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自分が特別な存在だなんて思ったことはない。
ただ、自分は裕福な家庭に育って、それは、一般家庭と比較するとわりかし融通の利く立ち位置だということを、小学生の低学年辺りでは既に理解していた。
裕福な家庭に育った故に家も大きく、学力向上の為家庭教師もいたし、体力をつけるために自分専属のスポーツトレーナーもいた。
彼らが必死にこんな自分にいろんなことを学ばせてくれたお陰で、学校での成績は常にトップだったし、体力テストも上位をキープしていた。
その学力を活かしていいところの大学に進学し、良い会社に入社した。
上々の人生だった。挫折を知らない、というやつだ。俗に言う温室育ちとやらはゆとり真っ只中に被害を被った彼らと同じで、障害を知らぬまま、きっと自分はこのまま好調に進んで行くと確信していた。
当たり障りはない。
失敗することも愚か、
だから絶望したのだ
「真野さん、どうですか新人のあいつ、」
「いやいやまるでダメ。あれじゃろくな戦力になりやしないよ。ボンクラってのは正にああいうのを言うんだろうな」
「うわぁひっでぇ(笑)」
あははははは
はははははは
ははは
はは…
FILE8.安全装置と起動装置