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異世界魔王の日常に技術革新を起こしてもよいだろうか  作者: おかゆまさき
第2章 【異世界承認編】 続いて異世界“魔族”の日常に技術革新をおこしてもよいだろうか
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45話 十二斂魔王になってから初めての温泉回をしてもよいだろうか 後半戦 ~ 双子の場合







「リーゼル……どうしよう……、やっと【魔素(プロトマ)】とか【魔素契約樹(プロトマ・グラム)】を

 理解できたはずなのに、さっきからフォースタスさまの言ってることがちっとも理解できないうえに、

 早口でデュフフフとかフォカヌポウとか言いだしてキモい」


「クラーラ、諦観は大事ぞ。狂乱は天才につきものぞ」



「【魔素(プロトマ)】と【魔素樹形図】が魔族を象徴するという意見には同意いたします。ですが、」



俺から視線を外さない双子と玉璽さま。

妖精っぽい外見を持った尖り耳の少女が、さらに俺を見据える。



「……地下室に……ツリーハウス……ですか? そして……ロマン……」


「そうですっ!」 



 俺はもぎたてフレッシュ的に弾けてしまうのだが、



「つまり、フォースタス殿はそのような個人的な動機で、この『特都』を、改造されたと?」


「いやいや玉璽さま! まだまだこんなんじゃだめなんだって!!」


「……というと?」



「まだこの新都市には、メイ・ファー&ハリビュール戦でつかんだ、あの感覚をまったく反映できてもいない。

 ぁぁああ……俺的にはこの都市を、きちんとした魔族文化的なものの象徴にしたいんだぁ……っ!」



俺は濡れた髪をかき混ぜるようにして頭を抱え、



「ばかばか! 俺のバカ! 魔族だからってハロウィーン的なモチーフから離れられない俺の貧弱な発想!!

 けど近い……っ! ならばスチームパンク的な歯車と真鍮・ゴーグル・蒸気機関!? いやっ!

 それは魔術が発達せずに蒸気機関の世界でしょ!? でもこれも近いんだよなぁぁ……ッ!

 俺はとにかくここを、毎日の生活におもちゃが寄り添うことが当然の街並みにしたい!

 玉璽さまも、クラーラもリーゼルももう見た?

 今はまだ、第二階層、城下町の外周に、外へ落ちないようにフェンス代わりに公園を設置して、

 そこに一段目から物資と人々を城下町にリフトアップ輸送のためにゴンドラの駅を作っただけとかなんだけど、

 いずれは、街中に魔族っぽい路面電車を走らせて、魔族の車掌さんが制服で運転してるとか、絶対見たいよね?

 けど、今は時間がぁぁ……!!」


「では……まだ、この都市は未完成と?」


「そのとおりっ!! 玉璽さまにもやっぱりわかっちゃいますよね!?

 ここはまだ、今はまだ細かいバリをとったり、塗装をしたりみたいな、仕上げ作業が全然できていない、

 いわゆるネイキッド状態ってやつなんですよっ! これを完成と思わないでいただきたい! 恥ずかしい!」



「……さすがは、フォースタス殿」



ざばっと、俺と並ぶように玉璽さまは立ち上がった。



「あらためて、私はあなたは『十二斂魔王』の器であると確信いたします」



「…………は、はい……? ど、どうした。玉璽さま」



「どんなに高潔な信念や、思慮深き決意に乗っ取った行為であっても、王というものは、結果がすべて」

 


妖精王女の伏せるまつげは長い。

彼女は「ただし、危うくはあります」と前置き、



「しかし自らを真に頼り、振る舞い、そこから生まれたあまねき事柄ことごとく、正道。

 利己的な欲望・願望を求めた果てに現れた、底なしの利他的状況とでも言うのでしょうか、

 悪を欲して善を行う……とは、まさにこのことかと」



妖精の相貌を持つ少女が、再びぐうっと俺に身を乗り出し、



「玉璽として、ここまでの多幸感はひさしぶり……いえ、やはり、初めてかもしれません、フォースタス殿。

 いいでしょう。混乱している各学園代表との交渉などにも、玉璽として力を化します」



耳元でささやく。



「あなたは歴代の中でも類まれな資質を持つ、比類なき『十二斂魔王』のようです」



それから身を戻し、ぱっと明るい声になって、



「あなたには、わたくしのことを打ち明けたくなりました」



背を向けた。



「落ち着いたら私の所へ来てください。この世界のことをお伝えいたします。

 それでは、お先に」


「あれっ!? 玉璽さま、ま、待ってくださいっ。なんか様子おかしい!

 それにそのキグルミ、びしょ濡れでしょ!?

 脱衣所のタオルで新しいの作りますんで、出口までは見送ります……!

 クラーラ、リーゼル、あんまり湯船の縁から外に身を乗り出すなよ!?」



……………

………



ちゃぽんっ。



「……つまり、さっきの会話からすると、フォースタス様は、一騎打ちを強いられる運命にある勇者勢が、

 それにしか活路を見いだせなくなるくらいの"武威"を魔族が示すために、

 この『巨城』を作った……というわけじゃ、ないのね……?」



「ほぼ趣味ぞ」



「城壁なんてつくらないで、逆にとっぱらっちゃって、大地……というか、

 宮殿地下にある広大な最終迷宮を隆起させて、すっごく高い崖の上の台地を『第一階層』にして、

 そこにあんなすごい要塞を配置したのも、

 フォースタスがデザイン状……やりたいからやっただけで」



「師匠は無意識ぞ」



「そこからさらに13本。あんな太い柱で、これだけの高さに今まであった城下町を持ち上げて、

 勇者がここに来た時の万が一に備えたわけでもないの……?」



「我々が単に、結果だけを斟酌ぞ」



「マジで……?」



「あの玉璽様のセリフをまったく理解した様子なき師匠ぞ」



「ん? どうしたクラーラ、リーゼル」



玉璽さまを見送って、湯船に戻ってくると、

双子がぶくぶくと湯に半分潜りながら、俺を凝視している。



「つまりこれが『英雄』ってやつなの?」


「天賦の才ぞ」



「な、なんだ? 急に……。あ、もしかしてお前ら、今頃、俺のおもちゃ作りの才能に気がついたのか? 

 おそいよもー」



「なんでもないわ、フォースタス」


「こちらの話ぞ」



「ふ、ふーん……っ?」



くっ! いつもながら、素直じゃない双子め!

だが俺は知っているぞ……?


その湯の下に、水鉄砲、隠してるんだろう!?!?



「はぁぁ……それにしても、

 いまさらだけど、こんな姿の私とリーゼルに、なんの反応もしてくれないのね」


「がっかりぞ」


「これでも私とリーゼルは、魔族の中ではモテモテなのよ? その二人が一糸まとわぬ裸でこうしているのに」



あ、あれ?

水鉄砲攻撃は……?



「ちょっと屈辱だわ」


「いや、なに言ってるんだ。ふたりとも、充分すぎるくらい、かわいいが?」


「なんかそういうのじゃないのよね……」



湯当たりかな……?

そろそろ二人を出したほうがいいかもしれん。



「まあいいわ。ねえ、フォースタス……さまは、この後も忙しいんでしょう?」



「だな。今は、ちょっとだけ休憩時間をもらっただけだしな」



俺は脳内で、モッチーが一覧表にしてくれた今日のスケジュールを参照する。

あー、俺も時間的にそろそろヤバメかもしれん。



「じゃあ、あの……師匠……?」


 

なんだかしおらしいクラーラ。

彼女はねだるように俺を見上げ、



「はやく、私とクラーラに、あれ……見せてほしいんだけど……」


「約束ぞ?」



「ん? あれってなんだ?」



―――――――――――――――――



☆ずっと見えてるあれではないの……ッ!?☆




((勇者救出まで、あと 2時間 18分 32秒))


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