24話 単純に『勝利』がもたらす効果を目の当たりにしてもよいだろうか
通常営業がんばります。
俺が、舞台裏みたいな所から、トコトコと玉座の前に姿を現すと、
ズラーッと膝をついて並んでいた家臣団みたいな、正装でキリっとしたフィスト家の魔族達が
床に片膝、片腕をつき
ははーってしてた。
あれ? 待って?
俺、ベッドにあったシーツを素材として【玩具創造】で
適当に作ったジャージ姿なんだが……!
「……ヨーハン、どうしたんだ? これ」
「フォースタス様!!」
声に向けば、一番前で片膝ついてしゃがんでいたのはイケメン将軍!
フィリップ・フィストがこちらに顔を向けていて、
■ ■ ■ ■ ■
名前: フィリップ・フィスト
俗称: 柳技のフィリップ
種族: 魔族
クラス: 魔将軍
スキル:【柔力】【剣技:長剣】【槍技:長槍】【風属性付与】
デミスキル:【風属性剣術】【風属性槍術】
〔戦〕 4000
〔謀〕 1000
〔非〕 4
■ ■ ■ ■ ■
フィリップのステータスにも、スキルが追加されている。
というか【属性付与】とか、
これ、俺のためにあるスキルだよね。
絶対にそれ、俺にそういうおもちゃを作れっていってるよね。
竹とんぼに風属性を付与して、もっと飛ぶようにしろって、言ってるよね……!!
「ハァ……ハァ……【属性付与】ォ……どうしたらそれをぉぉ」
「フォースタス様……?」
「はっ! いかんいかん!」
俺は両手で自分の頬をひっぱたき、
「ど、どうしたんだフィリップ。こんな、なんかみんな、改まって……」
「我々の、これまでのご無礼をお許し下さいッ!!」
会話が噛み合ってない!
「え……? な、なに?」
ゴブレイ? ゴブ……レイ?
「バンベルグ……!」
フィリップが、自分のちょい斜め後ろで膝をついていた、脳筋将軍の名を呼ぶ。
「た、たのんます……! フォースタス……様、……フォースタス様!」
バンベルグ!? そ、そんなすごい形相で、なにを俺に、頼むって!?
■ ■ ■ ■
名前: バンベルグ・フィスト
俗称: 樫技のバンベルグ
種族: 魔族
クラス: 魔将軍
スキル:【剛力】【棍技:重棍棒】【風属性付与】
デミスキル:【風属性棍棒術】
〔戦〕 2000
〔謀〕 0
〔非〕 3
■ ■ ■ ■
あいかわらず【風属性棍棒術】気になるッ!!
いや、昨日試合が終わった時点で、みんなのスキル見えてたんだが、
やっぱりバンベルグのスキル構成、卑怯だよ……!
風のように、殴る!!
「え、ええっと……?」
俺がバンベルグのステータスと剣幕に動揺しながら、
オロオロしていると、
「はい! はい! よろしいでしょうか!!」
「ク、クラーラ……!?」
たくさんいたフィスト家の面々の後ろから、あの双子の魔術師が走ってくる!
■ ■ ■ ■
名前: クラーラ・フィスト
俗称: 火宴のクラーラ
種族: 魔族
クラス: 魔術師
スキル: 【魔術無詠唱】【魔術研究】
デミスキル:【合同魔法】
〔戦〕 200
〔謀〕 0
〔非〕 9
■ ■ ■ ■
「リーゼルも……?」
「恐れながらぞ」
■ ■ ■ ■
名前: リーゼル・フィスト
俗称: 氷苑のリーゼル
種族: 魔族
クラス: 魔術師
スキル: 【魔術無詠唱】【魔術研究】
デミスキル:【合同魔法】
〔戦〕 100
〔謀〕 100
〔非〕 9
■ ■ ■ ■
さすが双子、スキルも一緒なんだよね。
そしてデミスキルの【合同魔法】が、やっぱりおもちゃ的に気になる。
いったいどういう効果なんだ……!!
だが、やっぱり【スキル看破】で見ただけじゃなくて、
実際使ってもらって発動した【スキル構成樹】を直接見ないと、
【大百科】での説明は発動しないみたい。
案外不便!
「昨日は、大変失礼な振る舞いをフォースタス様……魔王様に向けてしまい、申し訳ございませんッ!」
「堪忍ぞ」
「え、え……? ちょ、ちょっと……!?」
いったい一晩で、なにがフィスト家に起こったんだ……!?
あの双子まで、俺に膝を折って頭を下げているんだがッ!
俺の動揺もどこ吹く風、床に膝をついて完全かしこまりモードの双子は、
「フォースタス様……、ど、どうか、私たちを許してくださいっ!
……そして、なにとぞこのクラーラとリーゼルを、あなた様の弟子に!!」
「嘆願ぞ」
「……は? で、でし?」
これはもう、なんなんだろう、このヒト達。
俺は、俺の背後に本物の大魔王でも現れたんじゃないかと、振り向いて確認するが、
なにもおらず、
前面には、フィスト家の代表的な面々が微動だにせず、かしこまっている。
沈黙を破るように、クラーラが、ひゅひゅひゅっと息を吸い込み、
「理論だけは! 理論だけは学びました! 【融合魔法】については、理論上は可能であると!!
私とリーゼルは、その研究のために、今まで【合同魔法】を研究し続けてまいりました!
フォースタス様は、それらを、いともたやすく、しかも無詠唱で……!!」
「融合魔法……って、ああ、あれか」
昨日のアランドラ戦で、アランドラがあんまりにも簡単にリジェクトしてくるから、
調子に乗って、魔術を【融合】で合成したやつのことだろう。
「あの試合を見ていた観客も、わずかではあるでしょうがフォースタス様が使われた魔法が
【融合魔法】であると気づいているはずです!」
いや、でもあれ、初見でアランドラにクリアーされてるんだが……。
「ですからどうか、この私たちを一番弟子に! お願いでございます!!」
「直訴ぞ」
さらに深々と頭を下げる双子魔術師!
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勇者到着まで あと 49時間49分06秒




