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高草木が、撃たれた
都内総合病院の廊下を駆け抜け、病室へと走る。外のネームプレートを確認すると、息つく間もなく部屋の扉をガラリと開けた。
「ーーーっ、なるちゃん…」
「彩女さん」
そう広くはない、一人部屋。その病室の一角にて床に伏す高草木、ベッドの傍で椅子に座って心配そうに振り向いたのは、近日高草木商店の助っ人として来てくれているホステスの彩女さんだった。
「…容態は」
「…今はとりあえず落ち着いてる…弾は手術で取り除けたみたいだけど、なにぶん出血が凄くて…あと5分でも遅かったら、手遅れだったって、お医者様が」
「…………」
ベッドの窓際の方へ周り、酸素マスクを付けたまま静かに眠る高草木を見る。指先でそっと頬に触れると、その冷たさに思わず手を引っ込めた。
ーーーそして、歯を食いしばる。
「…………私のせいだ」
「…なるちゃん」
「高草木が…冨樫と田賀谷について調べてくれるってその言葉に甘えて。私は自分のことしか考えていなかった。…それなのに阿出野の居場所も掴めなかった、だからこんなことに」
「なるちゃん!」
横から彩女さんに腕を掴まれ、その力強さに、自分の非力さを悔やんだ。血が滲むほど、拳を握り締める。その手も優しく包み込まれ、赤い目で彩女さんを見上げた。
「…相ちゃんそんな風に思ってない」
「…」
「こんなのすぐよ。だってあの相ちゃんよ?一週間後にはけろっとした顔でまた歩き回ってるわよ」
ぐっと堪え、こぼれ落ちそうになったものを自力で引っ込める。静かに寝息を立てる高草木を見下ろしたまま、続けた。
「…誰がこんなこと」
「…わからないけど…多分相ちゃんは自分を撃った犯人の顔見てると、思うのね、そしたら…ひょっとしたら相ちゃんのことまた口封じに…」