捕らわれ詐欺師とお嬢様
俺は青沢と別れ自宅の寮に戻り体を休ませていると、携帯が鳴り見覚えのない番号を確認する。だいたいの予想はできるが。
「もしもし?……江夏さん?」
「久しぶりね。」
やっぱり。てか今俺にかけてくる人なんて警察官であり俺の監視役の江夏さんしかいないわな。
「今はプライベートなんですよね。電話はひかえて頂けるとありがたいんですけどねー。」
「刑務所に戻る?」
「我が主よ。なんなりと聞いてくださいませ。」
国家権力反対です。トホホノホ。
「青沢さんとは会えた?」
「えぇ。会いましたよ。現在は生徒会長になる為に俺と協力関係にあります。」
「やるじゃない。さすがは詐欺師ね。」
「いや、本当に問題だらけだよ。根本的に生徒会長って柄でもないしね。……あいつ。」
「しっかりしなさい。クライアントは大切にね。それとあなたの未来がかかってるのよ。」
「わかってる。」
「とりあえず、順調ならいいわ。また連絡するから。」
「了解。」
「…………」
うん?なんで無言?
「まぁ、あなたの立場的に言っていいのか迷うけど、学園生活を少しは楽しみなさい。……高校生生活は初めてでしょ?」
「………………」
「じゃあね。また。」
江夏さんは俺の様子を確認すると電話を切る。
「まったく。人の過去を詮索すんなってーの。」
俺は高校生活を楽しむ為にいるんじゃない。ここにいるのは俺の自由ともう1つの目的の為。それだけだ。友情とか楽しいとかもちろん恋愛とかにも興味はない。利用できるものは利用する。みせかけの友情とやらを演じてな。
次の日から俺と青沢は真木に対してしつこく接触をはかる。青沢は本気で真木と親しくなりたいみたいで邪険に扱われても負けずに話しかけたり昼食を一緒に食べようと試みる。
「あぁーいい加減しつこいわね。1週間よ。」
真木もさすがに疲れてきているみたいだ。
「だから、ご飯を一緒食べるだけじゃん。」
ちなみにここは天命学園の食堂である。一人で食べる真木に俺達がお邪魔してる感じだ。無理矢理にね。
「だから、こんなことしてもあなたと友達になんてならないし、協力もしない。……諦めてよ。」
「だからさ、あんたが折れなさいよ。」
まぁ、堂々巡りなわけさ。
「だいたいあなたの友達の定義はなに?クラスで楽しくおしゃべりでもすればいいの?」
真木は青沢に問いかける。
「それはわかんない。私だって本当の友達なんてしらないし。」
そんなことをはっきりと言うバカな青沢さんである。まぁ難しいわな。友達の定義なんて曖昧だし個人個人で違うし。
「なんなの。バカなの?もー本当に疲れるわ。」
「まぁ、待てよ。定義なんてもんを考えてる時点で駄目だろ。」
「なら、あなたは友達ってものはどう解釈してるの?」
俺に絶対に問いかけてはいけない質問13位がきたー。僕だって友達なんかいませんもん。
「まぁ、なんてーか、隣にいて不快感がないっていうのかな。この人に隣にいてほしいとか自然と思えるのが友達なんじゃねーの。」
「なるほど。なら、私はあなた達が不快でしかたないわ。はい。この話は終了ね。」
「終われるかー。」
「終われるかー。」
まったく。青沢はともかく俺にまで酷いことをいうな。
「なぁ、なんでそこまで頑なに俺達を……いや人を拒絶する?」
俺は情報探る。少しでも糸口を探すために。
「………………」
「宮場!!やめなさいよ。無理矢理聞いても意味ないじゃない。」
「……私は人と関わるんがやなのよ。」
真木はかすかな声で呟く。表情は暗く過去の事を思い出しているかのように。
「それは何故だ?」
「宮場!!」
青沢は俺にくいぎみで制止しようと声を出す。すると真木は青沢をチラリと見る。
「青沢さんならわかるでしょ。人なんて簡単に裏切るし、今までの関係なんて一瞬で壊れるものだから。なら最初から一人の方がラクでいいもの。」
真木は震えながらにその一言を言うと食堂から逃げだすかのように立ち去った。
「…………あんた。」
青沢は怒りの表情で俺を見る。
「悪かったよ。まぁ、少し見えてきたな。」
真木にも青沢と似たような経験がある。まぁ、いじめではないような気がする。クラスの連中の中に真木を尊敬する生徒もいるしな。じゃなければ元々あいつを仲間に引き入れる価値がない。
「マジでどんどん関係が悪化してるだけじゃない。」
「いや、そんなこともないぞ。拒絶はされてるが弱音を見せ始めた。少しは前進してる。」
なんだかんだ一緒にいるだけでも人は良くも悪くも気を許す。あいつは悪に徹しきれない。なんだかんだで俺達と話をし食事を食べる。まぁ優しい人間なんだろーな。
「私は真木と友達になるって決めたの。真木を追い詰めるやり方は気に入らない。」
「それはご立派だな。だが、あいつの心の闇を取り除くのはあいつの為でもあると思うがね。」
「私は…………仲良くなって真木から私達に打ち明けてほしい。」
「ハハハハ!高校卒業しそうだな。」
「……うっさい!!」
青沢は怒鳴り席から立ち上がり食堂から出ていった。食堂にいた生徒は何事かとこちらを見る。
「たく。少し聞いただけだろーがよ。まぁ、いい。あいつのバカは長所でもあり短所だな。」
俺も少しいずらいので、この場からエスケープします。ドロン!




