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Chapter 03: Sobre mi y sobre algo...

 

 教室へ向かう前に、トイレに行く事にした。あのイソギンチャクのせいで、髪型をもう一度直す元の状態へ戻す必要があったのだ。整髪力の強いワックスを使ってるので、手ぐしでさっと再構築可能だ。


 つっこまれる前に言っておきたいのだが、オレは決してナルシストではない。自分の顔、ルックスに関しては中の中のやや下だと客観的に理解しているし、実際女子から告白されたことなどない。残念ながら、モテるタイプではないだろう。


 オレの経験上、鏡で自分の姿をしきりに見る人間は2タイプいると思う。まず、純粋に自分の事が大好きな100%Pureナルシスト。彼らは自分が魅力的であり、どんな異性も、同性ですら魅了する事もできる、そんな考えのもと、日々自分なりの美なるものを磨くことに喜びを感じている人たちであろう。言うまでもなく、オレという人間はこのタイプではない。


 もう一つのタイプ、それは、自分に自信が無い、だからこそ常に鏡で自分をチェックして、よりマシな自分を保とうと必死なのではないだろうか。少なくともオレは、そうなのだ。 実際、自分の顔を鏡で見るのはあまり得意ではない、特に、美容室で髪を切ってもらうとき、美容師が所用でその場を離れ、しばらく放置されようものなら、それこそ精神の無間地獄と化すのである。必要以上に誇張しているように感じるかもしれないが、こんなことを考える人間がナルシストであるはずが無いという事は分かって頂けたのではないだろうか……。


 髪型を再構築し、多少マシになった自分の姿を確認した後、オレはトイレを出る。ここから教室まで約100メートル。チャイムまでぎりぎりだろう。教室に入り、自分の席に着く。教科書を机にしまい、かばんはロッカーに入れ、施錠する。絶対に死守しなければならないものが、そこにはあるのだから…….。IE80のことである。


 チャイムが鳴り、担任のりっちゃん先生が教室に入ってきた。今日のファッションは、ブラックのテーラードジャケットに、白のブラウス、シルバーホワイトのスカート、下は黒のパンプスときた。金曜日は毎週このファッションなんだよな。完全に着る服をルーティン化している。ちょっとめんどくさがりの、このりっちゃん先生は、最近彼氏と別れたようだ。先生と仲の良いクラスの女子たちが聞いた話なのだからおそらく間違いないだろう。入学から2週間、週に一度は必ず、めかしこんで、いつもより少し濃いめのメイクをしている日があったのだが、最近は毎日同じようなメイクである。クラスのオトコどもが気づくのも時間の問題かもしれない。


 りっちゃん先生は男子生徒からかなり人気がある。年齢より幼く見える、あどけない顔立ちと、第二次成長が始まったばかりの成長期の少女のような体型--いわゆる幼児体型である--、そして、愛らしい笑顔、そしてドジっ娘属性。先生なのに、けがれを知らぬ、純白の心のキャンバスを持った少女のようであり、とにかく愛くるしいのである。断言してもいい、このクラスには、先生に暴力をふるったり、たてつくような不良は絶対に現れない。


 ホームルームが始まった。りっちゃん先生お得意の、事務的にたんたんと連絡事項を伝え、さっさと自分の話を始めちゃうクセ。ほんとこの人はBONITA(かわいらしい)なのである。


 昨日は、同僚の朝川先生と、最近駅前にできたインド料理レストランに出かけたそうだ。最初は日本人の女性スタッフが接客をしてくれたそうなのだが、途中から少々体臭のきついインド人シェフがわざわざ二人のもとまで料理を運び、りっちゃん先生狙い撃ちで、職業、年齢、趣味、彼氏の有無などを根掘り葉掘り尋ねられたそうだ。そして、デザートのアイスクリームをサービスしてもらったらそうな。

 おそらく、そのインド人シェフはりっちゃん先生のある種のLOLITANESS y BONITANESS (ロリさと愛らしさ)に魅了されたのであろう。そのあとインド人シェフの連絡先を書いた割引券もちゃっかりもらったらしい。連絡先は、帰りにコンビニで買ったバニラモナカアイスのパッケージ表面の水滴が原因で判読不能になってしまったようである。こんなオチをしっかりつけて話をしめくくるなど、この先生はなかなか話をするのはうまいのである。その才能を英語の授業にも反映させて欲しいのだが。


 現在、授業メソッドは頭の固い50代後半の、年だけ重ねたベテラン教師が全ての決定権を持っている。彼流のやり方を他の教師にも強制するため、他の英語教師の裁量は驚く程小さく、自由度はかなり低いようだ。


 まーりっちゃん曰く、ベテラン教師が作成したカリキュラム、及び教材を使用すれば、自分で授業の準備をしたり、ネイティブチェックをする必要がないから、仕事がラクになって助かるし、全く問題ないとの事。


 生徒の将来のこと、もっと真剣に考えてくれよ。進学するかまだ決めてないオレが言うのもなんだが。そんなことを考えているうちに、いつのまにかホームルームは終わっていた。


 It’s not always the case that what you think about means what it really is.


 ¡Hasta la próxima!

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