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「質問がワンパターンなんだよ。もっと他にも色々あんじゃん、お前何のために必死こいて俺のこと見つけたの」
「お前が逃げ回ってまともに話さないからだろうが!?」
「うわ~そこ俺のせいにしちゃうんだ女っておっかね~」
「だっ…、しっ諸悪の根源はお前だろ!」
「だからそこ俺のせいなのかよ」
「じゃなかったら適当なこと言ってどっか消えたりすんなよ!つーか思ってもないのにそれっぽいこと言うな!」
「は?ちょっと回りくどくてわかんない」
「わ…ゎ、私のこと守る…(小声)とか何とか!言ったのお前だろうが何だったんだあれは!」
「…あー…忘れた」
「忘っ…!?」
瓢箪から駒、棚からぼた餅…は絶対違う。まさかの返答に思わず立ち上がったまま何度となく瞬き、力すら入らない。
「よく覚えてねーけど7年も前の話でしょ?そんで音沙汰なしだったんだから時効だろいい加減」
「…そ、それじゃ質問の答えになっていない!私はっ…うぉわ」
バランスの悪い室内で何度も立ち上がったのがいけなかった。
突然揺れ動いた車に翻弄されるがまま、ばたりと前のめりに倒れ込む。直後私の頬をかすめたのは正面に配置されているであろう冷たい椅子の感覚ではなく、細身の癖にどこかたくましい、男の腕だった。
一瞬にして状況を察知すると慌ててあでを突き飛ばす。
「なっななななにすんだ!!」
「お前が倒れ込んできたんだろ。何焦ってんだか中坊か」
「うるさいほっとけ!ま、前みたいにまたぬっ…抜き打ちでキスとかされたらたまったもんじゃねーからな」
「なる、そういうときは抜き打ちじゃなくて不意打ちって言うんだ」
あでの冷ややかなツッコミも受け流しあわや大惨事、を前に連打し続ける鼓動を押さえ、そっぽを向く。
もうだめだ、これではにっちもさっちもいかない。何より、本人が忘れている?どういうことだ、それは。じゃあ私は何のために?何を期待して。何を信じて。あでのことだけ。
どうして疑わなかった。
「質問タイム終了?」
人が真面目に話してるのに上から小馬鹿にしたようなこの態度。いい加減キレてもいいだろうか。
「…したって答えない相手にする質問はない」
「潔いね」
「誰のせいだよ」
「なる」
「あのなっ…」
顔を上げ、真向かいのあでを睨めつける。すると、頬杖をついたまま真っ直ぐ此方を見るあでと視線がぶつかった。