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死んで、生まれた

 これは確実に死んだ、そう思った。なんせ全身からバキバキだとか、グチャグチャだとか、ブチブチだとか、そんな音が聞こえてくる。そのくせ痛みを感じないもんだから「ああ…これは駄目だな」と思った。走馬灯って本当に見えるんだな、なんてぼんやり考えながら。


 後悔はしていない。確かに子どもが目の前でトラックに轢かれるのを眺めるという選択肢もあったのだが、そうするとおそらくその子から少し離れたところにいた母親が悲鳴をあげ、わめき、泣き叫びながら肉塊と化した子どもに駆け寄るシーンを見ることになっただろう。それは耐えられない。そもそも人命を救いたくて防衛医大にまで行って医学生になったわけで。当然まだ生きていたい気持ちはあったが、こちとら天涯孤独の身の上。こういう命の使い方もなかなか悪くないだろう。俺が庇った少年が、将来素晴らしい人間になってくれればさらに言うことなしだ。



 …意識が次第に薄れていく。



 ……二度寝のまどろみのようだ。



 ………これが死ぬということか。



 …………………………。






 どれくらいの時が経ったのだろう。不意にどこかで何かの音がした気がした。いや、気がした、というよりも。音が聞こえる。


 (あれ…? もしかして…生き延びた?! あの状況から?!)

 

そうとしか考えられない。まだ思考はぼんやりしているし、目も開かないし感覚も何もないが、なんというか「生きている」感じがするのだ。体の状態はともかく、意識が回復したということは、きっと俺は一命を取り留めたのだ。


 (現代医学ってすげー!)


 取り敢えず今は安静にして、体が回復するのを待とう。


 などと考えていた矢先に、不意に体がずるりと「外に押し出された感覚」があった。途端にあまりにも多くの情報が入ってきて、五感が悲鳴をあげる。

 まず、とにかく眩しいと感じた。瞼はしっかりと閉じている、もとい目も開かないのにとても眩しい。強烈な光を浴びているような感覚だ。次に、全身がぬるぬるした液体にまみれているように感じた。追って、むせ返るような血の匂いを感じる。血だまりの中に落とされた…のか?


 駄目だ。状況がこれっぽっちも理解できない。とにかく目を、目を開けなければ!

 とは思うものの、なかなか全身に力が入らず、眩しさも全然解消されない。おかげでかなり時間がかかったが、ようやくうっすらと目を開くことに成功した。


 視界に飛び込んでくるのは、病院特有の白い壁。そう思って、いやそう願っていた。

 目が真っ先にとらえた色は緑。真下に広がる大森林の緑色だった。


 (嘘だろ…なんだこれ…)


 頭が真っ白で何も考えられない。何かとんでもないことが起きてしまったということだけはわかった。


 (状況を…状況を確認しないと…まずここはどこだ…?)


 周りをもっとよく見渡そうとして振り向くと、「それ」と目が合った。

 四足歩行の生物がそこにいた。ぱっと見るとライオンやトラのようなシルエットに見える。ただし、上半身はまるで鷲のようだ。前脚は猛禽類の脚そのもの、背中には大きな翼を持ち、鋭い目と嘴は目の前の生物がただの哺乳類ではないことを訴えてくる。その生物はゆっくりとこちらに近づいてきて…


 (う…うわあああああああああああ!)


 トラックに突っ込める程度の勇気では、近づいてくる未知の怪物の醸し出す恐怖に打ち克つことはできなかった。

 俺はあえなく気を失った。





このサイトを見ていたら、自分も何か書いてみたくなりました。

そこで、お恥ずかしながらひとつお話を作ってみました。

楽しんでやっていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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