表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RUSH  作者: 或田いち
FILE8.安全装置(ストッパー)と起動装置(スターター)
184/201

10

 

「いついかなる時も、私が立ち止まり俯いた時に傍に居て手を差し伸べてくれた人間がいます。

 ぶっきらぼうで臆病で。時に信じられないくらい頼りない人ですが、私はその人のおかげで今こうして立っていられる。


 私は彼に救われた。今度は私が助けたい。

 あでは、私を突き動かす起動装置なんです」


「…」


聞こう、今なら。


答えてくれるかもしれない。





「貴方が犯人なんですか?」


「…」


「阿出野の父を追い込み、自殺するように仕向けたのは、田賀谷さん貴方なんですか?」




 質問した直後、ウエストポーチの中でスマホの着信音が鳴り響く。ピリリ、ピリリと寸分の狂いもない機械音。

 真っ直ぐ彼を見据える私、その視線を掻い潜って、田賀谷は顎をしゃくってみせた。


「…携帯鳴ってるよ」


「…」

「大事な連絡かもしれない。相方くんの目が覚めたのかも。…応答してあげないと」

「…っ」


 赤い目で田賀谷を見据えたまま、スマホを手に取りディスプレイを確認する。

 「彩女さん」の文字が飛び込んでくるのと同時に、席を立った。



「ーーーもしもし、」

《あっ…もしもしなるちゃん!?アタシ!相くん、目覚ましたわよ!すぐ来て!》

「…わかった、…今すぐ行きます」


 通話を切りホッと胸を撫で下ろす。カフェの入口の柱に体を預け息をついたのも束の間、すぐさま気が付いて店内に戻る。

ーーー先ほど私と田賀谷が言葉を交わしていたその席にはもう、既に田賀谷の姿はなかった。


「ーーーくそっ」


 逃げられた。私が入口にいたから出たとしたら気づくはずだったのに、一体どこから。


「あ、すいません」

「? はい何でしょう」

「あの、さっきまでここに座っていた眼鏡で紺のスーツを着た男性って見かけませんでしたか」

「あぁ、その方でしたら先ほど勝手口はどこかとお尋ねになって…出られましたけど…」


 不思議そうにする店員に御礼をし、テーブルに視線を移す。伝票の下に敷かれた二人分のお代が、こんな時ですら彼の性格を物語っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ