捕らわれ詐欺師とお嬢様
次の日には花城から青沢に勝負内容が伝わる。青沢は「わかった」と一言だけ言うとあっさりと自分の席に戻る。特に難色を示す訳でもなく落ち着いていた。
クラスで天命祭の出し物についての話し合いで花城は飲食店をみんなでやりたいと発言した後に青沢も続いて出店するとクラスメイトに伝える。もちろん花城の発言に対し否定的な言葉を言う者はいない。むしろ賛成との意見しかない。青沢が独自に出店することにも邪魔物がいなくてむしろよかったという様子だ。こうしてクラス内で2店舗出店がめでたく決まった。もちろんクラスメイトは花城と青沢が勝負することは知らない。そして予想通りに花城側にクラスの8割がついた。後の2割は真木が青沢についたことで悩んでいる様子。
「お願い。私達と一緒にやってほしい」
休み時間に真木は悩んでいる残りの2割の生徒達に頭をさげる。真木の横には青沢もいる。
「……真木さんのお願いなら協力したいんだけど……花城さんと一緒にやるのは駄目なんですか?」
青沢をチラリと見るがばつが悪そうに目線をそらす。真木を慕う生徒はクラスでも目立たないタイプ。協力はしたいが花城に敵対するのに難色を示す。
「私は青沢さんとやりたい。でも私達だけでは無理なの!みんなの協力が必要なの。お願いします」
真木は必死に頭をさげる。青沢はその姿を見ても言葉はなく悩んでいる生徒を静かに見渡す。
「本人を前に失礼なんですが………なんで青沢さんなんですか?」
青沢がやはり気になるのか恐る恐る尋ねる。たぶん過去の件で青沢の印象はよくはない。
「友達だから!!」
真木は即答する。
「……………」
その一言に少なからず驚いている様子だ。すると隣で静観していた青沢が口を開く。
「たぶん……以前なら考えもしなかったかもね」
突然の言葉に青沢を見る。
「あんたらの事!!はっきり言って認識もしてなかった!地味だし暗いしで……クラスにいたのって感じくらいにしか思ってなかった」
「………あなたって人は」
真木は顔から血がひいていくのがわかった。もちろん聞いてる生徒達からしたら喧嘩を売られているわけだから凄い勢いで青沢を睨む。
「……無理!!真木さんの頼みでも青沢さんに協力なんてしたくい」
「なんでそんな酷いことを言えるのよ!」
「あ、青沢さんだって同じじゃない!」
普段がおとなしいとはいえ青沢の言葉に怒りが爆発する。何故そこまで言われないといけないのかと。自分達でも地味なんてことは自覚もしてるし目立つようなタイプでもない。周りに気をつかい、人にあわせ、身の丈をわきまえて生活してるだけなのにと。
「………本当にそうだわ」
青沢は優しい声色で話しかける。
「周囲を見下して、バカにしてた。本当に………くだらなかった」
「……………」
「価値がなかったのは私の方だった。真木やあいつと知り合ってわかったの。なんでもない話が楽しいし、一緒にいるだけで安心する」
すると青沢は真木を見て微笑むと他の生徒達をゆっくりと見て話しかける。
「遠山京子、世良美佳、田中美保、山田亜紀………」
青沢は一人一人の名前を呼ぶ。ゆっくりと力強く。
「私はあなた達の事をもっと知っていきたい。違う!知りたい!」
青沢の本音!嘘偽りなく。
「私はここからみんなと築いていきたい。楽しい学園にしていきたい。それにはあなた達が必要なの!だから……」
「私に力を貸してください!!お願いします」
青沢は頭をさげる。恥はないし嫌々でもない、そこにはたしかに青沢の気持ちが詰まっている。
「私からも改めてお願いするわ。協力してください」
真木も頭をさげる。義務感ではない。本当に青沢の為に自分がしたいことをしているから。
「頭をあげて……」
一人の生徒が真木と青沢に話しかける。
「私達も同じだよ。青沢さんが苛められているのを見てた。自分が苛めの標的にされたくなくて」
また一人。
「くだらないのは同じだよ」
また一人と言葉を繋ぐ。
「私達も変われるのかな?」
最後の一人が不安そうに青沢を見る。
「変われるよ。違うな……変えられるのは自分だけだから」
青沢はある人を思い出すように優しく伝える。誰だって変われる。ただ踏み出す一歩が怖いだけ。全てがうまくいくことはなかなかない。でも踏み出さなければ変えられない。
「天命祭……協力させて!!私は青沢達とやりたい」
「私も!!」
「うん!私も協力するよ」
別に今の現状が駄目なんかじゃない。でも少しだけ違う方向に向くのもいいのかもしれない。新たな出会いがあり、出会いの数だけ喜怒哀楽がある。クラスの中で目立たないとかおとなしいとか言われてはいるけど、誰が勝手に決めたのだろう。彼女達だってクラスで楽しみ笑う権利はある。
「ありがとう!!皆で楽しい学園祭にしよう」
青沢はニコリと笑う。少ないながらも味方ができ青沢がスタートラインにたてた事に真木は胸を撫で下ろす。
「……あの子達は青沢についたか!……バカだわ」
花城は青沢達の一部始終を見て呆れる。
「言葉使いを直せ。教室内だろ。」
「今はお前と二人だからいいだろ。それに気付かれるマネはしねぇーよ」
いや、俺に見たかっただろーが!!たく!花城には他の生徒からの信頼をおとす行動はやめてもらいたい。これから役にたってもらうのに。
「それで?俺はなにをすればいいんだ?」
花城から見る俺の価値なんてのは単純に青沢に対しての嫌がらせだ。俺が離れることで青沢の精神的ダメージを狙っての事。今の青沢は俺抜きで戦おうとしてる。
「まぁ、正直に言えば、お前をとれば王手だと思ったが甘くないわけだな。………ムカつく」
「そうだ。甘くないんだよ。人生はな。」
「うるせーな!!お前が言うな!」
くぅ!痛いとこをつく奴だな。何も知らないくせしやがって。
「まぁ、勝ちは揺るがない。お前は私のご機嫌でもとっとけ。数々の非礼はお前次第で許してやる。まず、ミルクティーを買ってこい」
こ、こいつ!マジで嫌な奴だな。日頃のストレスを俺にまるごとぶつけている。このままでは円形脱毛症になる。
「クラスの2割が青沢についた所で何ができる?それに私には他のクラスに顔がきく。頼めば終日、店は長蛇の列だ」
嘘はないだろう。それだけ花城リカ……いや、花城不動産のご息女の名は絶大だ。
「食材も最高級の物を取り揃える予定だし、人材も豊富だ。学祭が始まる前までその道のプロにみんなを指導をしてもらう。負ける要素がない。……なんなら青沢の店に妨害工作をしてもいい」
花城の頭の中で確実に勝ちのルートが出来上がっている。対して青沢はノープランだろうな。真木達がいれば指導してくれる人や食材なんかはなんとかなるだろう。でも真木や青沢に人とのコネクションがない。一人は嫌われ、一人は閉鎖的に生きてきた。学祭は1日限り。食材等は対等な場合はやはり人脈が鍵をにぎる。
「で?ジャンルはなんだ?」
俺は花城に尋ねると花城嬉しそうに口を開く。
「スイーツだ!!」
「つまり、スイーツ系ならなんでもありと?」
「あぁ。なんでもあり!スイーツ系なら認める。当たり前だが値段も各自で決める」
「花城も女の子なんだな!?」
「はぁ?!私以上の女なんかいねぇーよ!!」
花城は満面の笑顔を見せる。それを遠目から見てる男子は顔が一瞬でいやける。
「言葉と顔をあってないからな!!」
一応指摘をするも、花城は揺るがない。俺が今思うことは女は怖いって心底思う。騙されないように生きなきゃな!




