捕らわれ詐欺師とお嬢様
しばらくすると青沢達が教室に戻ってくる。戻ってきた青沢は落ち着いた様子だった。
「真木がうまくやってくれたみたいだな」
川瀬夏見のワードで気づいてくれた。意味がわからなくてもおかしくない。優秀なんだよな。……味方でよかった。
さて、青沢にも俺の状況は理解できた筈だ。花城にも今のところは疑われてない。俺から動く事ができない以上、青沢達に頑張ってもらうしかない。頼むぞ!相棒。
青沢は一度俺の方を見ると軽く頷く。そして、足早にある人の元に歩いていく。
「花城!大事な話があるから放課後、教室に残って」
はぁ!?いやいや!あの頷きの意味は?
あぁー!青沢だもんな!もうわかってました。計画的にとか無理だよな。いきなり花城に突っ込んでいくのが青沢だ。真木は何やってんだか?俺は青沢の近くにいた真木を見る。
…………なるほどね。全部承知のうえか。
フフ!あれ?なんだ?笑える。青沢らしさに笑えるな。いいよ。どちらにせよ俺は動けない。青沢達に頑張ってもらうと決めた以上は任せるさ。
「今日は珍しい日ですね。なんの用事かわかりませんが……わかりました」
花城は青沢を見て涼しい表情で答える。一度俺を見たが俺は首を横に小さくふる。俺と青沢の間で打ち合わせなどない。これは青沢自身が決めたこと。
「じゃ、放課後に」
「はい」
青沢はそれだけ伝え自分の席に戻った。教室にいた生徒は花城に駆け寄り心配した様子を見せるも花城は余裕の笑みをみせていた。
そしてあっという間に放課後になる。周りにいる生徒達は気になるのかなかなか教室から出ようとしなかったが、花城が青沢さんと話がしたいのでと言うと空気をよみ教室から出ていった。真木は傍にいるつもりだったのか青沢の近くにいるも青沢に何か言われたのか教室から立ち去った。
俺も教室から出ようとすると花城が俺の制服の袖を掴んだ。つまり俺はここにいろというわけね。
「さて、青沢さん。皆さんには一応帰っていただきました。宮場君は私の判断で残ってもらいましたが駄目でしたか?」
花城はゆっくりと青沢の方に近寄る。
「あんたが嫌じゃなければいい」
青沢もゆっくりと花城に近寄る。そして向かい合う。
「それはよかったです。では本題にはいりましょうか?大事な話とはなんですか?」
花城のスタイルは変わらない。優しい口調で青沢に問いかける。
「花城。あんたにお願いしたいことがあるの」
青沢はいつになく真剣な表情で答える。
「青沢さんからのお願いですか?なんでしょう?」
花城はたぶんわかってる。だからこそ楽しんでる様に見える。
「私は生徒会長になる。だからあんたの力が必要なの!力をかしてもらいたいの」
青沢の言葉を聞くと花城は驚いた様子で手を口にあてる。いやいや!花城さん!口が笑ってるよ。横にいるから見えてる。
「生徒会長ですか?ビックリしましたよ。青沢さんがそんな事を考えてるなんて」
白々しいなー!!役者志望か!
「……わかりました。私の力なんてしれてますが精一杯手伝いますね」
形だけだろうな。俺との約束もあるしな。花城にとって選挙なんて興味がない。青沢がいかに苦しむかだ。手伝う形だけして裏切るに違いない。それは俺もわかってた。だからこそ時間をかけて攻略したかったんだがな。
「……違う」
青沢が小さく呟く。……青沢?俺も花城も青沢を見る。
「あの?青沢さん?」
花城も予想外の返答なのか少し戸惑いをみせる。
「あぁーやっぱり気持ち悪いな!あんた」
青沢は花城を見てはっきりと言う。
「青沢さん?今なんて?」
「だから言ってるじゃない。あんたのその表情や言葉や仕草が気持ち悪いのよ。無理して作ってるんじゃないわよ」
「わ、わたしは……」
「前にも言ったわよね。あんた見てるとイライラするって!」
「…………」
「いい人を演じて、自分を我慢して、あんたは何がしたいの?周りの奴等も別に友達と見てないでしょ!!つまんない人生ね」
おいおい!間違ってないがはっきりと言いすぎだ。
「私がお願いしてる相手は表面上にいるあんたじゃない。嘘偽りない花城リカにお願いしてるの」
青沢の言葉に静寂が教室内に訪れる。花城に笑みや余裕はなくなっていた。
「……それがムカつくんだよ」
花城は体を震わせ青沢を見据える。
「…………何がよ?」
「何様なんだ!!てめぇーは!!」
「…………」
「お前に何がわかるんだよ!!私の人生がつまらない?本当にいってくれるじゃない!底辺が!!」
花城は怒鳴る!そこにいるのは完璧とは程遠い本来の花城だ。
「あんたが私の人生を否定するな!わかるか?私が今までどんな気持ちで生きてきたか!辛くても吐き出す場所なんてないんだよ!」
「…………」
「生徒会長?バカか!手なんか更々貸す気なんてない。私はお前が大嫌いだ。失敗して終わるんだよ!そしてなめたことを言った自分を後悔しろ。お前こそつまらない人生だろーな」
息を切らしながら罵声を浴びせる。でも青沢が揺らぐことはない。
「たしかに今まではつまんない人生だったかもね。生徒会長なんてのも夢物語だよ。でもさ、今は結構楽しいんだよね。だから後悔はしない」
青沢が俺の方をみて一瞬だけ微笑むと花城に目線をやり強くいい放つ。
「絶対に後悔はしない!!」
その姿に花城は唇を噛む。そして睨み付ける。花城にとっては誤算だったかもしれない。青沢が本当の意味で変わろうとしている。それは俺よりも花城の方が何倍も気づいている筈だ。
「……もういい!勝手にしろ。お前が生徒会長になろうとするんなら邪魔してやる。絶対に後悔させてやるよ」
「でしょうね。なら白黒はっきりさせよう」
「はぁ??」
「天命祭で私と勝負しなさいよ!!」
天命祭?たしか学園祭だよな?
「ルールはあんたが決めていい。私が負けたらあんたの下につく。一生ね」
「……何勝手に仕切ってんだよ。やるなんていってねーぞ」
「逃げるの?」
青沢の挑発的な発言に顔をヒクつかせる花城。
「あぁ。いちいちムカつくわ。お前の挑発にのるのは不本意だが……上等だ!!やってやる!私が勝ったら地獄みしてやるからな」
「上等よ!」
負けたら本当に終わりだが面白い。たく!いいじゃねぇーか。やる価値はある。
「で?お前が勝ったらどうしたいんだ?生徒会長になる手伝いをすればいいのかよ?」
「手伝い?あんたバカ?」
青沢はニヤリと笑いはっきりといい放つ!
「私を生徒会長にするの!!絶対に!!あんたならそれができる」
青沢の覚悟に俺だけじゃない。花城も驚く。仮に花城が手伝っても生徒会長になれるかと言えばそうじゃない。あくまでスタートラインにたちスタートをきれるだけの事。根拠なんてないし花城が裏切る可能性だってある。ただ青沢の言葉は花城を認めてるからこそ言える言葉だ。昔の青沢では言えない言葉だな。
「上等だ!たたき潰してやる!!」
花城は負けるなんて微塵もおもってはいない。普通に考えれば花城が勝つに決まってる。
「決まりね」
「あぁ。ルールが決まり次第伝える」
二人の間に火花が散る。
「よろしく。じゃあね」
青沢は言いたいことを伝え俺たちに背を向けて教室から出ようとする。
「あぁー!それともう1つ」
青沢が振り返り花城を見る。
「まだなんかあんのか!?」
花城は再度青沢を睨み聞き返す。花城は何回睨むんだよ。落ち着けよ。狂犬だな。まったく!
「今のあんたの方が私は嫌いじゃない」
「え…はぁ?」
花城は意外な言葉に戸惑ってる様子だ。
「じゃあね」
青沢は優しい笑顔を向けて教室から立ち去っていった。
「あ、あ、青沢ーー!!なんで上からなんだよ!マジで潰してやる!絶対に潰してやるからなーー!!」
花城は数秒で我に戻り怒りが再度頂点に達した。




