良い戦争と悪い戦争
5.良い戦争と悪い戦争
イロリは戦争について考えていました。
良い戦争ってあるのかなあ?
悪い戦争ってあるのかなあ?
すると、向うから強そうな男の人がやって来て言いました。
そもそも、戦争とは国と国との喧嘩なのだ。
人間だってそうじゃないか、最初は口喧嘩だけれど、それでは収まりがつかなくなって殴り合う、更には、刃物を持ったり、鉄砲を持ち出したりするだろう。
きみい、やられたら、やり返さなくっちゃ、でないと、舐められちまうぜ。
だから、家族や国民を守るための戦争は、良い戦争なのだ。
すると、今度は、弱そうな男の人がやって来て言いました。
君たち、やられたら、やり返すなんて、強い人ならできるけれど、弱い人や弱い国はどうするの?
きみい、負けると決まっている戦争をやる訳にもいかない、だから、我慢するしかないのだよ。短気を起こして戦争をすれば、家族も国も滅びてしまう。
負ける戦争、つまり、家族や国民を守らない戦争は、悪い戦争なのだ。
すると、強そうな男の人が、言いました。
そんな負け犬の様な考えでどうするのだ、男としての誇りや、国のプライドはどうする。玉砕しても、潔く戦うのが良いではないか。
すると、今度は、女の人がやって来て、言いました。
あんたたち、なにを言っているの、戦争に良い戦争も、悪い戦争もある訳無いでしょ。
かつて、この国は、戦争をしたけれど、
勝っているうちは、本当に、面白かったのよ。
でも、戦争に負けると、悲惨なことになるのよ。
戦争に勝っているうちは、相手の苦しみは、分からないものなのよ。
戦争はしてはならないのよ。
そりゃあ、戦争はしてはならないことは、誰でも分かっているさ。
強そうな男の人と弱そうな男の人が口をそろえて言いました。
そうでしょ、女の人が言いました。
イロリが言いました。
じゃあ、なぜ戦争は無くならないのだろうね?
すると、強そうな男の人も、弱そうな男の人も、女の人も、腕を組んで、じっと考え出したのでした。