25
「何故、7年前急にいなくなったんだ」
「…またそれ?いい加減しつこ…」
あでが振り向き、目を見開く。
私が 泣いていたからだ
「…お前が学生時代、私をどんなふうに思っていたかは知らない…お前にとっては数多くの友人の、それも一番遠くて疎遠なつまらない奴だったのかも知れないでも…っ私にとって少なくともお前は、あでは一番の友人だったんだ
そりゃ気にもなんだろあんなこと言われて…あぁもうなんなんだよ畜生!私のこと護るって言ったくせに!勝手に言ったのはお前のくせに!約束したんなら守れよ、私がこの7年ずっとどんな気持ちでっ…」
もうだめだった。一つこぼせば、塞き止めていたものが、全て溢れ出してしまう。それはまるで川のよう。伝えたら、溢れ出してしまいそうで。怯えてずっと閉じ込めていたそれらを
もう抑えることはしない
「…お前のことが知りたいっ…!
いっ、今まで何があったのか…あの日に何かがあったなら…私も力になる…っお前が私にしたようにちゃんと…絶対逃げたりしないから、だからっ………っ、」
涙で滲んでいた景色が、一瞬にして黒一面に覆われた。冷たい手。でも暖かい腕。少し煙草の匂いがするあでに、私は掻き抱かれていた。
想像以上の力の強さに身が縮こまる。隣を誰かが通ろうと、その手を離す気配はない。
「…あ、で」
「お前がいたら俺は迷う。だから突き放したのに、なんでまた来ちゃうかな………」
低く、くぐもった余裕のない声。
言いもって強く抱き締めていた腕からやがて徐々に力が抜けて行き、背伸びしていた私の踵もゆっくりと地面についた。
ゆるり、あでの顔が正面で向き直る。
優しい瞳
「家族が殺された」