表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RUSH  作者: 或田いち
FILE8.安全装置(ストッパー)と起動装置(スターター)
180/201

6

 

「タバコ、吸ってい?」


「おれの意思を代言してくれる処置が、この病院には既に備わってる」


 寝たまま天井の火災報知器を顎でしゃくって見せると、阿出野は白けた表情で口にくわえた煙草を渋々胸ポケットに閉まった。

 阿出野はあたかも当然のように丸椅子を引き寄せてベッドサイドに腰掛けているが、その真向かいにて寝こける彩女さんが目覚める様子はない。


「撃たれたらしいね。ざまあみろ、調子に乗って人のことコソコソ嗅ぎ回ってっからだ」

「おれの記憶違いでなければ次会うときは容赦無く捕まえにかかるって言ったはずだけど」

「その身体で俺が捕まえられんの?」


 足を組み、頬杖をついてニヤリとほくそ笑む横っ面を、この体でなければすかさずぶん殴ってやるのに。こいつは病人にこれ以上にないストレスを与えて、何をしに来たと言うんだ。


「…人が弱ってんのをいいことに偵察にきたのか。クズのやることだ」

「まぁそうカリカリすんなや、こう見えて俺だってそれなりに心配したんだぜ」

「…おれを見つけてくれた人が心配して駆けつけてくれるなら気持ちはわかるけど、赤の他人のお前に見舞いに来られる筋合いは無い」

「赤の他人も何もお前を見つけて通報したのは俺だよ」


 数秒の間が流れる。


「…寝言は寝て言えば」

「ほんとだって。朝方、ホテルになるを置いてそのまま出て歩いてたら公園でお前がくたばってて」

「え、"なる"と?"ホテル"?」

「…あっ」


 やべっ、と慌てて口を抑える阿出野。そして流れる数秒の間


「メテオストレート」

「いや違ッ!?これには深い訳があって」

「タイキック」

「つか俺別に何もしてな」

「上段回し蹴り」

「さっきからなにそれ怖いんだけどやるんだな身体治ったらやるんだな!?」


 殺す。こいつこの体が動くようになったらいの一番に息の根止めてやる。両脇に手を引っ込め冷や汗をダラダラ垂らすそいつをこの目からビームさえ出たら殺してやることだって難しくないのに。

 そのときばかりはそう念じてみたものの、つきりと腹部が傷むとさすがにそれどころではなくて、苦痛に顔を歪めた。舌打ちをする。なんでよりによって、こんな時に。


「…おい大丈夫か。看護師さん呼ぶか」

「…いーよ…おれの目が覚めたのはついさっきで、いまここにいるあんたしか知らない。…多分呼んだら彼女も起きるし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ