Chapter 04: En la clase…
今日は金曜日。世間で言うアフター5である。今日を乗り切れば2連休。学生、サラリーマンを問わずみんなが心待ちにしている日である。--サービス業に従事する人たちに取っては、事情は全く違うであろうが。--
学校が終わったらどうしようか。とりあえず、本屋に行って、その後CDショップへ行く、そんなところか。友達と夜までカラオケとか、ダチとマック(aka マクド)に行って小腹を満たすなんて考えがこれっぽっちも浮かばないオレは、少々さびしい人間なのだろうか……。
入学してもう3週間弱だというのに、オレにはまだ友達と呼べる存在がクラスにいない。完全に昔見たアニメの主題歌に出てくる、”スタートダッシュに出遅れる"状態である。せめてもの救いは、友達とまではいかなくとも、それなりに話せるクラスメイトがいることだ。そのクラスメイトとは、柚木あみかである。
彼女は、いわゆる地味系文化系女子で、あまり自分からしゃべるほうではない。また彼女も友達と呼べるような存在がクラスには特にいないようである。--オレが見る限りだが-- そんな彼女とオレがなぜ、時々コトバをかわし、インビジブル以上友達未満なのか、不思議に思うだろう。
彼女とオレは中学時代にある場所で一度出会っていたのである。そのころの彼女は今以上に飾り気が無く、服装も暗い色使いが多かった。その頃と比較すると、今の彼女は、髪もきれいに手入れしているし、制服のスカートも、絶妙な長さに調整して、地味なりに女の子らしさを醸し出すことに成功している。そしてなにより、あの野暮ったかったガリ勉メガネをはずし、コンタクトレンズを付け始め、格段にあか抜けたのだ。--といっても、地味系を抜け出す程の劇的な変化とはお世辞にもいえるようなものではないのだ-- これが彼女なりの高校デビューなのかもしれないと思うと、中学に入ってからオシャレや、ファッションに興味を持つようになった妹の姿と少し重なり、ある種の萌ゆる気持ちというものが、オレの心の片隅に芽吹くのであった。
彼女は休み時間に、いつも一人で本を読んでいる。オレはその姿をときどきぼんやりと眺めながら、昼飯を食べるのがここ数日の日課となっていた。彼女は本が好きで、いろんなことを知っていて、頭が良いのだろう。オレは勝手に彼女という人間を、彼女の行動から勝手に解釈し、決めつけてしまっていた。いや、そう思いたかっただけなのかもしれない……。
オレは本を読むのがあまり好きではない。今までに読んだ本なんて、指の数ほどしかない。愛読書もなければ、全集を買う程好きな作家もいない。こんなオレではあるが、今まで何度か読書に挑戦してみようと思った事はあるのだ。そのきっかけが、”本を読んでるオレ、かっこいい”、”本呼んでるオレ、so intellectual”と思いたかっただけ、なのだから救いようが無い。オレはこんなことを考えていた昔の自分が大嫌いだし、"本を読んでるオレ、読まないオマエよりエラい"、みたいな思考する人間を強く嫌悪する。そして、あみかにはそんな歪んだ虚栄心やうぬぼれなど無く、ただ純粋に本を読むのが好きなんだろうと、勝手な憶測に寄る、希望的観測を述べてみる。
彼女の事を考え、彼女の行動を良い方に解釈してしまうオレは、彼女を、異性としてすでに意識してしまっているのではなかろうか、そんな一渥の焦燥をオレは感じ始めていた……。
インターネットでの情報検索が当たり前のこの時代、情報というものは、もはや回収不能なほどにふくれあがってしまった。日々、加速度的に増殖を繰り返し、世界を埋め尽くす。
現代において、情報というものは、かなりの割合で供給過多の状態にある。本を例にとっても、ネット上には、作品に対する批評があふれ、評価の度合いも多岐にわたる。作品に満点を付ける人間もいれば、0点をつける人間もいる。その中で作品に対する評価というものは相対化されていき、その後、世間の評価として、定着する。
しかし、どれだけ評価が相対化されても、その作品をLIFETIME BESTの筆頭に挙げる人間と、WORST LIFETIMEに挙げる人間が同時に存在するという事実には不変なのである。
オレは幾度となく、インターネットを用いていわゆる"MUST READ"の本を探していた。しかし、結局はそれらの作品をほめたたえる人間と、徹底的にこき下ろす人間、彼らがつぐむ主観と主観の狭間で、オレは決断することができないまま、その本を読むことを先延ばしにし続け、結局読むことなく、その存在すら忘れてしまうのであった。
そして、オレは考える。あみかが本好きになるきっかけとはなんだったのだろうか。そして、彼女を変えた"一冊"とはなのか、”一冊”の出会いにより、その後どう彼女は変わったのだろうか……。オレのアタマはそんなことばかりがぐるぐると、永久ゴマのごとく、脳内をかけめぐり続けるのであった。
10分経ったであろうか、いや、20分は経ったであろう。しかし、そんなことは重要ではなかった。
もっと親しくなりたい。時間を共有したい。そして、それから……。
希望が、願望にかわり、欲望に変わる、そんな瞬間であった。
そして、オレは再び自分を嫌悪するのであった。
Quizas, no es todo lo que quiero decir de ella
¡Hasta la próxima!
次回、UN POQUITO、展開します。 :)