捕らわれ詐欺師とお嬢様
俺は寮に戻ると軽く夕飯を食べすぐに自室にいきベットに寝転んだ。
「はぁ。……疲れた」
花城リカか!才色兼備で自他共に認める人格者。皆から好かれ尊敬されているとは別に裏には憎しみと闇を抱えている。
「まぁ、なんとなくわかってはいたが」
早い段階で知れたとプラス思考に考えるしかないが、まさか青沢を生徒会長にすることもバレているのも誤算だし花城の裏の顔があそこまでとはな。人は誰しも表と裏がある。ただ彼女に関していえば普通の人とは違う。大企業のお嬢様として厳しく教育され自分を偽りながらも学園や大人達と向き合ってきた。彼女にとって唯一の選択だったんだろう。そんな彼女を青沢は否定してしまった。悪気はなかったではいかない。彼女からしたら自分自身を否定されたのだから。口は災いの元とはよくいったものだ。
「とにかく今は言うことを聞くしかないか」
すぐにでも現状を青沢に伝えたいがやめとくとしよう。演技で青沢から離れたとバレたら意味がない。あいつはすぐに顔にでるからな。
「たく!……めんどくさい」
俺はそんな事を呟き眠りについた。
目が覚めると見事に朝になっていた。
「どんなに嫌な気分でも朝はくるからなー」
嫌だ。学校に行きたくない。登校拒否をしたい。お願い神様。
「あぁ………行くしかないよな」
引きこもった所で迎えに来てくれるのは同級生でもなければ先生でもない。……警察の方だからな。トホホ。
俺はシャワーを浴びて朝食をとり学校に向かった。教室のドアを開けると青沢や花城は登校していた。青沢は真木の席で楽しそうに雑談している様子だった。花城は一度俺の方を見るとゆっくりとかけより無垢な笑顔で挨拶をする。
「おはようございます……宮場さん」
「花城さん。おはようございます」
昨日とのギャップがあるせいで悪魔にしか見えない。なんか最後の宮場さんが「わかってるんだろうな」的に意味合いに聞こえるわ。
「昨日は本当によく眠れましたの。これも宮場さんのお陰ですね」
「僕は何もしてませんよ」
クソが!こちらは最悪の気分だよ。
「え!昨日何かあったんですか?花城さん」
花城の話を聞き工藤奈美が割ってはいる。来るな!やめろ!
「えぇ。昨日宮場さんと話をする機会がありまして、いろいろと相談にのってもらいまして」
「そうなんですね!宮場さんが羨ましいです。私にも是非相談してください。花城さんの為ならなんでもします」
是非!お願いします。たぶん円形脱毛症になるけども。
「はい!是非相談させてください」
白々しいにも程がある。
「僕もいつでも相談にのります。むしろ光栄ですから」
「本当に心強いです。頼りにしてます」
「はい……それではまた」
俺はそそくさと自分の席に戻ろうと歩きだす。
「犬は犬らしくしてろよ」
花城は小声で俺にのみ聞こえる声でささやく。……クソがーー!!
自分の席につくと怒りをとおりこし悲しみが込み上げる。年下の女にいいようにされてる自分が悲しいよ。いろん大人達を騙してきたがみんなこんな気分だったのかな?辛いな!人生!
「なに落ち込んでるのよ」
俺が悲しみにくれる最中に青沢と真木が近寄ってきた。
「…………」
俺は花城の方をチラリと見ると花城と目があう。やはり見るよな。
「なに無視してんのよ?あんた何様?」
「宮場君?どうしたの?」
さてどうすべきだろう。花城との約束の中に真木は含まれてないが。
「どうもしてない。真木からみて俺は落ち込んでる様にみえるか?」
「……えっと。落ち込んでるというか様子はおかしいかな」
真木は答えながら青沢を見る。
「悪い。考え事をしていた」
俺は真木の方だけを見てしゃべる。
「あんたいい加減にしなさいよ!!なんなの?無視?」
そんな態度に青沢は怒り100%だ。
「…………」
「み、宮場君?」
「宮場!!私がなにかしたなら言えばいいじゃない。理由によっては謝るし。無視はないでしょ!!」
徐々に声のトーンが大きくなる青沢に真木も焦り青沢を制止する。
「宮場君!本当にどうしたの?あなたらしくないよ」
「真木。川瀬夏見とは昔みたいに仲良くなれそうか?」
「え!いきなりなに?……私は昔みたいな関係になりたいけど。今、夏見が関係あるの?」
「いや、俺も川瀬みたいだからな」
真木はバカじゃない。むしろ考えられる子だ。気づいてくれ。
「何意味わかんない事いってんのよ。あんたいい加減に」
「待って!青沢さん」
真木は青沢の言葉を遮り考える。
「………川瀬とうまくいくよ。だって友達だったんだからな」
俺はニヤリと笑う。
「青沢さん。……行きましょう」
「待って!納得がいかない!宮場!あんたがやってるのはイジメと同じだ。あんたを信じてたのにバカみたいじゃん」
青沢は俺の胸ぐらを掴み目に涙を浮かばせていた。クラス中が俺達を見る。だが真木は優しく青沢の手を胸ぐらから離し青沢と共にこの場から離れた。
「頼むぞ。……真木」
「なにかあったんですか?」
本当に白々しい。花城は心配したそぶりで俺の元にきて小声で話しかける。
「いや、犬らしくしたまでの事だ」
「忠実な犬は大好きよ。見た?目に涙を浮かべて。笑える」
「それは結構」
「これからが楽しみね。まだまだ働いてよ。私の為に」
花城は心底楽しそうに自分の席に戻っていった。
「……性悪女が」
「ちょっと待って!私はまだ宮場と話がついてない。」
真木は今は使用されてない多目的教室に青沢を連れてきていた。青沢は感情が高ぶり暴れそうな勢いだ。
「青沢さん!落ち着いて」
「落ち着けない。嫌なの。理由もわからずにあいつと……」
青沢の目から涙がこぼれる。信じていた時こそ裏切られた悲しみや恐怖は計り知れない。
「理由ならあるよ。宮場君は言ってた。夏見の事を」
「…………え?」
「私も意味がわからなかった。でも夏見の件から考えると裏切り」
「…………」
「たぶん宮場君は自分が裏切った事を伝えようとしたんだと思う」
「はぁ?意味がわかんない。なんであいつが?」
「裏切らざる状況にあるんだと思う。たぶん花城さんと何かあったんじゃないかな?」
「……花城?」
「うん。生徒会長の件で花城さんを味方につける話だったから。理由はわかんないけど、宮場君と花城さんの間になにかしらあって、青沢さんを避けるように花城さんがいったのかも」
「…………」
「あなた達は仲がいいしね!」
「べ、別に仲良くないけど!私は……別に」
青沢は下を向き照れた様子で口ごもる。
「でも宮場君はいってたじゃない。私と夏見はうまくいくって」
真木は青沢に優しく微笑む。すると青沢はハッと顔をあげる。
「私達の仲も戻る!!」
「うん!宮場君は本当に裏切った訳じゃない。フリをしてるだけ。でも花城さんに気づかれてはダメ。だから信じよう」
真木の言葉に青沢は何度も頷く。そしてあらためて真木がいてくれて本当によかった。一人ではダメだった。感情的になり本質を見抜けなかった。
「うん。ありがとう。私は本当にバカだ」
「これから何をするか何ができるか考えよう」
「花城が私を嫌ってるのは知ってる。卑怯な手を使ったのも正直許せないけど、あいつとガチでぶつかってみる」
「うん!私も手伝う」
青沢は涙を拭き気合いを入れ直し真木と多目的教室を立ち去った。




