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「………親父、」
身体が衝動的に動いた。携帯を降ろし、音のした二階へと階段を駆け上る。
「親父」
なぜかはわからない。でもわかった。殺ったのは親父だ。一足遅れて理解する。だって。あの包丁は。釣り好きな親父が魚をさばくときに使うそれで。お袋がそれを使ったことは一度とない。普段置いてある居場所さえ。
「親父、」
書斎だ。廊下の突き当たり。あそこにいる。なんで。親父。
なんで。なんで。なんで。
なんで。
「親父!!!!!」
扉を開け放つと
視界に飛び込んできたのは足だった
ぶらりと天に吊るされ落ち窪んだ目が
上から俺を見据えていた