捕らわれ詐欺師とお嬢様
食事を終え教室に戻ると青沢は真木と話をしていた。てか一方的に話しかけてる感じだ。
「やれやれだ。少しは前進してるが今のままではダメだな。」
生徒会選挙までにいくつもの壁がある。難しいのはわかってるが、こんなところで時間を浪費したくないのが本音だ。
俺は真木の情報をクラスメイトからは聞き出してはいる。特に真木をリスペクトしている生徒を中心にだ。ただ、過去になにかあったかはわからない。基本真木の事を憧れている生徒はクラスでもおとなしめや気弱な生徒が多い。彼女達が真木に憧れている理由として、同じ同種であるのに誰にでも物怖じしない性格。つまり自分をしっかりと持ち、嫌なことには嫌と言える人物だからだ。簡単そうで難しいんだよな。だから一部から尊敬されている。ただ、それは表面上の真木だ。特別親しいわけでもないから心のことまではわからない。まぁ、そこはいいんだけどな。彼女達が真木をしたっているのには違いない。
「何かないのか?……なにか。」
悩んでいるとチャイムがなり担任のほみか先生が教室に入る。
「おーい。早く体育館にいけー。他のクラスは移動してるぞ。」
なんだ?体育館?俺は何事かとキョロキョロとクラスメイトをみる。すると一斉に体育館に移動を始める。
「ちょっと早くいくわよ。」
真木との話が終わったのか青沢が俺に声をかける。
「なんなんだよ?」
「あぁーあんたは初めてか!この学園は月に1回、1学年のクラスを全部を集めて体育館で各々が勝手に他のクラスの奴等と交流するのよ!まったく意味ないことをするわね。」
青沢は嫌そうな表情で俺に教えてくれる。
なるほどな。さすがはセレブ。ただの交流じゃない。将来的に大きなビジネスに繋がる可能性があるわけだ。
「……青沢!いい機会だ。他クラスにおまえの印象が残せるように少しでも話してこいよ。」
「はぁ??嫌に決まってるでしょーが!!なんで私がそんなことをしないといけないのよ!」
「……本当に生徒会長になる気ありますか?」
「うぅ!!……わかったわよ!!……でも真木の方が先でしょ?」
「いや、あまりない機会だからな。今は他のクラスが優先だ。」
「…………あんたはきてくれないの?」
やだ!可愛い!!たまにデレるとかやばいな!
「甘えるな!!」
「……わかったわよ。」
青沢は不満げに呟いた。
体育館に移動すると俺は目を見開く。
「でかい!!……てか何故か立食用のご飯とかドリンク!なんなら音楽隊までいる。……さっき昼飯食べたろーがよ!これだから金持ちは。」
1学年4クラスで120人の人間が体育館にいる。たぶんこの体育館は1000人は入る。余裕で。俺があっけにとられていると、どこかのクラスの先生がマイクで俺達に話しかける。
「今から交流会を始めます。各々自由に好きな相手と話をし交流をして楽しんでください。それでは……始め!!」
先生の一言で生徒達は動き始める。男子生徒はおもに女子生徒にむかっていた。まぁ、高校生なんだからね。気になる相手や好きな相手もいるだろう。女子生徒も同じだしね。その他にもビジネスの為に行動する生徒もいるだろ。
「ほら!!青沢も行ってこいよ。」
そっと優しく背中を押す。
「お、押さないでよ!!い、今から行こうと思ってたんだから。」
「はいはい!悪かったよ。」
プルプル震えてますよー!!
「まぁ、別に無茶はしなくていいから気楽にいってこい。」
「私の保護者面はやめてよね。てか……あんたはどうすんのよ?」
「まぁ、ブラブラするから気にしなくていい。」
「なんかずるい。」
「ずるくない。俺は俺でうまくやるよ。まぁ、お互い頑張ろーぜ。相棒!」
俺はニッコリと笑い青沢から立ち去った。
「……ムカつく!!……よし。頑張ろう!!」
青沢は気合いを行動にうつした。
「さて。……いたいた!」
俺は一人で隅っこにいる真木を見つけるとすぐに駆け寄り話しかける。
「交流会だぜ。誰かと話さないのか?」
「…………」
真木は俺を見ると諦めたように答える。
「なんか……慣れてきたわ。本当にストーカーよね。あなた達は。」
「まぁ、青沢はそうだな。」
「あなたもよ!」
「ハハハ!!かもな!」
真木はため息をついて頭を押さえる。
「聞くけど、あなたは……私と友達になるとか興味はないでしょ?」
「いやいや、興味ありまくりですよ。友達になって笑って卒業しようぜ。」
「本音で話すんでしょ?」
真木は真剣な声と目線をこちらに向ける。
「…………青沢は本気でおまえと友達になりたがってる。」
「青沢さんは……まぁ、わかるわ。単純だから!でも、あなたが私に執着する意味がわからない……前にもいったけど仮に私が協力しても力になれないわよ。別に親も花城さんみたい大きい会社じゃないし。影響力なんてないわよ。」
「真木!俺は青沢を今期生徒会長にする。真木は青沢が生徒会長になれると思うか?」
この天命学園の生徒会長。
「まず無理ね。可能性なんてないに等しいわね。」
それが当たり前。落ちぶれた会社で影響力もない。人望もない。ましてや嫌われている。
「俺達はほぼ0%からのスタートだ。だから一つの取りこぼしが致命的な結果に繋がる。立候補までの時間もない。」
俺は真木を見る。
「真木!前にも言ったが、一部の生徒はお前をしたってる。これはたしかだ。だからこそお前の協力が得られればその一部はこちらにつく。」
「仮にそうだとしても、そんな少数は無視してもいいじゃない。」
「ダメだ。クラス全体のバックアップは絶対だ。同じクラスの奴だからこそ裏切りがあっては困る。だから真木の協力が絶対だ。」
「……最低な理由ね。」
「俺はな。」
「まぁ、俺もあんたはそんなに嫌いじゃないってのも付け加えとく。」
「クス。でも協力はしなわよ。それと友達はもう作る気ないしね。」
真木は一瞬笑ったように見えたが、すぐに表情が戻り呟く。
「あれーーこんな所でなにしてるの?新しい男かい?真木さん。」
聞きなれない声が聞こえ俺と真木はその声の主を見る。すると真木の体はガタガタと震えだした。
「いやー僕の事を忘れたなんて言わせないよ!……真木さん。」
なんだこの男は?なかなかのイケメンではある。髪も金髪に染めてまわりには女子生徒を数名つれまわしている。
「な、なんの用?私に話しかけないで。どっか行ってよ。」
真木は震えながらその男を睨みつける。
「あいかわらずきついなー。変わってないねー。」
クスクスと楽しそうに真木を見ると俺と目があう。
「君は誰だい??」
失礼な奴だな!!プンプン!!お前から名のれやー!!少しモテるからって嫌なやつ!いや、けして嫉妬ではないよ。うん。数名の女子生徒なんて関係ないから。
「失礼しました。僕は宮場と言います。最近転校してきまして、ご挨拶が遅れてすいません。」
「君かー。転校生っていうのは。僕は後藤太一だ。父親は自動車関係の仕事をしていてね。君の事は聞いてるよ。地主の成金君」
はい!!うざい!!自由になったら会社ごと詐欺にかけたる。俺のブラックノートにまた一人名が刻まれる。
「そうなんです。身分違いなので毎日が大変で。……それより真木さんと知り合いなんですか?」
「やめて!」
真木は俺の手をつかみ立ち去ろうとする。たが、後藤は真木の手をつかみ彼女の耳元で囁いた。
「あの時の事は忘れてないよ。君が一人でいるからおとなしくしてたのに。……君のまわりに人がいるのは許せないね。まぁ、いいや。楽しみにしていてよ。」
後藤は楽しそうに告げると真木の手をほどき女子生徒をつれて立ち去っていった。
「真木?なにがあった?」
俺は青ざめて下を向いている真木に問いかける。
「…………なんでもないわ。」
「あいつなんて言ったんだよ。」
「あなたには関係ない。…………もう関わらないで。」
真木は下を向いたままフラフラになりながら体育館を立ち去っていった。




