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「何、探偵業に行き詰まってる?」
「ん。なんつーかほら、私がこの職に就いたのって7年前お前に失踪されたからで。そのために貯金とバイト代でテナント借りて、親の反対振り切って大学出ても就活しなかったしさ。
そうこうして落ち着いた今だけど、滑り込む依頼って便利屋稼業ばっかだよ」
「へえー。お前そこまでして俺のこと探してくれてたの?…愛だね」
サラッと言われ、そのにやけヅラを睨みつける。ついでに当たりつけるように舌打ちしてやった。
「実のところ、私は探偵に向いているんだろうか」
「…向いてるか向いてないかって言われたら…向いてないとおもう」
「Σひっど!!おま!そこは嘘でも向いてると言うとこだろ普通」
「だって俺お前に嘘つきたくないもん」
真顔で言われ、ぶわっと熱が顔面に集中する。どう言うことかと聞き返す前に耳が赤くなって、慌てて両手で耳を抑えた。
「まあいいんじゃね?そういうのは依頼の種類じゃねぇよ。お前が素直に人助けしたいって思う気持ちがあるなら、それを追い掛けてりゃ今の悩みなんかアホらしいって思う日がくるさ」
「…そうかな」
「そうだよ」
と、言うわけで。そういって笑顔で両手を広げるあで。その手を取りかけて…やっぱりまた突き放す。
「…心配事ならもう一つある」
「まだあんの!?何!」
「お前のことだよ!」
「えっ俺!?」
こくりと頷く。続けて、私は一番言い出しづらかった本音を吐露した。
「…お前顔に出さないんだもんな。7年前あんなことがあったって…再会した時ですらわからなかった。それは私が鈍感だからってのもあると思うけど、お前、強がるから。
…お前が辛そうに笑うところは、もう見たくない」
俯きながら言う。私なりに必死の覚悟で告げたそれは阿出野にどう届いたのか、しばらく考えるそぶりをして。吐息をつくと、開口した。
「俺はなるが思ってるより弱くないよ」
「…」
「たぶん性なんだろうな…ホラ虎とかでもあんじゃん弱ってても他者に見せないとか」
「お前人間だろ」
「まぁそうだけど(笑)…それでも俺こんなだからまた強がると思う。男だし。…でもマジで無理ってなったとときは、そん時は、だな」
口元に手を添え、切れ長の目がぐるりと空を仰ぐ。じっと見据えていると、自信なさげな目と目があった。