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「高草木が撃たれる寸前、私の携帯に留守電が入ってたんです」
病院であることも承知の上だが、スマホを取り出して留守電を確認する。
《なる?俺だけど。昨晩から連絡取れないから心配してます。これ聞いたら連絡下さい。…あ、あと、冨樫と田賀谷のことについて調べたけど、…あの田賀谷って人、本当はーーーーー…》
銃声。で留守電は途切れた。この留守電と彩女さんからの連絡で高草木のことは知ったわけだが、それ以外にも違和感はあった。
「高草木は田賀谷について調べていた。冨樫のこともだけど…この留守電を聞く限り、田賀谷について何か有力な情報を手に入れたのは確かです、それを消す必要がある人間が他にいないということも」
「………あのスーツが撃ったってこと…?」
「わかりません。ただその可能性も無くは無いと言ってるんです」
顎に手を添え、考える。優しい仮面を貼り付けて、人の懐にするりと滑り込むそのやり口。…仮に田賀谷が犯人だとして、なぜ彼がそんなことを?口封じのために高草木を撃つほど致命的な情報って何だ。
「…でも私は彼がそんなことをする人間には思えない」
「どうして?」
「私に、阿出野のことを話してくれました」
だから、混乱する。探偵が一番やってはいけないことは犯人に同情することだ。それにしたって、彼の行動と私に対する言動は。矛盾しすぎやしないか。
「…ねえ、その彼のことで思い出したけど…今朝のニュースで、冨樫って人報道されてたわよ」
「何?」
「なんでもP.S株式会社って有名な大手企業じゃない?そこの冨樫宛に昨日、取引先を名乗って殴り込み?があったとかで」
見せられたスマホの画面には確かにYo-hoのトップニュースに取締役の冨樫のことが表記されている。
「ま、総務って役職乱用して結構な人使いの荒さだったらしいじゃなあい?人事の人とも繋がって悪どいことやってたみたい
誰が乗り込んだかわからないけれど、強盗とかじゃないみたいだしこれを機にこの人摘発されて懲戒免職、それまで被害被った人たちのこと踏まえると、なんか自業自得って感じよねぇ」
「……阿出野か…?」
「えっ!?…彼!?これなるちゃんの彼がやったの!?」
「いやあくまで多分、」
そこまで告げたところで回診に来た看護師さんに携帯を触っているところを見つかり、病院では電子機器禁止!とつまみ出されてしまった。