表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RUSH  作者: 或田いち
FILE5.お前のことが知りたい
108/201

15

 

「こーくんお腹空かない?なんか食べよっか」

「お、いーねー何にする」

「確かこの近くにチュリトスのおいしいお店が…きゃっ」


「 い、いっ… た、あーーーーーーい 」


 現場は舞台、通行人は観客。そう思って演技しろ、との拓馬の要望あって大袈裟に芝居をうつ。

 ふらついた拍子に千幸の肩にぶつかったのは我ながら迫真だった、彼女は私を見るなり目をパチクリさせている。


「…す、すいません」

「ちょっとおー…ど、どおしてくれんの?今ので足挫いたんですけどー…ぁ、歩けなーい」

「…え、でも、肩ぶつかっただけだし…」

「結那ーどーしたー」

「あーちょっときーてよあで…じゃない慎也ー」


 ピンヒールを片手に、背後からやって来たあでにわざとらしく寄りかかって見せる。たどたどしい言葉遣いの私とは裏腹慣れたそぶりでさらりと役になり切るところこいつ本物だな、なんて考えもよそに、あでは私の足首を見るなり「あー挫いてるねこれ完全挫いてるわこれ」とか難癖をつけ始める。いいがかりも甚だしいが、こういう当たり屋は最近でもごく稀である。


「…どーしてくれんの?うちの彼女さー足やっちゃったみたいなんだけど。治療費と…今日分の慰謝料。ざっと10万くらいかなぁ。払える?つか払ってもらわなきゃ困るけどね」

「…は、いやそんなこと急に言われても無理だし」

「えーお金ないのー?困ったなーそれじゃ彼女に払ってもらうしかないかなー」

「え、は、ちょっと」

「やっやだ離してください!」


 派手なコートにサングラスをした男女が難癖つけてカップルの彼女を引っぺがす。さながら時代劇の地上げ屋だ。あでが長身なこともあり威圧感は二割増しで、千幸を無理やり奪われたことに金髪の大学生は完全に狼狽えている。


「こ、こーくん…!」

「ち…千幸を離せ」

「金払ってくれたらね」

「払うわけねーだろ」

「じゃー力ずくで奪ってみなさいよ」


「望むところだッ!!」


 私たちの策略にまんまと乗っかり、金髪大学生の拳は、無遠慮に。


空を裂いた。







「ーーーこーくん大丈夫っ!?」

「…大丈夫大丈夫」

「でも、血が出てる…」

「切れただけだよ。ヘーキ。それよりあっちの方が…」


 そう言って、ちらと千幸カップルが見る方には長駆のサングラスコートの男。


 が、


 鼻血を出して地面に仰向けに昇天している姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ