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RUSH  作者: 或田いち
FILE7.孤独の闘志
148/201

4

 

「あーあ。知ってる顔した。…なるほど~?あいつはついに復讐しようとしているってわけだ」


 それまで丁寧な所作を心掛けていたらしい田賀谷も、吹っ切れたように片手を腰に当て、バリバリと後頭部を掻き毟る。


「復讐?」

「まぁ無理もない。父親と妹の、家族二人も殺されたんだ」

「…え」


 反射的に目を見開いた高草木が私を見る。私はといえば吹っ切るように立ち上がり田賀谷に掴みかかった。


「…っあんたなんでそれ、」

「何でも何も生前阿出野のお袋さんに阿出野を頼まれたのは俺だよ」

「…!?」


 意味がわからない。どういうことだ。阿出野は私以前に、この上司に全てを打ち明けていて。それを知った上でこの男、田賀谷は黙認していた?

 こんな飄々とした、態度で?


 目を見開いたまま硬直(かたま)る私を見下ろし、田賀谷さんは目を細める。よくよく見たら端正な顔立ちをしていた。それでいて育ちも良さそうな。うっすらと開いた唇が弧を描き、優しく甘い声をつむぐ。


その姿は妖艶とすら思うほど、



「…君はどこまで知ってる?何が知りたい。教えてあげるよ。阿出野のことが知りたいんだろう。俺は君にそれを伝えるために来た」

「………私は………」


 黙り、俯く。私は阿出野の何を知ってる?阿出野が真実を吐露したのは、つい最近。ほんの少し前だ。それも真実かどうか、自分では見極めることも出来ないでいる。私は阿出野の何を知ってる。


 本当はまだ、何も知らないんじゃないのか?



「いやさ、あー見えてあいつ仕事は出来たからないなくなると困るんだよ。だからなんとかして探し出したくって…と思ったんだが、その様子じゃ君も混乱しているみたいだし、知らないならいいよ、自分で探すしお邪魔様」

「………待っ、」


 思いがけず、踵を返した田賀谷さんのスーツの裾を引っ張った。彼は首だけを向くと、またにこりと微笑む。


「何にせよ君とも話がしたかったんだ。阿出野が心を許した人がどんな女性か…でもその瞼じゃ今日どこかに行くってのは無理そうだ。落ち着いてからでいい。話が聞きたくなったらここに連絡してくれないか」


 そっと差し出されたのは名刺とは違うカードで、手書きで連絡先が記されている。仕事用とプライベートで使い分けているのか、それを受け取るとそ、とこめかみに手を添えられた。

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