36話 相手のスキルも見切ったところでそろそろ反撃してもよいだろうか
「拷問具……!? これ以上の辱めは受けぬ! くッ! こ、ころ……っ」
ッ!?
言うのか? この女騎士魔王、ついに言ってしまうのか……?
「こ、コロ……、コロッセオを……! 神聖なコロッセオを、そのような拷問具でで汚すことは許さんぞ!」
おしいいいいッ!
あれ? でも、字面的に、言ってはいる!?
くっコロッセ……ォオ……
まあいい!
「これが拷問具なわけないだろ。これは……メリーゴーランドって言ってな」
が、見たことあってもわからなかったかもしれない。
なにしろ、いわゆる丸いテント型一軒まるまるのメリーゴーランドは、
材料量の関係で作れなかったのだ。
だから俺が作ったのは、いわゆるデ◯ズ◯ーラ◯ドのパレードの時にズンタカやってきて、
キャラクター達が乗っている車? 輿? みたいなやつだった。
そういうフロートステージの上に、木馬が4匹くらいいて、台座には車輪がついてて、
ひとことで言えばミニサイズのパレード移動式メリーゴーランドって感じなのだが、
「これはおまえとハリビュールを乗せ、このスタジアム中を駆けまわる回るおもちゃ……、
魔王二人に楽しい思い出をつくり、その記憶はやがて童心を思い出すためのおもちゃアミューズメントなのである」
「は…………!? おも、ちゃ……? アミュー……ど、どういうことだ!?
貴様、ふざけているのか!? それが勝負にどんな関係があるっ!
いい加減に起きろ! 目を覚ませハリビュール!」
「んん……ふぁあ、あ……、あっ、な、なんですございますの……?」
二人はジタバタ、もぞもぞと動いているが、
俺がありったけの魔素を注ぎ込むシャンバライト・クリスタルは盤石。
俺はなおも【再構成】の力と、素材の特性を活かしながら、
飴細工のように伸ばしたシャンバライト・クリスタルでもって、
クレーンの要領で捕らえた魔王二人の身体を、フロートステージ上の馬に持ち上げ、
「くっ! や、やめろっ! やめろぉ!! 貴様! 許さんぞ!」
「いったいこれは、どんなプレイでございますのぉっ!?」
馬の胴をしっかり座らせ、ポールにきちんと両手を添えるようにして、固定した。
「よし……メリーゴーランド、始動!」
後部に乗り込んだ俺は、両手で動力滑車をぐるぐる回す。
すると、
♪~♪ ♪~♪ ♪~♪ ♪~♪
内蔵されたオルゴールが、蓄音機のウッドコーンの要領でメルヘンティックな音楽を倍増させ、
音楽にあわせてメリーゴーランドはスタジアム、闘技場の観客席沿いをゆっくり賑やかに進み始めた。
「よし、うまくいった!」
あっけに取られてこちらを見ている観客達に手を振りながら、
【玩具創造】の出来栄えに満足を覚える。
これだけの大型おもちゃ、いつか作ってはみたいとは思っていたし、
夢想もしていたのだけど、実際こうして形にしてみると、感無量……ッ!
モッチー愛してるッ!!
もちろん、馬に繋がれたメイ・ファーとハリビュールは、上下に揺られながら、
メリーゴーランドを満喫しているはずなのだが、
「……な、」
はっとするような声。その主、メイ・ファーを見れば、
「なんだ! なんなのだこれはーっ!!」
俺と目が会い、慌てたようにがちゃがちゃと、馬の上で身体を揺すっている。
「勝手に! 勝手に動いて進んで……妙なメロディー……でございますわね」
隣のハリビュールは澄ましながらも、興味深げに馬に揺られている。
「いかがかな、メイ・ファー、ハリビュール! 楽しいだろ……?
思い出したか? 童心というものを」
「なんの……ことだ……? いいからこれを止めろ! いったいどういうつもりだ!」
「上下に動いて前に進むだけ……。痛いわけでも、苦しいわけでもございませんし、
なにがしたいんでございますの……?」
「ふふふ……、ふたりとも、いつまでそうやって平静を保っていられるかな?」
「や、やめろっ! スピードを、上げるな……っ!」
俺は動力滑車をグルグルと早め、加速! 闘技場外周をさらに進む!
「そんなことをしても、わ、我は、なにも感じることなど、ない……!」
「じゃあメイ・ファー。なんで少し顔を赤らめ、きょろきょろとまわりを見回してそわそわしている!」
「し、してなどいないッ! デタラメを、言うな!」
「強情なやつだな、メイ・ファー……。さすがはファー家の魔王と言ったところか」
ファー家がどんな家風だか、知らないのだが……なんとなく、な!
「我には……これが勝敗を左右する決めてなどになるとは、到底思えないのだが……」
がつん! と、メイ・ファーは、おでこをメリーゴーランドのポールに打ち付ける!
「それがなんであろうと、フォースタス! 貴様の思惑通りになどならぬ!!
このメリーゴーランドとやらが、迂遠な精神攻撃だとしたら、なおさらな!!」
「ほう、気丈なことだ。だがな、」
俺は親指でクイッと指し示し。
「だがな、メイ・ファー。おまえの幼なじみはどうかな?」
「な……っ! ハリビュール!?」
邪神官ハリビュールは、すでに堕ちていた。
勇者到着まであと 46時間57分00秒




