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「…」
「でも、今あでは本能のまま動いてる
…復讐しようとしてる、家族を貶めた奴のために」
「…私のせいだ。あの日…あでが私を助けに来なければ。私が騙されたりなんかしなければ、阿出野は家族を救えたのかもしれない」
「…」
「…全部、私のせいだ」
7年前のあの日にもし戻れるのなら。駆けつけた阿出野を押し返して今すぐ家へ帰れと叫ぶことが出来るだろう。…でも。
全ての事情を知った今でも、この後に及んで阿出野を押し返すことがきっと出来ないだろう自分に、一番、何よりも、腹が立った。
長い、長い、沈黙。その口火を切った声は、しかし余りにも無感情だった。
「…ふーん」
高草木にしては、当然の声色だ。にしたって、どうにも反応が冷たすぎやしないか。
「…なんだよ」
「いや、バカだなぁと思って」
「…は!?なんで私がバカ、」
「バカだよ。なるは男勝りだけど。男の気持ちを全く理解してないよ」
「…!?」
今までこんな風に落ち込んだ時、優しく同情してくれたのが後輩であり、相方でもある高草木という存在だった。それだけに、予想だにしない言葉を投げ掛けられ、私は露骨に目を白黒させてエクスクラメーションマークとクエスチョンマークを、交互に弄ぶことしか出来ない。
「阿出野は別に自分の家族が死んだのはなるのせいだなんて思ってないよ
もし仮にそう言ったなら、おれがあいつをぶっ飛ばす」
「…(シャレにならないよ)」
「…でも、きっとあいつは後悔してるだろう
あの時自分が家に帰っていれば、父親と話をしていればって
…そうしていれば確かに助かっていたかもしれない。でも…多分答はそうじゃない。きっとどうにも出来なかったんだよ、誰にも」
「…」
「おれは向こう見ずでも、がむしゃらに頑張ってるなるのことが好きだ
…あいにくおれのためじゃなかったけどさ。今のなるは未練がましくて見ていられない」
「…」
「阿出野も。なるに本音を話したのは、なるに前を向いて欲しかったからだ」