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異世界魔王の日常に技術革新を起こしてもよいだろうか  作者: おかゆまさき
第2章 【異世界承認編】 続いて異世界“魔族”の日常に技術革新をおこしてもよいだろうか
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48話 十二斂魔王としての仕事を再開してもよいだろうか




「だーかーらー、リーゼル聞いて? いい? 今すぐやらなきゃいけないのは、

 これまであった魔術の『詠唱因子』が導く【魔素契約樹(プロトマ・グラム)】の成長法則のシラミ潰しで検証!

 それを比較検討することで融合魔術を構成する詠唱を作ることができるわ。結局それが一番早いんだから!」



「非効率の極みぞ。融合魔法で生まれた新たな【魔素契約樹(プロトマ・グラム)】の完成総魔素形質を解析、

 必要とされた【魔素(プロトマ)】因子を構成できる詠唱を逆算が最速ぞ」



温泉から上がって、いつもの黒地の制服に着替え終わる前から双子の魔術研究家はこの調子で、

『十二斂魔王宮』のフィスト家区画の廊下を行ったり来たりしている。


ちなみに俺は今、作務衣の気分なので、作務衣です!



《# 二人とも、目が真剣で……いいですね……!!》



モッチーの言うとおり、クラーラとリーゼルは研究モードに突入。

仮説構築? に没頭しているのは一目瞭然だった。

ベレー帽を握りしめ、めぢからすごい。



「確かマーマリン教授の論文に、詳細な詠唱因子研究があったはずよ? ああもうっ、あれどこにしまったかしら!

 研究室に置いてきちゃったなら最悪! 今あそこ入れないのよ!?」


「不要ぞ。【魔素(プロトマ)】の存在を認識せず、体感することもない魔術研究は、昨日までの我等ふくめ、

 もはや旧世代。これまでの研究はすべてご破算ぞ」


「いいえ、今までやってきた研究にも、絶対なにかヒントはあるはずよ? いい?

 研究対象の半分は、今まで私たちがやってきた魔術そのものなんだからっ!」



「はいはい、そこら辺でいったんやめ」



俺は両脇の二人の頭をぐりぐりと撫で、どうどうとなだめる。



「なんでよぉ。だって早くフォースタス様に、私たちが融合魔術を使ってるとこ、見て欲しいのよ」


「これぞフィスト家の双璧ぞ?」



うわあ、なんだこのかわいい生き物たち。



さっきから双子がなにを言っているのかさっぱりわからないが、

一つのことに集中し、熱中している子供って、やっぱり最高だよぉ……!



「よ、よし……っ! これから俺、なんか十二斂魔王の仕事があるんだが、二人とも一緒に来るか?」



「え……? い、いいの? 私たちもついてって。邪魔じゃない??」


「いいんだ。お前たちはフィスト家の、ひいては魔族の未来なんだからな!」 


「ど、どうするリーゼル。わたし、行きたい」


「師匠の姿を間近で見るのも、修行のうちぞ」



「決まりだな!」



となれば、とりあえず休憩はこれでおしまい。


ここからはバリバリはったらっくぞーっ。



俺は首からかけていた手ぬぐいをリストバンドに変え、着ていた作務衣もいつものパーカーに再構築。




『十二斂魔王宮』の一角、温泉付きのフィスト家プライベート区域から、

宮殿中央付近の公共パブリックエリアへ通じる回廊を歩きながら、俺は気合を入れて伸びをする。




「ねえフォースタス。仕事って、まずはなにをするの?」


「ぬひひひ……っ、聞く? それを聞いちゃう?」


「師匠が不気味ぞ……」



興奮で呼吸がひゅるひゅる言ってるのわかる。

俺はにやけそうになるのを必死に我慢し、双子に説明。



「実はな、これから城下町の顔役達と、俺がそのうち開く予定の『おもちゃ屋』の店舗物件を

 下見をして回るのだ……っ!」


「お、おもちゃや……?」


「うん! ほら、二人にも作ってやっただろ? 竹とんぼとか水鉄砲とか!

 俺、そういうのをもっといっぱい作って、子どもたちに喜んでもらいたいんだぁぁっ!」


「え……、ああいうの、もっといっぱい、あるの?」


「もちろんッ! まだまだある! むしろここからが本番なんだぞ?」


「やだっ、うそっ! ど、どうしようリーゼル!! あんなのがいっぱいあったら、

 私たち、融合魔術どころじゃないじゃないっ!! な、なんなのよぅ~、フォースタスは私たちの敵なの?

 味方なの……?」


「お、おちつけぞクラーラっ! えくぼは恋の落とし穴ぞ」


「リーゼルも落ち着け」 



……なんか、本当の予定は、

俺が構成した、この『上段:城下町』と『下段:迎撃要塞』として作り上げた『新十二斂魔王宮』を調整するための

視察らしいのだが、ごめん! 俺のなかでは店舗見学がメイン……ッ!!



「では、若」



「あ、ヨーハン」



プライベートエリアから、中枢エリアへ抜ける関所的な部屋で俺たちを待っていたのは、

老練なフィスト家執事。



「出発の前に、若の専属秘書をご紹介いたします」



「……は?」



身だしなみチェックのためにあるっぽい、大きな壁面鏡をみていた俺は、ゆっくり振り返る。



「……ひ、ひしょ?」



ひしょ。秘書かー。


俺は姿鏡に映る、今日もしま◯らルックな自分を眺めながら、あーって思う。


俺にはモッチーというパーフェクト女神がいるので、そういうのはご遠慮したいのだけどなぁ……。


なので、【情報化視界】の片隅で、浴衣姿で長椅子に座ってうつらうつらしているモッチーのほっぺを

ぷにぷにクリックしながら、



「ええとヨーハン。俺、たぶんそういうのは必要――」



「はじめまして。このたびフォースタス・フィスト様の秘書に任命された、モモチャーノ・エレスです」



「…………、……っ」



「よろしくお願いしますねっ。フォースタス様っ!」



目の前に、フィスト家の制服に身を包んだ、なんか見覚えのある金髪の可愛らしい少女がいた。



「モ、MO、も、藻……ッ、」



「「モモチャーノ!?」」



叫んだのはクラーラとリーゼル!?


えっ!? どういうこと!? なんで双子がモッチーのこと知ってるの!?!?





宇宙の 法則が 乱れる!



勇者救出まで、あと  1時間 49分 53秒



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