31話 ABCブロックの勝者魔王三人がそろったのだが仲良くしなくてもよいだろうか
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名前: メイ・ファー
俗称: 金輪のメイ・ファー
重翼のメイ・ファー
種族: 魔族
クラス: 魔王(ファー家魔王)
スキル:【重力強大化】【溶爆輝光】
【剣技:長剣】【光属性付与】【手紙交換】
デミスキル:【光属性長剣術】【達筆】
〔戦〕 25000
〔謀〕 15000
〔非〕 47
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スキルって、もはや趣味の欄なの?
ともかく、
「おお……っ! おまえが噂の、メイ・ファーかっ!」
透け感のある白い光沢を持つ、身体にぴったりフィットの甲冑に身を包んだ
プラチナ・ブロンドの魔王が、蒼い瞳で俺を睨みつけている。
「汚らわしい人間風情が、我が名を気安く呼ぶな。千切るぞ」
「よ、余裕ないな……」
メイ・ファーは、彼女が持つ硬い外見の他にも、さらに近づきがたい雰囲気を持っていた。
しかもそのとげとげしい威圧感。
なんか、俺だけに向けられている気がしてならない。
いや……これは、確実に俺が嫌われてる?
白騎士然とした高貴な魔王、メイ・ファーが俺をにらむ、この冷やかな視線は、
軽蔑の眼差しのような気がするが、俺の勘違いだろうか。
俺、なにかしたっけか……
「ふん……っ」
戸惑う俺をよそに、お綺麗なAブロック覇者であるメイ・ファーは、
頭のティアラ型ヘルムをきらめかせながら、硬いブーツをカツカツ、こちらに近寄ってくる。
「ま、まさか……」
メイ・ファーも、玉璽さまの持っている、ヌイグルミが、欲しいのか?
そんなの嬉しいっ!
魔王の年齢が外見通りだとして、メイ・ファーは見た目、17~18くらい?
一見、強気で男勝りに見えて、実はかなり乙女な部分が……!?
そ う に ち が い な い。
よし、こうなったら双子には悪いが、先に俺の虎の子、
ジーパンを材料にしたテディベアをメイ・ファーに――
「あらあら……、抜け駆けは協定違反でございますわぁ、メイ様ぁ」
「んっ??」
絡みつくような声が、メイ・ファーの背後、白虎の門の更に奥、暗がりから響いた。
「出たな、ハリビュール。おまえと協定など、結んだ覚えはない」
メイ・ファーが甲冑を鳴らして振り返った先。
俺の【情報化視界】も、新たに姿を表したそいつ輪郭を浮かび上がらせた。
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名前: ハリビュール・ビート
俗称: 邪神官ハリビュール
淫獣ハリビュール
種族: 魔族
クラス: 魔王(ビート家魔王)
スキル:【破砕蝿雲】【棍技:モーニングスター】
【超速移動】【邪神医術】【童貞狩り】
デミスキル:【床上手】【四十八手】【裏四十八手】
〔戦〕 19000
〔謀〕 24000
〔非〕 43
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どどどどど童貞ちゃうわーッ!!
もう! もう違うから!! 身体は子供だけど前世はおとな!!
その名はフィスト家魔王、フォースタス・フィスト。
……ふぅ、セーフな?
というか、見た目からしてとんでもないエロ魔王の登場だ。
Bブロック覇者、ハリビュール・ビート。
カッコいい美しいメイ・ファーと並ぶと、その淫靡さがエグいほど際立つ。
メイ・ファーも確かに可憐な女の子と言えるのだが……、
いかんせん、比べてしまうと女性らしさに乏しい。
……ん? ちがうな、やっぱりハリビュールのエロさが異常だぞ……?
廊下で「おっぱいがおっきい!」と俺に思わせた、あのハイテンション実況者、
フランベルジュのおっぱいが青臭く感じるくらい官能的な巨乳が、ハリビュールが動くたびに揺れるのだ。
くびれた腰。
そして熟れたという言葉がぴったりの尻ッ! ふともも!
シルエットだけでエロすぎるそれを、彼女は神官服で包んでいるのだが、
それが身体にぴったり過ぎる上に、その素材が、網タイツのような黒いレース素材でできている。
なんだそりゃ。
通り名が示すとおり、邪神官すぎる!
「あなたが噂のフォースタス様……? あら、あらあらあらぁ……」
声までエロい。どこかエロい穴から声出してるとしか思えんくらい、異常にエロい。
歩き方まで、なんかいやらしい。
ハリビュールは、両手でモーニングスターの鎖をチャラチャラ鳴らしながら近づいてきて、
「あっちも弱そう。期待はずれでございますわぁ……」
なんだろう、このスタジアムに来てから、一番ダメージを食らった気がするんだが。
《# そ、そんなことありません! ありませんでしたから! 富士雄! あなたは獣です! しっかり!》
ありがとうモッチー! 勇気百倍ッ! あんぱん!
「メイ様は、もう新参の若いツバメに唾を……液をお付けになったんでございますの?
さすがファー家の魔王様は違いますわぁ」
「黙れハリビュール。おまえのようなアバズレ淫乱女と我を一緒にするな」
「あらあら、幼なじみにその言い草はないのではなくって? あぁん、寂しくなってしまいますの」
仲いいんだな!
「じゃあ、この際、この人族ツバメちゃんを二人で味見するっていうのはいかがでございます? メイ様」
「ゲテモノ食いがすぎるぞ。そろそろ、そのだらしない口を閉じろ、ハリビュール」
しかしこの二人、魔族の中で凄まじい人気があるんだな……。
さっきからスタジアムの沸きよう、半端ないし、観客、なんかどんどん増えてないか……?
というか、客席にはっきりと親衛隊……というか、ラブラ◯バー的な一角があるんだが……。
あっちの、銀色のキラキラした光る棒を持った魔族達が、メイ・ファー押しで、
こっちの黒のとげとげ玉……モーニングスターの光る棒を持ったのが、ハリビュール押しだろうな……。
というか、学生の街? なだけに、若い観客多い……?
俺のCブッロク代表決定に、闘技場まで客席から駆けつけてくれているフィスト家の面々も、
今や俺のまわりで、二人の女魔王に釘付けというか、息を飲んで注視し続けてる。
なんか、あれだな。
「あー……ところで、玉璽さま」
俺が今、一番話しかけやすそうだったのが、キグルミ妖精だった。
「こうしてABCの各ブロックの優勝者が三人そろったんだが、
どうやってこの中から一人、『十二斂魔王』を選ぶんだ?」
水を打ったようにスタジアムが静まった。
勇者到着まで あと 47時間29分46秒




