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「わー、昼間からお盛んですこと。その労力他に当てらんねーのかね」
「…理解に苦しむけど一応聞いとく。どゆこと、あいつら何なの、もしやあの博己の隣にいたのが」
「予備校の講師だな」
物陰に背を預けたままあでがさらりと言った。
「男だったぞ」
「そうだね」
「男同士だったぞっ!?」
「人様の恋愛に立ちいるつもりはさらさらねーけどさ、この広い地球上には色んな人間が根付いてるってことだ、親が心配するのもまた然り」
呆れてるのか開き直ってんだか、あでの落ち着きようが逆に不安になる。これが普通なの、私がおかしいのかという感覚にも襲われ、いや違うと顔を真横に振ったらぐらりと意識が揺れた。
「有り得ない…ってかどーすんだよ、これじゃあ証拠を抑えられないじゃないか」
「わかってないね、お前ってほんと。
だからお前を連れて来たんだろ」
は、と口を半開きにする私の横で、あでは。
自身の薄い唇の端を、ニタリと引き上げて見せた。
***
「おーしナイスアングル。さっすが事前に下調べしといただけあったな」
矢鱈とピンクめいた落ち着かない部屋の片隅で、あではTVに何やらケーブルを繋げて呟いた。
画面にはベッドに座る講師が映り、博己の姿が見えない。音量を上げるとシャワー音が聞こえて、私はその生々しさに思わずうめき声をあげた。