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RUSH  作者: 或田いち
FILE9.RUSH!
198/201

2

 


 腕時計を見る。時刻は昼の13:00を過ぎた頃だった。

 今日は午前中10時から村松さん家の引越しの手伝いをこなし、午後15時からの鈴木さん家の犬の散歩まではフリーだ。花屋の手伝いをする、と言ったが彩女さんがいるから気分転換に散歩でもしておいで(特に月見ヶ丘中央公園辺り)←場所指定


 と言われなんとなしに歩みを進める今現在。


(…てか探偵業が最早便利屋になってるような)


 いや、皆まで言うまい。仕事を選んでいては収入にならないのだ。そう納得すると、公園の溜池の周りを歩く。

 初夏の爽やかな風が頬をさらう5月。生い繁る緑の木々、その木漏れ日を見上げては眩しさに目を細めた。

 風が横髪をすり抜ける。




 「それ」は、すぐに目に飛び込んできた。

 木々の切れ間、その日向に立ち、溜池沿いの柵に腰掛け顔をもたげる一人の男性。

 暦は初夏だと言うのに、それにしてはやや暑そうな黒のジャケットスーツに身を包み、ネクタイはしていない。長駆で細身の、黒髪。


 思わず立ち止まると、相手型が気がついたらしい、目が合うと優しく笑った。


「ーーーよう」

「…あ、で…」


「…久しぶり」


 さりげなく両手を広げ、笑顔を向ける。それにつられるように笑顔を零すと、私はーーー。


「ーーーぐはッ!?」


 阿出野の鳩尾に思い切り鉄拳をお見舞いした。




「お前なあ!出てくるならそう連絡しろよ!知らなかったから午後も普通に仕事だわバカ」


「えっ…!?いや、ハガキ…ハガキで事前に連絡を…!」

「知らないよ届いてないよ、住所間違えたんじゃないのか」

「え!?でもじゃあなんでここにいんの!俺葉書にここで待ってるね的なメッセージ書いたからそれで来てくれたのかとってゆーかいいパンチだったなさっきの物凄くいてぇ…」


 内股でみっともなくその場に蹲るその様子が懐かしくて、ぷっと噴き出す。

 上から彼を見下ろしてそっとスーツの裾を掴むと、嬉しさにくすぐったくなった。


「ーあで、少し歩こう」

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