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頭が重い。
ついでに、まぶたも。
「……、」
何時間。いや、何日経ったのだろうか。あれから。回らない頭でぼんやり考えてみる。虚ろな目は一度意を決して天井を見たが、すぐそれも億劫になってまぶたを閉じた。
知らない。どうでもいい。なにも。
(…なにもやる気にならない…)
世で言う、無気力症候群、というやつだろうか。鬱病の一歩手前に当たる症状だ。今の自分は、正にそれに近かった。食事は喉を通らず人と会話をする気にもなれない。勿論仕事なんか手に付かないし、だから他人に迷惑をかけて自己嫌悪に陥る。次第にそれすらどうでもよくなってくる、負の悪循環。
思えば、前にも一度経験したことがあった。
7年前、突如阿出野がいなくなったあの時だ。
当時は何もわからないまま退学してしまったあで、その事実を受け止められず結局一週間休学した。その時こそ今と同じように、布団にくるまって毎日を過ごしていたものだ。
何事かと心配する母や弟に励まされやっとのことで立ち上がった。あの時はそれが出来たのだ。
でも今はどうだ。
《 二度と会いにくんな 》
完全な拒絶。あんな風にあでが私を突き放したことは、今までに一度としてなかった。いや、ひょっとすると7年前のあの日だって、口に出さなかっただけなのかもしれない。何故。どうして。阿出野。なんで。
考えて、考えて。またじわりと目尻に涙が浮かぶ。これでもう何度目だ。堂々巡りも甚だしい、いっそこんな想いをするのなら。
「……なんで私はあいつを探したりしたんだ」
きゅ、と唇を噛み締めると、淡く、ほんのり血の味がした。
「なる…、お客さんが来たけど」
部屋をノックする音と同時に、扉が開かれる。私は自然と背を向けたまま、布団に頭を引っ込めた。