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RUSH  作者: 或田いち
FILE8.安全装置(ストッパー)と起動装置(スターター)
192/201

18

 

 衝動、だった。


 構えた拳銃の引き金を容赦無く引いていた。ズガン、と音を立てて、銃弾は田賀谷の眼鏡のフレームを捉えて、彼の眼鏡を吹っ飛ばした。

 白い肌、その頬骨に赤い筋が刻まれる。


「なんでだ」


 震える。こんな時に何を考えて、犯人に同情するなんて。恨み、憎しみ、怒りがない交ぜになって息をするのもやっとだった。


「なんで殺した」


「…」

「あんたが貶めた俺の親父は追い詰められて家族殺してんだよ。知ってんだろ?俺の妹だ」

「…」

「親父が死んだ時あんた葬儀にいたよな。お袋にも声かけてた。どういう神経してあの場所にいたんだ?」

「…」


「な、教えてくれよ」


「妹が。夕凪が殺されたこと聞いた時、あんたどう思ったんだ」

「…不憫だと」

「 」



 片手で構えていた拳銃に左手を添え引き金に指をかけた所で、物陰から何かが飛び出して来た。

 半ば転がるように現れたかと思うと、すかさず田賀谷を庇うように体勢を立て直して大手を広げる。ボサボサの髪。華奢な体、への字口の、


まっすぐな瞳。



 この状況で現れた成滝に、阿出野は最早驚かなかった。代わりに鋭い眼光を向ける。


「…邪魔だどけ」

「…どかない」

「どけ」

「どかない!」


「撃ち殺されてぇのか!」

「お前に人は殺させない!!」





「…例えそれが私でも」


 シン、と空間が静まり返る。音のない静寂。呼吸の音すらしない。しばらくすると、糸が切れたみたくふっと背後から息が漏れた。


「…やっぱり気付いてたんだね成滝さん」


「…」

「君なら来てくれるって思ってたよ。俺を護るために」

「 黙れ  自惚れんなよ。私はあんたを助けに来たわけじゃない」


 気付いたのは阿出野に連絡をもらったあと。田賀谷の手がかりを探すためひっくり返した鞄の中から、最後に田賀谷と行ったカフェの伝票が現れたのだ。

 そこには、この場所の名前。


「…でも君も本当に単純だね。そんなんだから騙されるんだよ。…目障りだなぁ…まるで昔の自分を見ているようで」


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