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捕らわれ詐欺師とお嬢様  作者: モトキ
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捕らわれ詐欺師とお嬢様

 学園祭が間近になり、学園全体が学祭ムードになり賑わいを見せる。一般の学校と同じでみんなであれこれ話し合い作業を進める姿は楽しそうだ。まぁ、規模はまるで違うがな。お金をふんだんに使用しており、普通の学祭レベルは軽く越えている。学祭当日は大型ショッピングセンター並に立派だろう。それだけお金をかける理由はある。当日は保護者達や一部の特別な大人達が来る。つまりはこの国の各部門のトップ達が足を運ぶ。情けない姿は己の評価に繋がるし、逆にうまくやれば評価はあがる。未来の跡取り達は大変なのだ。

 

 「皆さん、学園祭まで後少しです。最後まで楽しくやっていきましょうね」

 笑顔で優しく花城陣営に鼓舞をする。花城の素を知ってる俺からすると気持ち悪い限りだ。

 「本音は?」

 俺は小声で話しかける。

 「楽しさなんて二の次だ。死んでもミスだけは許さない」

 俺だけに聞こえる声で笑顔だけキープし毒をはく。まぁ、こっちの方が気持ちいい。やばい!違う方向に目覚めてる俺がいる。

 「少しは気持ちは落ち着いたみたいだな」

 昨日の花城はおかしかったからな。

 「……うるさい」

 少し顔を紅くし照れた様子の花城さん。しっかり俺の足を踏むことを忘れていない。……痛いからやめてね。

 「皆さん!!今日からは全体練習を始めます。本当にお疲れの所申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」

 つまりは残業だ。各担当を集めて当日に向けての流れを練習する。

 「宮場さんもよろしくお願いしますね!!」

 「………はい」

 

 「私達も負けてられないわね」

 花城陣営を見て、青沢は気合いをいれる。

 「……そうね」

 真木の表情に疲れがみえる。

 「……言いたいことはわかってる」

 「えぇ……やはり人数が足りないわね」

 みんなで切磋琢磨し、店を営業できる段階までは青沢陣営もきていた。問題は勝負に勝てる営業ができるかだ。

 「本当にみんな頑張ってるけど、このままじゃ……」

 すべてにおいてギリギリの人材しかいない青沢達は売上をとれるやり方ができない。一番の問題は商品の生産において、時間がかかりすぎていた。

 「青沢さん。やはり作り置きも考えた方がいいんじゃないかしら?」

 事前に商品を作り売っていく方法だ。時間は有効に使えるが作り置きを買いたいと思う人はまれだろう。

 「ダメ!!そんなの意味ない」

 青沢は頑なに拒否をする。

 「なら、誰か助っ人を頼むしか……お金を使ってでも。お金で不自由してない生徒達だから厳しいけど」

 「私にそんな人脈はないし、お金もない!」

 清々しいほど青沢らしい。

 「それに私はここにいるみんなで頑張りたい!!今いるみんなでやるから意味があるの」

 「それは私も同じだけど、……負けたら意味ないのよ?」

 もちろん真木も青沢と気持ちは同じだが、負けたら終わりの戦い。真木の危機感は当たり前だろう。

 「勝つわよ!!それに策もあるわよ」

 「………わかった。信じるわ」

 青沢の自信に満ち溢れる表情に真木は根負けした。

 「みんなー!!集合してー!!」

 青沢は真木が諦めた所をみるや他の生徒を呼ぶ。

 「これから私が考えた一発逆転の策を発表するわ」

 青沢は真木含む青沢陣営にドヤ顔で伝えた。

 

 「えぇーーーーー」

 

 一同声を揃え驚く。普段大きな声を出さない生徒も驚いている。


 「これで私達の勝ちは揺るがないわ」

 青沢はニヤリと顔を緩ませ勝ちを確信する。


 青沢陣営が驚きの声を出すと花城は過剰に反応する。

 「なんなの?一体?」

 「さぁーな!また青沢がバカな事でもいったんだろう」

 「………………」

 花城は黙り無言でなにかを考える。なんでこいつは青沢に対しての警戒心は強いの?……青沢だよ。基本はおバカさんなの。彼女は!!

 「まぁ、どっちにしてもこちらが有利だろ。負けないさ!なんなら妨害でもしたらいいだろ」

 「…………少しきなさい!!」

 花城は俺を連れ出し人気がない教室に連れていく。

 

 「なんだ?」

 「おかしい!!」

 疑う目線を俺に見せる。

 「なんだよ?なんもしてないぞ」

 「昨日からあんたの態度がおかしい。なんで私を励ましたりするの?あんたは私が勝ったら困るはずなのに」

 「いや、考え方を改めただけだ」

 「考え方?」

 花城は意味がわからないと頭に疑問符を浮かべる。

 「俺はお前につく。お前は冗談でこの前いったかも知れないが、今後の俺の心掛け次第でお前のそばにいれるかもしれないとな」

 「………………」

 「俺の目的は青沢を生徒会長にする事だった。それが叶えば得られるメリットはでかいが、花城につく方がメリットが大きいと判断したんだ」

 花城は俺の表情や仕草をまじまじと見る。嘘をつくと表情や仕草になにかしらの変化がある。

 「はぁ!!あんたを信じろと?あんだけ青沢の為に私に喧嘩を売っていたあんたがいきなり私につくとかありえないだろーが!」

 「たしかにな…………ただ」

 俺は優しく見つめ言葉をはく。

 

 「メリットとか関係なしに、お前といる時間もわりかし楽しかったんだよ」

 

 「な、なにいってんだ。…………バカじゃないの」

 花城は思わす顔をそむける。たぶん素の自分に対し初めてかけられる言葉だろう。今まですべての人に隠して生きてきた。だから、この言葉に花城は戸惑いを見せる。

 「まぁ、正直メリットが一番でかい訳だけどな」

 俺は笑いながら伝えた。花城はため息をつき再度俺を見る。

 「信じた訳じゃない」

 「あぁ。知ってる。信じてもらえるまで努力するさ」

 「なら聞くが、私についてメリットがあると言ったが……何が目的なんだ?」

 

 「花城不動産の重役のポストだ」

 俺は間髪いれずに答える。日本、いや世界屈指の企業だ。メリットとしては破格の大メリットだ。

 「なるほど。大きくでたな」

 「さしあたっては学園祭!」

 「学園祭?」

 「来るんだろ?花城勲社長が!」

 花城は少し体が反応する。

 「天命学園に多額の寄付金を出してるんだ。特別待遇だろ。ましてや娘もいるんだ」

 「私に紹介してほしいわけだ」

 「顔見せ程度にな」

 俺はニヤリと笑う。すると花城は無言で考える。

 

 数秒の時間が過ぎると花城はニヤリと笑う。 


 「まずは青沢を潰す!!しっかりと働け!!裏切り君」

 花城は皮肉を言いつつも俺の胸に軽く拳をぶつける。

 「了解だ。ボス!!」

 花城がとりあえずは信じたと受け取っておこう。

 

 


 

 

 

 


 



 

 

 


 

 

 

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