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「おはようございまーすっ」
AM7:00、高草木商店の店先で、成滝結那は扉を叩いた。
「あらなるちゃんおはよう、今日も早いのねぇ」
「今日は10時から依頼入ってるんで、それまでは花屋の手伝いしようと思って伺ったんです。高草木いますか」
「相くんならさっき歯磨いて…」
「おはよ…あれ、なる…来てたんだ」
「今来たとこだよ。つーかお前今日遅起きだな」
歯ブラシを口に加えたまま、半袖Tシャツにスウェット姿でのろのろと姿を現した青二才、高草木は目をこすりながらぐっと伸びをする。
「今日は三丁目の丹羽さんちに供花持ってかなきゃだからその準備しないとねー… zz」
「おい起きろ!供花だな!?それなら私支度出来るから後で包む前にチェックしてくれないか」
「あ、ほんと?助かるよ母さんやれやれってうるさかったから」
「だったら済ませとけよ」
怒りマークを飛ばす割りにちゃきちゃき動き出す成滝、それを横目にふわああと大きなあくびを一つ。寝ぼけ眼で歯ブラシを動かす高草木の横腹を、高草木商店手伝い兼夜の蝶・彩女さん(本名:高木一男)がつついた。
「なぁんかなるちゃん、元気ねぇ」
「…ま、長年の謎が解けてスッキリしましたからね
今まではあいつのことがあってないがしろになってた仕事にも、誠心誠意取り組むようになったお陰か、おれの献身的なティッシュ配りの努力の甲斐か…最近は「本業」も割に入るようになってるよ」
「…なるちゃんの彼氏と真犯人が捕まって…アタシてっきりもっと落ち込むと思ってたんだけど、全然ピンピンしてるから逆になんて声かけていいかわかんなくって」
「…「彼氏」じゃないけどね
ま、もうあれから一年経ってるからね。さすがのなるもずっとくよくよはしてらんないよ」
「もう一年になるのねぇ…」
彩女さんは、そこいらにいるおばさんのように片頬に手を添え、しみじみとふけってみる。
言ってる間にも顔を洗い、歯磨きを終えた高草木は腰にエプロンを巻き彩女の前を通り過ぎた。
「あっ、そういえばさっきポスト見たらハガキ入ってたから取っといたわよ」
「あ、そうなの?ありがとう。誰から?」
「えーと確か…」
玄関先に置いた葉書を手に取り、その差出人を見るや否や二人は顔を見合わせる。それと同時に、奥からなるの声が届いた。
「高草木ーーー出来たからチェックしてーー」
「はいはーい」