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「あで、」
「何がガッカリしたって?こっちがガッカリだよ。
お前その調子で俺のこと探しててさぁ、さては男の一人とまともに付き合ったことねーんだろ。お前のさっきの反応見てりゃわかるよ、処女なの?その年で。いや女ならアリか、新鮮だねー」
「っ…せぇなどけっ、」
「疑わなかったのか?適当なこと言って逃げ出した男だよ?もしかしたらお前を嵌めた連中の仲間だったかもしれないとか考えなかったのかよ、そんなんだから騙されんだよお前」
あでが乱暴に自身のネクタイを緩める。ギラついた眼光に睨まれて私は、目を逸らすことが出来なかった。
「あいにく俺はお前が思ってるような"いいやつ"じゃねーよ。
教えてやる。お前が7年越しに追いかけてた男がどんだけ最低な人間か…ちょっとは体で思い知れ」
あでの、阿出野の大きな手のひらが私の頬に触れかけた瞬間、それは鳴った。
機械的な着信音。さっき聞いた、それと同じだ。あでのスマートフォンが誰かからの着信を受けて鳴り響いた。
ち、と大袈裟な舌打ちをしてベッドから相手が離れると、すかさず上体を起こす。片やあでは雑に携帯を取り出し私に背を向けて電話に出た。
「何すか」
《昼間から人生満喫してるようで羨ましいよ。その様子じゃお前も越智親子と変わらないんじゃないのか》
「自分の会社の社員GPSで監視してニヤついてるあんたよりよっぽどマシだとは思うんだけどね」
《明日の正午駅前のオープンカフェだ。調査資料は完成している今すぐ戻ってきて目を通してくれ》
「ちょっと待て明日の正午は博己の父親と面会が」
《依頼人が阿出野、お前を指名してるんだ仕方無いだろう。写真見たがお前好みの別嬪だったぞ。良かったな、お前が羨ましいよ》
「え、うそ可愛いの?やった!じゃねーよ待て」
《電波悪いから切るぞ》
「ちょっ悪くねーだろおい!切るな!!」