー!!疲れてるならかけてくるなよ。

 「なんだよ?今は青沢との接触は禁止なんだが」

 「知ってる。ただ1つだけ確認したいの」

 「確認?」

 「うん。大切な事!だから……本音で答えて」

 「…………」

 なんだ?青沢らしくない。

 「明日が終われば今後の未来は大きく違ってくる。もしもの時の覚悟はしてるし、もちろん負けるつもりはない。でも……あんたの口から聞きたいの」

 「わかった。本音で1つ答えてやる」

 電話口からも伝わる真剣な声。それを払い除けるのは無粋だろ。

 

 「宮場の中で未来の生徒会長は誰?」

 

 ここで冗談を言ったら殺されるかな。未来か……そんなのは決まってるだろ。


 「青沢しかいないだろ」


 「………うん」

 俺の言葉を聞くと甘えた声で頷く。ごめんな。ありがとう。青沢。今まで無理をしてくれたのだろう。電話口からお前の泣いている声が聞こえてくる。


 「宮場……明日は絶対に負けないから!!」

 「あぁ!任せた。相棒」

 

 青沢との電話を切ると考える。俺はやはり詐欺師だ。息をするかのように嘘をつく。前から考えていた事がある。花城に俺自身の正体を伝え助けをこえば、今の花城は必ず助けてくれる。あいつは認めたくないかもしれないが、あいつの中で俺という存在は大きくなりつつある。青沢を生徒会長にするより遥かに簡単だ。

 「だから……ごめんな。……青沢」

 俺は最低の詐欺師で……こんな生き方しかできないのだから。


 「あぁー夢だな。これは」

 たしか青沢と電話を切って風呂に入って飯を食べて、明日の学園祭を考えてたら寝たんだよな。たまにあるんだよな。夢を認識できる時が。この夢を見るときは心が乱れたりする時だ。……心が。

 「クソ!胸糞わるい」

 本当に胸糞わるい。今見ている夢は……あの時の……夢だ。


 俺にも父親と母親はいた。優しくて時には厳しく、まっすぐで絶対に嘘なんかはつかない両親だった。工場を経営していて、裕福なんて言えないが家族三人が笑って暮らせる生活だった。父の働く姿は頼もしくて、母はいつも優しく微笑んでいたな。俺も小さいながらに幸せを感じていた。……あの日が来るまでは。

 よくある話だが景気が悪くなり経営が傾く。銀行からの融資がとまり借金も増える。それでも人のいい父はリストラ等はおこなわず寝る間もおしみ働いた。母もだ。睡眠時間はあったのかさえわからない。

 今でも父の言葉を思い出す。

 「人は一生懸命やっていれば神様は見捨てない。神様は平等に見ているから」

 今でも母の言葉を思い出す。

 「正直にまっすぐに生きていれば必ず報われる時がくるから」

 そんな両親を心から尊敬した。俺もまっすぐに生きていきたいと。

 そんな時、転機が訪れた。経営が悪化をしていく中、ある大企業が資金援助を申し出た。

 俺は久しぶりに心から喜んでいる両親を見た。嬉しかった。神様はいるんだと本気で思ったし努力は必ず報われるとも本気で思った。

 その大企業は資金援助の条件に父の経営する会社の技術の情報開示を求めた。父は疑いもせずに条件をのんだ。

 これで皆がまた幸せになる。ありがとう神様。

 資金援助は情報を渡すと……打ち切られた。

 何が起きているのかわからない。契約書はかわした筈。契約書の内容は?そんな事は無意味だった。相手が有利の契約書だった。

 大手企業と小さな工場とでは勝負にならなかった。契約不履行で何度も話をしに行ったが相手の顧問弁護士に突き返された。両親もすがるように弁護士を雇おうとするも断られる。負ける勝負は誰もがしたくない。相手は大金を払って雇った弁護士だった。

 資金援助をきられてからは地獄だった。苦しい中、父はリストラをしずに大切に守ってきた従業員は一ヶ月給料が払えなくなるとあっさり辞めていった。それと同時に経営困難で倒産を余儀なくされた。あの時の父と母の涙を忘れたことがない。それでも両親は俺には笑いかけてくれた。俺は自然と涙が出た。

 借金はあるし地獄にかわりないけど三人で生きていく。俺には二人がいれば十分だったのに……。

 倒産直後にあの大手企業から訴状が届いた。父や母があることないことを言いふらし風評被害がでたと慰謝料の請求をしてきた。そんなバカな事はない。人の悪口なんて聞いたこともない。契約不履行の時でさえも……。両親は絶望した。あの時……俺はなんていえば正解だったんだろう。どうすればよかったんだろう。わからない。一つだけ言えるのは…………。


 両親は首を吊って死んだ。 


 神様は平等?努力は報われる?まっすぐに生きていれば?両親の言葉がわからない。誰よりも頑張ったのに。誰よりも報われていい筈なのに。

 許さない……絶対に!!

 俺はこの手であいつらを潰してやる。全てを奪い尽くしてやる。その為だけに生きていく。


 俺は……俺は…………。


 「はぁはぁ」

 クソッタレ!!ようやく目がさめた。今さら……。

 「目から……」

 俺は流れる涙を拭き頭をクリアにする。

「今日は学園祭だってのに。早く行かないと」

 時計を見ると時間もあまりない。制服に急いで着替えご飯も食べる気がしずに足早に寮から出て空を見る。


 「今の俺を見たらあの二人は悲しむだろうな。……それでも俺は」

 今は亡き両親を思いだし、学校に向かうのだった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 


  

 

 

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