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Chapter 02: En la camio a la escuela

:)

 午前7時55分、学校へ向かう。もう四月だというの、この街の冬将軍は、いまだ居座り続けているようだ。許されるならコートでもなんでも着込んで万全の防寒対策を施したいのだが、悪目立ちすることを極端に嫌う性格が災いし、泣く泣くこの寒さに耐えながら通学するしだいである。


 オレが通う県立西陽高校は、自転車通学が禁止されている。よって、登校の手段は、バスと徒歩に限定される。幸い、オレの家はバス停に近い場所に位置している。バス停まで5分ほど歩く、バス停で2、3分待ち、15分ほどバスに揺られれば(座れることはほとんどないが)、学校はもう目と鼻の先である。所用時間、わずか25分弱。地の利があるとうはこのことを言うのだろうか。(違うか?)


 バス停から学校の正門までは少し傾斜のきつい坂道が300mほど続いている。 オレはこの坂を上りきる3分間にやらなければならないことがある。

 第一に、iPodで再生されているお気に入りのDosemのミックス(320kbps, LAMEでエンコードされている)を一時停止、HOLDをかける。


 その後、イヤホンをジャックから取り外し、専用ケースに入れる。なんでこんなめんどくさいことをするのか、そんなのは決まっている。オレが使っているイヤホンは、かなり値が張るからだ。


 オレが使っているのは、SENNHEISERのIE80。これを買うのにどれだけ苦労したことか……。毎月1,500円ずつ貯金し、強制的に3万円分貯金され、残りわずかとなったお年玉を合わせて、先月やっとの思い出購入したのだ。中学時代の友人との遊びもできるかぎり我慢し、欲しいCDも、音質の悪いネットのフル視聴で耐え忍び、妹からの不定期かつ、執拗なおねだりも巧みにかわし続けた、オレの苦労と忍耐の結晶がこのイヤホンなのだ。100円ショップのイヤホンで満足してる友人Aに、この別世界の味合わせてやりたいものだ。--でも、あいつの耳あかがイヤホンに付くのはイヤだな……--やめておこう。


 音楽関連はこれでOK。あとは、脳内のUp-to-dateを怠る事が常態化し、封建的思考から脱却できないでいる、わずらわしい生活指導教員に目をつけられないように、身だしなみを、まー、それとなーくきちんとしている風に見えるようにする必要がある。

 まず、シャツをきちんと入れ、 ヘアワックスで逆立てたトップ部分の髪を少し抑える。詰襟のボタンはもちろん一番上まで留める。個人的にはこれが一番の苦痛である。なぜ、わざわざ息苦しくなるだけで、なんの利点も無いようなことをオレら生徒に強制するのだろうか? どっかの英語のテストのリスニングに出てきた、"I don't get it! (理解できません)"というフレーズがオレのアタマの中で幾度となくこだまする。


 今日、校門に立っているのは、生活指導教員の中でも、一番めんどくさい、そして細かいところをネチネチといちゃもんつけてくる"セニョール・イソギンチャク"こと、磯貝だ。オレはこいつに少し目をつけられているらしく、何かとオレが理想とする相互無干渉主義的安定生活(Stable life)を乱す、危険因子なのである。


 まず、オレはヤツの目に付かないよう、他の男子生徒グループと並ぶように歩いた、同時に6~7人の服装を細かくチェックするのは、アイツでもさすがに無理だろう。オレはこの手で、2回程ヤツの目に触れず校門をくぐる事ができた。あと3秒程でアイツの前を通り過ぎることができる。

 あと2秒……。

 1秒……。


 成功であった。今日は目覚めも悪くなかったし、何気についてるかもしれない。オレはそんなことを考えながら、古びて外壁が少し黒ずんだ校舎の中に入る。

 高校に入学して3週間弱。少し先っぽが汚れ始めた上履きに履き替え、オレは教室へと向かった。


 Quizas, hoy será un día de suerte, pero……


 ¡Hasta la próxima!

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