捕らわれ詐欺師とお嬢様
後藤が立ち去ると俺は真木に近づき地面から優しく立ち上がらせ話しかける。
「後藤は終わりだ。もう真木に近づいては来ないだろ。なんならこいつを使って復讐でもするか?」
俺はボイスレコーダを見せ真木に問う。
「正直に言えばしたい。あの人は一生許せないと思う。でも……もういいの!私は……」
「あなた達に出会えたから、もういいの」
真木は穏やかにそして笑顔で青沢や俺を見ると優しい口調で答える。
「そっか。ならいい」
真木は今日この日から前を向き歩き出せるだろう。過去を簡単に忘れる事はできない。でもこれからの日々でぬりかえる事はできると思う。だからこそ真木にはもう1つ決着をつけてもらう。
「真木。お前にとって川瀬夏見は今でも友達か?」
真木は意外な言葉に戸惑うもすぐに返答をする。
「友達だよ!……あんな形で別れてしまったけど、やっぱり小さな頃から一緒にいて毎日を過ごしてきたし、嫌な過去以上に楽しい過去がたくさんあったから」
真木ははっきりと答えた。すると俺は物陰に隠れている人物に声をかけた。
「だとよ!!そろそろ出てこい」
俺の声に真木と青沢は反応し物陰を見る。
「…………桐花」
物陰から出てきたのは川瀬夏見だった。真木は久しぶりに見る川瀬に驚き固まる。
「真木!悪いな。実は川瀬夏見も後藤とのやり取りを見てた」
俺は昔、川瀬と真木が友人関係にあり、現在川瀬がいないことを知ると、江夏巡査に川瀬夏見の現在の所在の確認を頼んだ。江夏さんは職権濫用とグチグチ言っていたが、犯罪者の俺と司法取引してる時点でそこはね。警察の力はやはり優秀ですぐに近くの高校に通っている事を突き止めた。そして真木から過去を聞いた俺は川瀬夏見の高校に出向いた。もちろん江夏さんの許可&監視の元。うまく川瀬夏見に接触をした俺は川瀬に後藤の親友と嘘をつき、後藤から大事な話がある事と今後藤から出向く事が難しい事を川瀬に伝え、今日の日にちと放課後の時間にあわせ天命学園で待ち合わせをする。川瀬は以外にもすんなり了承する。後藤だけではなく真木に対し少なからずおもうことはあるからだろ。
待ち合わせ前に青沢と後藤の両方にお互いが放課後に話したいことがあると手紙をこっそり出しておいた。真木に送らなかったのは待ち合わせにいかない可能性があるかもと思い、後藤に対し怒りを爆発させていた青沢に出した。青沢の様子がおかしければ真木はついてくるだろうからね。そして江夏巡査にボイスレコーダをかしてもらい青沢に仕込ませてもらった。ただ保険で俺も携帯でこっそり動画を撮らせてもらったけどもな。そして……放課後に川瀬と合流し今にいたるってな感じ。まぁ川瀬にとっては現実を知ることになる。川瀬夏見は知らなければいけない。真木の気持ちを。どんなに残酷でも。
「…………夏見」
真木はゆっくりと川瀬夏見が近づいてくるのを見ると複雑な表情をし呟く。
「……桐花」
川瀬は真木の前に立つといろいろな感情が込み上げる。とりわけ一番思う感情は後悔。自分の愚かな間違いによって一番大切な人だった人を苦しめ傷つけてしまった。
「ごめんなさい。今さら言っても遅いし桐花に許してもらえる筈もないけど、私……なんてこと」
川瀬は言うならば被害者でもあり加害者だ。後藤に騙され、一時の感情にあてられ親友を裏切った。真木だけではない。川瀬にとっても真木は親友だった。大切な人だった。真木は裏で自分を庇い守ってくれていた。それなのに……信じてあげれなかった。
「私は最低だ。あんな男を信じて……一番大切だった桐花を裏切った……本当にごめん……ごめんなさい」
川瀬は泣きながら体を震わせ深く頭を下げる。
そんな川瀬を見る真木はしっかりと川瀬を見据え強い口調で答える。
「本当に……最低だよ。夏見!」
「…………」
「本当に辛かった。なんであんな男より私を信じてくれなかったのよ。」
「…………」
「信じてほしかった。信じてくれると思ってた」
「…………」
「今さら遅いよ。遅すぎだよ。バカ!!」
「……うん」
「あなたを許す事ができるわけないでしょ!!」
「…………ごめんなさい」
真木は今までの想いを真木にぶつける。怒りもあるし。悲しみもある。
「でも……やっぱり嫌いになれないよ。だって心では夏見は私にとって今でも大切な人だっていってるから」
真木は優しく夏見の頬をふれ笑いかける。
「桐花…………ごめん……ほ、本当にごめんなさい……うぅぅ」
川瀬はおもわず真木に抱きつき号泣する。
「本当に……バカ」
真木も泣きながら抱きしめる。2人は思い出しているのだろう。2人が親友だった頃を。いや……これからもかな?
俺は少し嫉妬の目をしている青沢に近づき話しかける。
「行くぞ。今は2人にしてやれ」
青沢は顔を膨らまし俺に睨み付ける。
「うるさいなー。命令しないでよ。わ、わかってるわよ。私だって今は2人にしてあげることの方がいいってことくらい」
「フーン」
やれやれツンデレさんだ。本当は悔しいくせに。
「べ、別に羨ましくないし!私だって真木……と、桐花とは友達だしね」
「まぁ、なんでもいいよ」
「……ムカつく」
青沢は俺を軽く肩あたりを殴る。や、やめてよね!!痛いじゃない。
「それよりもなかなか無茶をしたな?」
俺は少しヒヤヒヤしながら後藤達のやり取りを見ていた。いくら真木を救いたいとはいえ、自分の体までも差し出す覚悟をしていたとはね。
「はぁ?なにが?」
青沢は本人はあれを無茶とは思ってないのがなかなか。こいつを過小評価してた。覚悟を決めた青沢は強い。それくらいじゃないと次の相手はかなりきつい。……花城リカだからな!
「いや、なんでもない」
青沢は不思議そうに俺を見つめると思い出したように言う。
「あ、最初に言ってた桐花の尊敬できる所がわかった」
「…………で?」
「友達の為にあそこまで想いしてあげれるなんてなかなかできない。まぁ、強いってのは違うけど信じられる信用できる相手。てか本当に優しい人なんだって思った」
「上出来だ。そんな真木だから慕う生徒もいる。まぁ、優しい奴だから、口では強く言ったりもするかもしれないが、いろいろと助け船をだしたりしたんだろう」
人はなかなか根底を変えることは難しい。真木は人に優しく信用できる。だからこそ青沢に必要だ。しかも嬉しい誤算が真木を慕う生徒達は後藤がやった事を信じてない。評価は維持されている。あの件に関して真木は否定していたから真木を信じたんだろう。
これで真木はこちら側についた。
「うん」
青沢は嬉しそうに頷くと俺達は帰ろうと歩き出す。
「青沢さん!宮場君!本当にありがとう!!」
真木は俺達に大きな声で深々と頭を下げた。川瀬も。そんな2人を見ると悪い表情になるぜ。
「…………別にお礼はいい。別の形で返してもらうさ」
「たく!!あんたは」
青沢は俺の頭を叩き罵声をあびせる。クソ!このゴリラはすぐに手がでやがる。やめてよね!
「友達を助けるのは当たり前でしょ!!と、と、……桐花」
最後なへんは小さくて聞こえずらいよ。恥ずかしいなら言うなよ。
「うん!!今度は私も友人としてあなた達の力になりたい。それといまならわかる。生徒会長は青沢さんがなるべきだと本気で思う」
真木は心から願う。そして俺も友人として昇格していた。マジですか!
「フン!!当たり前だろ!!」
「ありがとう!絶対になるから!それとまた明日ね!!」
青沢は手をあげて応えこれ以上は邪魔者だとなと思いこの場をさった。




