51話 トアロ家の魔王を我が参謀にしてもよいだろうか
「アランドラ……! よかった、復活したのか!!」
片手を頭の上で左右に振る、俺がCブロックの二回戦で戦った魔王、
超絶イケメン、アランドラ・トアの元気な姿が……!
よかった……。ヨーハンの言ったとおり、すぐに回復したんだな!
■ ■ ■ ■
名前: アランドラ・トアロ
俗称: 魔眼のアランドラ
種族: 魔族
クラス: 魔王(トアロ家魔王)
【魔族十二家支配】:非適用 new!
スキル:【未来視】【無詠唱魔術】【魔力ブースト】【剣技】【ワイン鑑定眼】
デミスキル:【口説き文句】
〔戦〕 20500
〔謀〕 8400
〔非〕 40
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しかもちょっと強くなってる……!!
「フォースタス。改めてトーナメントの優勝と、『十二斂魔王』の冠帯に、心からの祝福を」
そう言って、アランドラは城下町の人々の前を通り過ぎ、俺の前に膝をついた。
「なっ……!?(目を見開くフィリップ)」
「ちょっ!(慌てふためくクラーラ)」
ホールにどよめきが広がった。
フィスト家の面々も驚いているが、どよめき発生の中心は、集まっていた城下町の顔役たちかららしい。
都市の顔役たち、それにフィスト家の面々も俺とアランドラへと、交互に視線を走らせている。
《# すごいすごいとは知っていましたが……富士雄っ! わかりますか!? アランドラさんですよ!?
あのアランドラさんが、富士雄の前に、膝をついて……っ!》
いや、うん……あ、そうか。
モッチーは半分、14年も魔族の中で暮らしてきた記憶があるんだもんな。
それで言うと、改めてアランドラってどういう存在なの?
《# めちゃくちゃ由緒正しい血筋を持った、魔族界のプリンスです!
私が通っていた女子校で、アランドラさんと握手したっていう女の子の腕が翌日、
熱狂的なファンによって切り飛ばされて強奪され行方不明になっていました!
犯人はいまだ逃走中です!》
魔族こえええッ!!
《# アランドラさんの登場により、無詠唱魔術の技術はブレイクスルーを迎えたとも言われています。
ともかく、魔族女子にとっては、星の上のアイドルなんですよアランドラさんは……!》
なるほど、それなら納得だった。
あの双子も、ビビりながらも興奮しているようだし、
ホールの雰囲気が、美青年なトアロ家魔王のかしずきで一変しているのだ。
町の顔役たちも、慌てて俺に膝をついたりしてる。
でも、アランドラってたぶん、そういうの全然気にしてない、生まれながらの美青年なんだよなぁ……。
「って、立て立てアランドラ! よかった、俺、悪いことしちゃったと思って、謝りたかったんだよ」
「親しき中にも礼儀あり。こういうのは最初が肝心なんだよ、我が友、フォースタス・フィスト」
「と、とも……?」
「これはボクの気持ちだ。受け取ってくれ。魔術が施された蔵で寝かされた、タルバシュアの1200年モノだ」
「高そうなワイン!」
アランドラはためらいなくワインの栓を開け、用意していたらしい2つのグラスに濃いバラ色の液体を注ぎ、
「乾杯しよう、フォースタス」
スタスタと、テーブルのあるテラスへ歩いて行く。
その振る舞い。
これが貴族……ッ!!
アランドラの有無を言わせぬ風格は、どっちが十二斂魔王かわからなくなるほど。
なんで俺にくれたものなのに、おまえが勝手に開けて飲んじゃおうとしてんだよ!
とか、俺、突っ込めない!
俺もついつい、彼の後をついて、テラスへ移動。
グラスを受け取り、
「さらなる魔族十二家の繁栄と、十二斂魔王フォースタス・フィストの御世に幸多からんことを」
グラスを掲げるアランドラにならって、俺もグラスを飲み干した。
ワインの味とか、もうよくわからない! これ、おいしいのか!?
「…………っ」
俺は思わず、ちらっと、モッチーや双子、フィリップやヨーハン、
それから城下町の顔役代表団を確認した。
すると、フィスト家組はコクリと頷き、
代表団は激しく「こっちは構わずアランドラ様のお相手を!」的なジェスチャーをかましてくる。
どう見てもこれ、俺よりアランドラに敬意的なもの、払われてる、よ、ね……?
……俺、これから魔王として、いっぱいがんばろうね!
「単刀直入に要件を言おう。フォースタス」
イケメン魔王は、テラスから見える城下町の景色から、俺に視線を写し、
「ボクをキミの参謀にして欲しい」
「わかった。ぜひ頼む」
「ああ、確かにこんな申し出はさすがのキミも面食らい、困ってしまうだろう。
……だが聞いて欲しい。フォースタス、キミは、……凄まじい。
直接対峙した僕だからこそ、その真価がわかる。だがキミ一人でできることはおのずと限られてきてしまう。
手を貸したい、フォースタス。偉大な頭脳にはさらなる手足がいる。
キミには、ボクのような存在が必要だ」
「わかる! じゃあ、アランドラは今日から俺の参謀な」
「だがもちろん……この流れでボクを信用してくれなんて無理な話だ。
キミとボクは、昨日まで十二斂魔王の座を争っていた他家の魔王同士なのだから」
「いや、おまえのこと俺は信用するから 頼むぞ参謀」
「フフフ……だからまず、僕が収集した情報を、フォースタス。キミに提供しよう。聞いて欲しい。
この大陸に渡ってきている『勇者』についての情報だ。
それを聞いてから判断しても、遅くはあるまい?」
アランドラが、俺のグラスに二杯目を注ぐ。
「…………、フォースタス」
「なんだ参謀」
「……さっきから、僕とキミの会話が、咬み合ってないようなのだが?」
「それはこっちのセリフなんだが!? 本当にアランドラ、参謀で大丈夫!?」
「でも待ちたまえ! たったこれだけでボクを信じるだって!?
キミはどうかしているぞフォースタス!」
「おまえがそれを言っちゃだめだろ!」
☆新たなる幕僚推参……!?☆
勇者救出まで、あと 1時間 12分 35秒




