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「………要するに、まんまと丸め込まれたってわけ」
「同意の上だ。金の切れ目が縁の切れ目、それに高草木を当てはめたくない」
「フーン随分信頼してんじゃねぇの。別に給料ないくらいであいつはお前から離れてったりしねーよ」
「でもこういうことはちゃんとしないと。いつも世話になってるし」
「じゃあそいつと仕事しろよなんで俺呼んだの?オフだよ?久々だったんだよ?家でのんびりしようとしてたのに」
「さみしい独り身を誘ってやったんだろ。悪く思うなよ」
「ムカつく。いつか犯す」
「やってみろバーカバーカ」
「おいバカップル探偵'sちょっと静かに!」
カップルじゃねえよ!という私とあでのツッコミもよそに、公園の茂みに隠れて早数分。その時はすぐにやってきた。
私が先ほどまで居た時計台の元へ、一人の少女が現れたのだ。黒のセミロングヘアに、薄いピンクのセーター・紺色のスカート。すらりと伸びた細い足の先は、茶色の靴で包み込まれている。あれが拓真くんの妹だろう。
「千幸め。家じゃ万年ジャージのくせに」
チッと舌打ちをする拓真くん、可愛いね、とあでがポロリと呟いたのに睨みをきかせた瞬間、すぐに脇から長身の男が現れた。
「ちゆ!おまちど!待ったー!?」
「こーくん…!待ったよー会いたくてさみしくて死ぬかと思ったー」
「このっばかだなお前が死んだらオレも追っかけてくから」
「こーくんのばかぁ♡」
「殺そう」
「まてまてまて」
この数秒のやりとりで無の状態から殺意を沸き立たせる存在の方が逆に素晴らしい。つい腕まくりして乗り出した体は、拓真くんとあでに羽交い締めにされた。
確かに、チャラい。こーくん、と呼ばれた拓真くんの妹・千幸ちゃんの彼氏21歳大学生は見た目こそ金髪にメッシュ、無駄に長い前髪、伸びきった襟足薄い眉だったが、彼女を前にするとそのヴィジュアル系?(それも今時稀な感じの一世代前くらいの)をもろともしない風で、だらしなく張り詰めていた表情筋を崩した。
恐らく全うな見た目にすればもともと悪い素材でもないだろう。なのになぜああなった。
「今回のデートに関してはちゆが俺に相談して来たくらいだから全て俺の提案プランだ。
まさかお互いを別つ日だとは知らずに…せいぜいラストデートを楽しむがいいさ」