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「おい」
「一つ聞いていいですか」
「…」
「阿出野さんこれでなにするつもりです」
「…いや、それっ。中身新型のモデルガンでさぁ。ほら、俺射撃好きじゃん?だから新台でまた試し撃ちをだね」
「実弾ですよねこれ。それに試し撃ちなら僕がさっきして来ました」
「えっ」
「嘘です」
「えっ!?」
「…でも今の貴方の反応。嘘じゃないですよね」
「…」
してやられた。その反応を隠すこともせず、阿出野ははぁ、と深い息をつく。冴木は茶色い小袋を持ったまま、真向かいの阿出野を静かに見据えた。
「…阿出野さん貴方まさか、妹さんと親父さんのこと…」
「冴木くん。きみ人の死に顔見たことある?
安らかじゃないやつ」
「…」
「もう酷いよ
目玉かっぴらいてよだれもなにもかも垂れ流し
…夕凪がそうだったから知ってる」
伏せられていた目がやがて一筋の光を灯して、路地の外へと向けられる。その物腰はどこか、哀愁漂っていた。
「お節介で…あんな性格だから
俺はてっきりあいつは幸せになるんだとばかり思ってた
でも現実は違った」
「…すいません」
「なんでお前が謝るんだよ」
「…夕凪…彼女には付き合ってからもずっと頼ってばかりで。…明るくて。どうしようもない僕のことなんか何で好きになってくれたのかずっと疑問でした
彼女のために何か出来たら、そう毎日思っていました。…でも、やっぱり夕凪が貴方に会うときだけは本当に嬉しそうだったから
…あの日も、」
「やめろ」
食い気味で反論され、はたと我に返る。
「…すいません」
「いいよ。いや…こっちも悪かった。
…ずっと、考えてたんだ。なんで親父は夕凪を殺して死ななきゃいけなかったんだって。死ぬなら1人で死にゃよかったんだ。なにも道連れにすることなんてなかった、なんであいつまで、なんで死のうだなんてって…ずっと」
「…」
「…けど答は結局出なかった
俺にはわからない。理解出来る日なんて一生来ないだろうとも思う」