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RUSH  作者: 或田いち
FILE1.男と女と犬と猫。
11/201

4

 

「あで!!痛い折れる!!!」


「…あで?」


 もう本当に限界の寸前で、体が解放されその場に崩れ落ちる。変な方向に曲がりかけた腕は熱を帯び、涙目で息も荒くふーふーと前傾姿勢で蹲ると、同時に


 しまった、と冷や汗が流れた。


「…お前…"なる"か?」


 その場に立ち竦んだまま私を見下ろすあでは、目を丸くして間抜けに首を傾げていた。



***



「いやあ、さっきは悪かったな」


 洒落た喫茶店に入るようになったのもまた、7年の歳月の果てか。でもそんなことを言い出したら、キリがないのかもしれない。

 テーブルを挟んで向かいに座るあでが、姿勢良く腕を組んだままにっこりと笑うので、思わず私は噛み付くように怒鳴った。


「ふざけんなよマジで。腕折れるかと思ったよ、てか折れかけた!レントゲン撮ったらヒビ入ってんじゃねーかな」

「しょうがないじゃんわかんなかったんだからさー、それに服装とか。お前髪伸びてるし」


 高校時代までは"女らしさ"自体を毛嫌いして、髪は短めになるべく服装もボーイッシュにしていた。服装に関しては今もさして変わらないが、最近は昔に比べて見た目の執着もなくなったこともあり髪は伸びっぱなしになっている。

 何より最近はそんなことより他に追いかけるものがあったから、というのも一理だが。


「人は変わるよ。ましてや7年も経ってんだから」

「まぁそうだね」


 そう言うと、あではおもむろにテーブルの灰皿を引き寄せて、スーツの胸ポケットからマルボロの赤を取り出し慣れた手付きで火をつけた。

 本来なら普通、吸う前に相手に許可取るだろとか突っ込む所だが、私の記憶の中にあでが煙草を吸っている姿が存在していないこともあり、その姿が新鮮、というか、衝撃的過ぎて、ただ唖然とその様子を見ることしか出来なかった。


 窓の外に目をやっていたあでがふと、そこで私を見る。ばち、と目があい鼓動が鳴った。

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