50話 城下町の人々に俺の野望を語ってもよいだろうか
クラーラが、ホールに通じる扉を勢い良く開ける。
「お待ちしておりました、フォースタス様!」
「フォースタス兄貴! 遅いぜホントによぉっ!」」
イケメン魔将軍フィリップ、そして脳筋将軍バンベルグがそこにいた。
二人とも、双子と同じく【心魂契約】によってパワーアップしている。
戦謀非が3割ほどアップしているほか、新スキルも獲得していて、やっぱりすごい生き生きしてる……!
まあ、それはいいのだが、
「な……っ」
そんな二人の背後に、なんかたくさんの魔族の人々がいるんだが……!!
「フィリップ、これは……?」
年齢も性別もバラバラ、様々な装いの魔族たちがざっと30人……40? とにかくいっぱいいる!
「皆が、フォースタス様のお考えを、お言葉を聞きたいと集まっているのです」
「ほ、ほほう……?」
「フォースタスの兄貴は一晩でこんなでけえ城を作っちまっただろ? だからみんなびっくりしちまって、
兄貴がこれをどうやって、どんなつもりで作ったのか聞きてぇんだとよっ! オレも知りてぇっ!」
「ふむ、なるほど!」
脳筋の話は、わかりやすいのがいいところだな。
「ワタクシはこの者たちを代表する、リオンペィガと申します、フォースタス様。
そしてここに集まった者達は、城下町にある学園の責任者や、各種ギルドの顔役でございます」
頭にターバンを巻いた、魔族にしては日焼けした肌の男性が、手を胸に当て前に出てくる。
あごひげを生やした、怪しい感じのやり手っぽい印象だ。
「よ……よろしく、リオンペィガ」
だが、【思惑看破】からは、見た目と打って変わって誠実。
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現在のリオンペイガの思惑
(リオンペィガの
ドット表情) <こいつぁああおもしれえ。噂通り人族の子供じゃねぇか!
これは変わるぞ……魔族の歴史、いや、この大陸のあらゆることが!
フォースタス・フィストとやらは、やっぱりただもんじゃねえ。
この波、きっちり乗りこなしてやんなきゃなぁあ……。
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俺、こういう人、嫌いじゃない。
というか、俺の友人にあからさまに思考が似てる。
同期で営業の長嶋くん、今頃なにしてるかなぁぁ……ッ!
「『十二斂魔王』であらせられるフォースタス様から、この町の行く末、今後の展望などお聞きしたく、
無礼は承知でこうして参上つかまつりました」
「よろしくリオンペィガ。みなさんも集まってくれて、ありがとう」
で、俺の経験上、この手のタイプには遠慮しない方がいい。
俺は顔がにやけるのを必死でこらえ、すると途端に、衝動的に喉が痒くなり、
「……クックックック……」
「フォースタス様……?」
思わず喉を鳴らしてしまった俺を、フィリップが、いぶかしげに見てくる。
「いいだろうリオンペィガ! 俺が、直接っ! この城下町のコンセプトを道行き、お教えしよう!!
そしてこの『特都』が描き出す魔族の未来、将来をその目で確かめてくれ……ッ!
では行こう。まずは城下町の新しいゆるキャラ、城下なだけに『ジョーカー君』を――」
「ま、まって! 待ってフォースタスっ!」
「ん? どうしたクラーラ」
転げるように俺とターバン魔族商人リオンペイガの前に割って入る赤髪の少女。
「こ、ここは、私とリーゼルが、行くからっ!」
「は? なに言ってんだ。俺も行くよ? っていうか、俺が行かなくてどうする……!」
「いいからっ! ここは任せて……! フォースタスは、ここにいて!」
「え……? どうしたんだよ、クラーラ」
「ええと……だ、だから、その……っ」
すると、姉のクラーラに頬を寄せるようにリーゼルが背後から寄り添い、
「(なにごとぞ? クラーラ)」
「(なにごともなにも、このままフォースタスを行かせたら、温泉で玉璽様に変なことを言い出してたみたいに、
町の人達がフォースタスのコト誤解して、ドン引きしちゃうじゃないっ!
現にもうわけわかんないこと言い始めちゃってるし……!!)」
「(正論ぞ。ドン引きされたらフォースタスの治世が乱れ、混沌の世界が到来ぞ。ここはなんとしても阻止ぞ)」
「なに二人ナイショ話してるのっ!?」
「あの、このお二人は……?」
目の前でイザコザを起こされて困惑気味の顔役、レオンペィガが尋ねてくるのだが、
「わ、私はフォースタス様の、第2秘書、クラーラ・フィストと」
「第3秘書のリーゼル・フィストぞ」
「なんと! あのフィスト家の『暁月の双子』が、フォースタス様の秘書を!?」
「そうなの!? いつの間に!? モッチーも知ってた?」
「そ、そうよっ! ここは私たちが受け持つわっ。大丈夫、フォースタス様からきちんとこの城の説明、
受けてるから!」
「あ……なるほど。そういえばクラーラもリーゼルも、俺の話を聞いてたもんな」
「ここは任せて師匠っ! だってなにからなにまでフォースタスがやってたら、パンクしちゃうわっ!
私たちフィスト家が、十二斂魔王であるあなたをバッチリサポートするから、だからフォースタスは安心して……
そ、そうよ、この時間でおもちゃ作りをするといいわっ!」
「たのしみぞ……!」
「な、なんと……そんなことまで、お前たちは考えて、くれて……っ!」
「さ、モモチャーノ! フォースタス様をどこか遠くへお連れして? ……ちょっとなに真っ赤になってるの!
第1秘書が恥ずかしがりでどうするの!? しっかりしてモモチャーノ!」
「クラーラ様、一緒に来てください……フォースタス様と二人っきりは、は、恥ずかしくて……っ」
「モモチャーノあんた私の話を聞いてた!? 私はみんなと街を説明しなきゃならないのーっ!」
《# すいません秘書体がお役になてなくて……っ!》
かわいいから許す……っ!!
《# こうなったら富士雄っ! 今夜はこの秘書体に、私が入りますから厳しめに――き、【強化索敵】に感あり》
!?
またもやシステムボイスに乗っ取られるモッチーボイス。
【情報化視界】に詳細が表示されれば、
「お、これは……」
「やあ、フォースタス。挨拶にきたよ」
それは町の代表たちの、さらに後方。
ホール入口に姿を表したのは、
「な、なんで……、こんなところに、トアロ家の……っ!」
「至近ぞ!」
双子が抱き合うように後ずさる、その視線の先、
「アランドラ……! よかった、復活したのか!!」
片手を頭の上で左右に振る、俺がCブロックの二回戦で戦った魔王、
超絶イケメン、アランドラ・トアの元気な姿が……!
☆アランドラが立った……!☆
勇者救出まで、あと 1時間 40分 11秒




